2017/11/22
A、地方支店であっても労働法上の「事業所」になりますので、法令に添った管理をしなければなりません。「就業規則の周知・届出」「36協定や労使協定の締結・届出」は従業員数が少なくても必要です。また労働保険番号や雇用保険適用事業所番号の取得や一括処理をしたり、安全衛生推進者の選任を行う等の対応が必要です。
近年、労務トラブルが多発しており、コンプライアンス重視の経営が必要になっています。
会社によっては、本社がメインの事業所になりつつも、地方拠点(支店、営業所、駐在事務所)をお持ちのところも多いかと思います。本社であれば、管理本部の目も届きやすいですので、就業規則、36協定、安全衛生などの基本的な労務管理は実施されていると思いますが、小規模な地方拠点の場合はどうしてもおろそかになる場合がございます。
経営の感覚では「企業」が1単位ということになろうかと思いますが、労働法では「事業所」単位での管理が基本となります。労働者が1名でもいれば「事業所」になり、本社とは別の管理する必要があります。
【ご参考:東京労働局Q&Aより抜粋】
昭和47年9月18日発基第91号「事業場の範囲」
労働安全衛生法は、事業場を単位として、その業種・規模等に応じて適用することとしており、事業場の適用範囲は、労働基準法における考え方と同一です。つまり、一つの事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、同一の場所にあるものは原則として一つの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とされています。例外としては、場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うとされています。また、同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場としてとらえることにより労働安全衛生法がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえることとしています。この例としては、工場の診療所などがあげられます。なお、事業場の業種の区分については、「その業態によって個別に決するもの」とされており、事業場ごとに業種を判断することになります。例えば、製鉄所は「製造業」とされますが、その経営や人事の管理をもっぱらおこなっている本社は「その他の事業」ということになります。
直近上位といえるような例外的な小規模事業場を除き、地方支店であっても労働法上の「事業所」になりますので、法令に添った管理をしなければなりません。
周知されていない就業規則は無効です。近年の労務紛争では、就業規則の周知の論点が重視されています。労務トラブルがあった時に、慌てて会社が条文を適用しようとしても、周知されていなければ適用できません。
また、従業員が10人に満たない事業所であっても、労働基準監督署に届出をお勧めしております。権利関係が明確になるからです。
労働者が1名でもいれば、残業の可能性が出てきますので、36協定は必須となります。
一昔前であれば、うっかり忘れていたというお話でも済まされていたかもしれませんが、現在の法令遵守の流れからすると、36協定を提出していないというのは違法残業となりリスクが非常に高い状態であり、ブラック企業扱いされてしまいます。実際に、本社ではきちんとやっていたのに、うっかり忘れていた地方支店に労働基準監督署が入られてしまい是正勧告を受けてしまったという事例があります。
あわせて、変形労働や賃金控除などの労使協定も、すべて事業所単位で、事業所の労働者代表と締結しなければなりません。
労働者が1名でもいれば、労災の可能性もありますし、労働保険料の納付義務が発生します。上記の通り、原則として、労働法では事業所単位での手続となりますので、小規模事業所であっても、保険関係成立届を提出して労働保険番号を取得しなければなりません。
その上で、一定の要件をクリアできれば、継続事業の一括をすることで、労働保険の処理を本社一括で行うことが可能になります。少々煩雑な手続ですが、初回1回のみのお話ですから、しっかり手続して、適切な事業所管理をしていただければと思います。
労働者1名でもいれば雇用保険の加入が必要になりますし、ハローワーク機能を利用したり、助成金を活用したりする場合には、雇用保険適用事業所番号が必要です。
こちらについても、労働保険番号と同様、原則として事業所単位での取得になりますが、ほとんどの企業では、ハローワーク関連の処理は本社で一括して行うことになると思います。「雇用保険事業所非該当承認申請書」(通称「非該当」)を行っていただき、本社に一括できる体制を構築していただければと思います。
※(3)(4)は煩雑な手続ですので、本社管理部でも忙しさにかまけてうっかり忘れていたというようなことが多くなりますので、場合によっては、電子申請可能な社会保険労務士に委託していただくことで、大幅に軽減できるかと思います。(3)(4)が行われておりませんと、例えば労災事故が発生した場合に「事業所に労働保険番号が無い」ということになったり、助成金を活用したいと思っても、「雇用保険適用事業所番号が無くて申請が受理されない」などといった不都合が発生する可能性があります。
常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業所、営業所や工場などの事業場では、事業の業種区分により「安全衛生推進者」あるいは「衛生推進者」を選任しなければなりません。(労働安全衛生法第12条の2)
「衛生」のみでよいか、「安全衛生」が必要かの業種区分は、安全管理者の考え方と同じです。(林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、自動車整備業、機械修理業、家具・建具・什器等卸売業・小売業、旅館業、ゴルフ場等)
こちらは周知のとおりですが、本社と同様に、支店についても管轄の労働基準監督署に就業規則の届出が必要です。注意点として、タイトルが「就業規則」であるものだけではなく、「給与規程」「退職金規程」「育児介護休業規程」「パートタイム規程」「継続雇用規程」など労働条件に関する規程はすべて就業規則の一部ですので届出が必要です。
本社でご対応のとおりでご存じのことと思いますが、念のためポイントだけ記載します。
こうした小規模支店管理の問題は、IPOやM&Aなどの労務デューデリジェンスで指摘されて発覚することが多くなります。内部統制が問われる局面で、こうした組織管理の巧拙がポイントになるところです。
弊社では、実務的な観点から、人事労務を含め内部統制の整備をご支援させていただいております。社内規程や管理体制の整備でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。
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