2019/01/07
労働基準法第37条及び労働基準法施行規則第21条により、次に掲げる賃金は、割増賃金の基礎となる賃金には算入しないとされています。
なお、それぞれの手当について、拡大解釈を防ぐように行政解釈が示されております。
家族手当とは「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」を指します。また「住宅手当」とは「住宅に要する費用に応じて算定(費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多くすること)されるもの」を指します。
通勤手当については、一定額までは距離にかかわらず一律に支給するような場合には、この一定額部分は通勤手当ではないとされます。名称のみで判断を行わないように、ご注意をお願いします。
行政解釈によれば、「臨時に支払われた賃金」とは、「臨時的・突発的事由に基づいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、且つ非常に稀に発生するものをいうこと。名称の如何にかかわらず、右に該当しないものは、臨時に支払われた賃金とはみなさないこと。具体的には、私傷病手当(昭和26・12・27 基収第3857号)、加療見舞金(昭和27・5・10 基収第6054号)、退職金(昭和22・9・13 発基第17号)等がこれに該当するとされています。(昭和22年9月13日 発基第17号)
行政解釈によれば、「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」とは、賞与及び労働基準法施行規則第8条各号に掲げられる手当があるとされています。
なお、「賞与」とは「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」をいい、「定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず」賞与とはみなされない。
「労働基準法施行規則第8条各号に掲げられる手当」とは、賞与に準ずる性格を有し、次のものをさすとされています。(昭和22年9月13日 発基第17号)
(1)一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当
(2)一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
(3)一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当
ご質問の「社長賞」「努力賞」ですが、これを「臨時に支払われた賃金」として考えるのであれば、その支給事由が「臨時的・突発的事由といえるか」という判断になろうかと思います。ただし、企業の人事的施策としてモチベーションアップを目的として実施するものであるにも関わらず、「臨時的・突発的にすぎない」と言い切ってしまうのは違和感があるところと思われます。通常であれば、人事施策として支給の目的や基準を定めたうえで、従業員に周知して堂々と展開すべきものと考えられます。
また、「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」として処理する場合であれば、通常は賞与としてその算定ルールを会社が定めたうえで運用すること通常かと思われます。そうなれば、実務処理も賞与に準じて、賞与明細を発行して、社会保険料の処理においても賞与支払届を提出する等の処理が必要です。
結果として、「臨時」でも「賞与」でもないとなれば、割増賃金の計算から除外せずに通常の手当と同様に取り扱いを行う必要があります。
割増賃金の計算から除外せずに通常の手当と同様に取り扱いを行う場合であって、固定残業代を導入している企業であればその関係にご注意をお願いしたいと思います。
通常は固定残業代を設定する場合に、「残業単価×設定時間数」で手当金額を決定しているケースが多いのですが、イレギュラーな手当が発生することにより、本来想定していた残業単価が変動(上振れ)してしまい、割増賃金の不足が生じる場合がありますので、ご注意ください。
固定残業代はその性質上、毎月の給与が安定的に運用されることが想定され、変動給与については賞与として処理されることが望ましいと考えられます。例外的に臨時手当が発生した場合は、割増賃金の単価を再計算して、割増賃金の不足が生じていないか検証することが必要になります。
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