2018/11/12
年5日の有給休暇の確実な取得は、今年6月に成立した働き方改革法に定められた施策の一つです。対象となる有給休暇・対象者・企業が取るべき方策等について順番に見ていきます。
この法律の対象となるのは、来年4月1日以降の基準日に付与される有給休暇です。
例えば基準日を4月1日に統一しているのであれば、平成31年4月1日から平成32年3月31日までの1年間のうちに5日の有給休暇を必ず取得させることになります。
入社日基準で個別に基準日を定めているのであれば、従業員ごと個別の基準日から1年間の中で5日の有給休暇を取得させることになります。
この法律は、すべての事業所が対象となります。
法人だけでなく個人事業も対象ですし、規模の大小、業種の種類も問いません。
10日以上の有給休暇を付与される従業員の有給休暇について5日取得させなければならないため、フルタイムの方であれば、入社半年後に付与される有給休暇から対象となります。
比例付与の対象となるパートタイムの方であっても、所定労働日数が週4日の方は入社3年6か月以降に付与される有給休暇が、所定労働日数が週3日の方は入社5年6か月以降に付与される有給休暇が対象となります。
すでに、有給消化率が高く、会社が取得促進するまでもなく、すでにすべての従業員が毎年5日以上の有給休暇を取得しているのであれば、新たに特別な方策を考える必要ありません。
確実な取得をさせるための方策が必要な場合は、会社の有給休暇消化率の高さや勤務形態によって方策の内容を検討していきましょう。
(1) 休日が一斉の場合
すでにある休日の合間を有給休暇の計画的付与日として、連休をつくりましょう。
たとえば、これまで12月30日から1月3日までを年末年始の休みとしていた会社では、12月29日と1月4日を有給休暇の計画的付与日にするなどです。
また、5月のゴールデンウィークや秋のシルバーウィークの合間の平日なども計画的付与の対象としやすいでしょう。
(2) 休日が一斉でない場合
飲食店・小売業など、シフトにより休日が定められ、一斉の休みがない場合は、2か月に1日、公休に加えて1日の有給休暇を取得させるようにしてみましょう。この方法により、年6日の有給休暇消化ができます。
上記(1)と(2)の方法で、有給休暇を計画的に付与することにより、年5日を毎年のカレンダー、毎月のシフトに組み込んでしまえば、必ず年5日の有給休暇が取得されるようになります。有給休暇の計画的付与を行うためには、就業規則に規定をおき、労使協定を締結することが必要です。
(上記URLは厚生労働省岡山労働局のホームページです。計画的付与の実例が載っているほか、最下部に協定例のリンクがあります)
(3) 個別に有給休暇を取得させる場合
計画的付与ではなく、個別に有給休暇を取得させたい場合であって、従業員人数が多く、個別管理が容易でない場合には、基準日を統一することをお勧めします。
規準日をそろえておくことで、管理がしやすくなります。たとえば有給休暇の基準日を4月にそろえた場合、4月に新たな有給休暇の付与を知らせるとともに1年間で必ず5日の有給休暇を消化するようにアナウンスします。半年後の10月時点で有給休暇が何日取得されているか確認し、取得した日数が5日に不足している場合には、不足日数を残り半年で取得するように給与明細のコメントなどで本人に知らせます。半年後の時点で1日も取得していない方については、マネージャーと本人とで相談して、取得予定を決める、年末年始に計画的付与を行う、などの方策も必要でしょう。
会社は、有給休暇管理簿を作成し、従業員ごとの基準日、有給休暇を与えた時季、日数を記録しておかなければならないこととなりました。有給休暇管理簿は、有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。
有給休暇の取得義務に違反した場合には、30万円以下の罰金の罰則が適用されます。
以上のとおり、有給休暇を計画的に取得することが義務付けられるようになります。従業員がリフレッシュして有給休暇を取りやすい会社にすることで、より働きやすい職場環境の促進に努めましょう。
弊社、社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、日常的なちょっとしたご相談へのお答えから、労務問題やコンプライアンス対策まで、幅広く承っています。
お困りのことがありましたらお気軽に弊社の社会保険労務士までご相談ください。