2020/10/09
会社は労働者との雇用契約において、労働者にたいして安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)。また、労働者に対して健康診断を受けさせる義務を負っています(労働安全衛生法66条)。一人でも労働者を雇用していれば、これらの規定は該当します。
労働安全衛生法により、以下の健康診断の実施が義務付けられています。一般健康診断の内、雇入れ時の健康診断、定期健康診断は行わせる業務に関係なく実施が必要です。特殊健康診断は、一定の有害業務に従事する場合に必要となります。
なお、特定業務従事者の健康診断の対象となる業務には、「6か月を平均して月に4回以上行わせる深夜業」が含まれているため、恒常的に22時以降翌朝5時までの時間帯に業務を行わせる場合は対象となる点に、留意が必要となります。
それぞれの健診項目はこちら(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf)を参照ください。
健康診断実施後は、当該結果に異常の所見がある労働者に関して、健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聞かなければなりません(労働安全衛生法66条の4)。当該医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる等の対応を行わなければなりません(労働安全衛生法66条の5)。
(1) 期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)
(2) その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
各種健康診断の対象となる業務は、以下を参照ください。
厚生労働省の見解では、労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、法により、事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべきものとされています。
また、健康診断に要する時間が労働時間か否かが問題となりますが、こちらも厚生労働省から見解が出ています。
具体的には、一般健康診断については業務性が低いことから、当該時間に対する賃金は労使間の協議によって定めるべきものとし、特殊健康診断については業務性が高いとして、当該時間は労働時間として賃金支払いが必要とされています。
健康診断の実施不備は、労働安全衛生法違反として罰金刑に処せられるだけでなく、安全配慮義務違反、不法行為責任として民事上の賠償責任を負う可能性も否定できません。
過去の裁判例でも、健康診断の不実施又は不適切な対応により、使用者が数千万円の賠償責任を負った事案も現実として存在します。
対応不備による問題の発生は、決して蓋然性が高いとはいえませんが、有事の際は人命にも拘わる、必要かつ重要な責務ですので、日ごろから適切な運用を心がけましょう。
********
弊社では、実務に精通した社会保険労務士が、労務相談、人事制度の構築などに対応させていただいております。ぜひお気軽にご相談ください。
◆ガルベラのメールマガジンに登録しませんか◆
ガルベラ・パートナーズグループでは毎月1回、税務・労務・経営に関する法改正や役立つワンポイントアドバイスを掲載したメールマガジンを配信しております。 加えて、メルマガ会員のみガルベラ・パートナーズグループセミナーに参加可能!
10秒で登録が完了するメールマガジン 登録フォームはこちら!