2019/10/30
中国においても、商業秘密の重要性が認識されるようになっています。2008 年の『労働契約法』の施行などにより競業制限が法制化され、多くの人々に知られるようになったこと、転職の増加により雇用の流動化による商業秘密の流失が社会問題化してきたことなどから、企業は、自社の商業秘密を守るために競業制限を採用するようになってきています。
商業秘密を保護するためには、従業員と秘密保持に関する契約を結び、対象従業員に対して競業制限をかけることが重要です。
商業秘密とは、中国『反不正当競争法』第 9 条に規定されているものであり、「公衆に知られていない権利者に経済利益をもたらすことのできる、実用性があって権利者により秘密保持の措置が取られた技術情報と経営情報」を指しています。商業秘密は「技術情報」と「経営情報」という 2 つの部分で構成されており、「経営情報」とは、管理方法、生産・販売戦略、顧客名簿、製品の仕入先情報などであり、「技術情報」とは製造方法、工程プロセス、ノウハウ、設計図面などです。
競業制限とは、商業秘密を保護するため、使用者が従業員に対して、労働契約の終了または解除後の一定の期間に、同種類の製品の生産、同種類の業務の経営またはその他競争関係にある会社に就職をしてはならず、また元の勤務先と競争関係にある同種類の製品を自ら生産したり、または同種類の業務を経営したりしてはならないと定めることです。
商業秘密を保護するために、企業は、雇用契約書に秘密保持に関する条項を記載し、従業員と秘密保持協定を結ぶなどの対策を行うことが大切です。また、競業制限に関する契約書を結ぶことで、競争関係にある企業への転職を制限し、商業秘密の流出を防ぎましょう。
企業が従業員と競業制限に関する契約を締結する際に注意すべきポイントは次の 4 点です。
(1)対象者を限定する
競業制限の適用対象は、高級管理職員、高級技術職員及びその他の秘密保持義務を負う者に限定します。
(2)範囲を限定する
競業制限により就業してはならない範囲は、「本使用者と同種類の製品を生産または経営する、業務に競争関係のある他の使用者、または自ら開業して本使用者と競争関係にある同種類の製品、業務を生産または経営すること」に限られます。
(3)期間は 2 年以内とする
競業制限の期間は 2 年を超えてはなりません。
(4)経済補償金
企業と従業員との間で競業制限を結んだ場合、企業は競業制限期間内に月ぎめで従業員に経済補償を支払わなければなりません。
日本においても中国においても、現代社会においては、情報は企業の盛衰を握る重要な鍵です。商業秘密保護のための対策を取っていないのであれば、雇用契約書を見直し、秘密保持義務及び協業避止義務を課す等の対策を検討してみてはいかがでしょうか。
本稿は、みずほ銀行が発行するメールマガジン「Mizuho China Monthly 2019年7月号」に寄稿させていただいたものを再編集したものです。「Mizuho China Monthly 2019年7月号」の記事では、根拠となる法律の条文を記載しています。また、競業制限に関する紛争の現状や具体的なトラブル事例についても触れていますので、ぜひご参照ください。
『みずほ銀行 Mizuho China Monthly 2019年7月号(PDF)』
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