2020/03/27
この数年の間で、あなたは中国に行きましたか?
「中国スゴイ」「デジタルが浸透した世界だ」「深センは最先端の街」などなど、最近色々な話が聞こえてくるが、具体的に何がどうなっているかご存知だろうか。
中国はこの数年で大きく変わり、また今も大きく変わり続けている。
「遅れている」「なんだかよくわからなくて怪しい」「ちょっと怖い」というようなネガティブ印象を持たれがちな中国だが、今や中国はデジタル最先端の国。
おそらく皆さんの知らない「洗練されたユーザ体験設計」「最先端のデジタル活用」が多く存在している。
本記事では、デジタルに囲まれた「上海のあるビジネスパーソンの1日」をストーリー形式でお伝えする。中国の都市の生活を疑似体験していただきたい。
朝目覚めたら身支度をして、シェアサイクルの「mobike」で出勤だ。
多くのシェアサイクルが参入し倒産し、いまはmobikeを始めとした数社しか残っていない。「シェアサイクルは終わった」のような報道も日本ではあるが、実際のところシェアサイクルは相変わらず使いやすく便利な市民の足だ。
使い方は簡単、mobikeアプリで自転車に付いているQRコードをスキャンするだけだ。
自転車は大抵メインの通りであればそこかしこにあるので、1分も探せば見つかることが多い。
アプリを起動し、自転車のQRコードをスキャンすれば自転車のロックが解除される。使い終わったらロックを掛けるだけ。自動的に精算がなされる。
一部の駐車禁止エリアを除けばどこにでも乗り捨てて良い。家から駅まで、駅から会社まで、のような使われ方も多い。
会社近くで朝ごはんを買うことにした。都市部では全員が使っていると言っても過言ではない、モバイル決済で、だ。モバイル決済はアリババのAlipayと、テンセントのWeChatPayが二強だが、これらを使えないところは都市部ではほぼないという状態。なにもかもモバイル決済だ。
現金のやり取りをしていたのは過去の話。「現金を持ち歩かない」という若者も多い。 小さいお店に立ち寄り、QRコードをスキャンして、Alipayで肉まんを購入した。 |
コーヒーを飲みたくなったのでLuckin Coffee(瑞幸咖啡)を注文することにした。
Luckin Coffee2017年に創業してからわずか1年で2,000店舗以上(現在は4,000店舗以上)を出店、1年半で上場を達成した注目の新興企業だ。
注文は全てアプリ経由、ピックアップとデリバリーに特化している。だから店内にメニューはないし、店頭で注文することもできない。
「サードプレイス」などと呼ばれくつろぎの空間を提供するスターバックスとは異なり、Luckin Coffeeは、ほとんどが席がないピックアップ/デリバリー特化型の店舗だ。そのため、店舗面積が小さく、地価が高い場所でも出店しやすい。また先述の通り、注文と決済はアプリからのみのため、店員はレジ業務が不要。ドリンクを作る業務のみに集中できる。結果として1人か2人のみで業務を行なっている店舗が大半だ。
上海の中心部では、数分歩けばすぐにLuckin Coffeeが見つかる。
アプリで近くの店舗を見つけて、カフェラテを注文、スマホ決済を完了させる。3分歩いて店舗に着いた時にはもうカフェラテは完成していた。
午前の仕事を終え、ランチの時間だ。同僚と外に出てバーガーキングにやってきた。
壁やテーブルに貼ってあるQRコードをスキャンするとメニューが出てくる。そこで商品を選び、そのままモバイル決済で支払い完了。
日本では、QRコード=決済、という印象が強いと思われるが、QRコードの利用は決済だけではない。QRコードは決済を始めとした「全てのものの入り口」だ。
決済完了後、自分の番号が呼ばれたら品物をとりにいく。スマホ上で注文と決済が完了するので、レジに並ぶ必要がないので楽々だ。
店舗によっては、レジは使わない前提になっているからか、声をだして店員を呼ばない限りレジでの決済をしてもらえない。
バーガーキングの例をあげたが、特にファーストフードではこのような形式をとっているお店が多い。並ぶのはもう過去の話なのだ。
おやつの時間になったので、同僚と一緒にタピオカミルクティーを頼むことにした。
フードデリバリーは価格が安いこともあり、日本以上に中国の日常に浸透している。 かなり多くの会社のメンバーが毎日利用するので、会社にはデリバリーされた食品の専用置き場があるほどだ。 |
筆者が以前勤めていた会社にあった、食品デリバリ専用置き場
朝・昼・晩のご飯とおやつのタピオカ、のように一日4回使うこともある。
決済はもちろんスマホ決済(WeChatPay/Alipay)で可能なので一瞬だ。初回利用でも、面倒なクレジットカード情報入力などなく、WeChatアプリもしくはAlipayアプリ上で数タップするだけで決済が完了するのはありがたい。
まとめてタピオカのお金を払ってくれた同僚に、チャットアプリの「WeChat」で送金。
WeChatのペイメント機能は、若者であれば感覚的にはほぼ全員が利用している。
0.01元(0.15円)単位で細かく支払えるからきっちり割り勘ができる。
例えば「飲み会の集金は端数を切って4,000円で集金、残りは泣く泣く幹事が負担」なんていうことも不要だ。
仕事のあとは会食だ。配車アプリのDIDIで白タクを呼ぶ。今や普通のタクシーよりも、DIDIで呼ぶ白タクの方が質が高く安心だ。
DIDIで走行中にユーザ側に表示される画面。目的地を変更したり、ルートを選択したりもアプリ上から可能
既存のタクシーでは客とドライバーが会うのは「どうせ一回限り」だ。だから雑な運転や、故意の遠回りも発生してしまうこともある。
しかしDIDIでは、DIDI側に運転データやお客さんからの評価データが蓄積される。悪い評価が重なれば、給料が下がったり、運転ができなくなったりする可能性もある。
またDIDIがすごいのは、お客さんからの評価データだけではなく、「DIDIが指定するルート通りに運転したか」「急ブレーキを踏んでいないか」などの客観的な運転データもドライバーの評価の対象になることだ。
DIDIの示すルール通りに頑張れば給料が上がるため、街中にある普通のタクシーとは異なる高いサービス品質を実現できている。
会食は火鍋だ。ここのお店はテーブルについているQRコードを各自がスマホで読み取り、各自がスマホ上でメニューを選ぶという形式だ。
自分が選択したものだけではなく、同じテーブルの人が何を入れたかが一覧となって表示され、全員がスマホ上でそれを確認できる。
通常、ある程度人数が多い会食では全員がメニューを見ることが難しく、幹事に注文が任されることも多い。
しかし、このように「各自のスマホがメニュー」という状況だと、全員が注文に参加できるだけではなく、何が選択されているかが可視化され注文時に過不足が発生しにくい上に、幹事の注文取りまとめの負担も減り、代わりに全員の注文時の満足度があがる。
スマホの画面。今何が選択されているか、誰が何を選択しているかがわかる
加えてスマホからタップ一つで注文が完了するため、店員は注文業務を行う必要がない。
このお店では、店員は注文業務ではなく、アクを取ってくれる・鍋を作ってくれるなどの「人だからこそのサービス」に注力していた。
いかがだろうか。
今回は生活をご紹介するにあたり、わかりやすいよう決済周りの体験を中心にお届けしたが他にもユーザ体験を良くするデジタル活用は数多く紹介する。
特段「ハイテク」ということはない。
テクノロジーを見せびらかすのではなく、「デジタルを使う」が目的化するわけではなく、あくまで「ユーザの体験を良くする」ことを志向したデジタル活用が自然になされているのが中国だ。
中国は英語やクレジットカードがあまり使えないこと、また現地銀行口座や電話番号がないと使えないサービスが多いこと、アプリ自体が中国語であることが多いことなどから、ご自身のみでスムーズに現地サービスを体験いただくことはハードルが高い状況です。
株式会社hoppinでは、このような体験ができる中国ビジネス視察ツアーを開催しています。 場所は上海もしくは深センでの開催が多いですが、ご希望に合わせてお選びいただけます。 主に法人様向けの完全カスタマイズツアーとなりますが、個人向けも定期的に開催しております。ご興味のある方は下記までお問い合わせください。
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