2020/10/05
A、解雇補償金にMPFの積立金を充てることは可能です。ただし、その解雇の内容やMPFの加入状況を再度振り返り、確実なものとしたうえで解雇の手続きを進めてください。以下解説にて、MPFや解雇補償金の概要および計算方法などをご案内いたします。
香港では従業員の老後の生活保障のためにMPF(Mandatory Provident Fund)という強制積立年金への加入が義務付けられています。正社員であれパートタイマーであれ、18歳以上65歳未満の従業員は、雇用開始から60日以内にMPFに加入しなければなりません。
給料の支給をしていれば加入しなければなりません。ただし、7,100香港ドル以下の従業員は免除されます。また、香港滞在が13カ月以内の従業員や、外国籍従業員は加入は強制ではありません。
香港企業がMPFに加入せずにやり過ごしていると、罰金や禁固刑に処せられる可能性もあります。特に外資系企業はこのことに気が付かないケースがあり、しばしば問題になります。
毎月の保険料は、基本給、諸手当などの総支給額に対して一定の掛け率を乗じて算出します。掛け率は従業員5%、企業5%で合計10%。ただし、30,000香港ドル以上の場合は30,000香港ドルを超える部分は保険料を負担する必要はありません。
香港のMPFは日本のように公的な年金事務所のようなものがあってそこが運用しているわけではなく、香港にある民間の保険会社や銀行が保険料を徴収して自身で運用を行い、支払いに備えます。香港では法律で強制的に加入しなければならないことが決まっているだけで、その資産の運用については政府が行っているわけではなく、競争にさらされているのが特徴です。
香港のMPFは基本的に60歳に到達するまでは解約はできませんが、外国籍従業員については香港を離れて帰国等する場合は1回に限りMPFを解約することができます。しかし、再度香港に来て会社勤めをした場合はMPFに再加入しなければならず、今後は65歳まで受け取ることができないこととなっています。
香港のMPFについては強制性公積金計画管理局のホームページ(下記URL)に詳細が掲載されていますのでご参照ください。
香港では、会社が従業員に対して雇用契約を解除する場合、その従業員に対して下記のような事前予告通知又は事前通知に代わる金銭の支払いを行う必要があります。
※雇用契約に従うといえども、香港の法律(雇用条例)の規定を下回る取り決めはできません。
香港法人が従業員を解雇して、その従業員と同じ役職に新たに従業員を採用するつもりがない場合は、解雇する従業員に対して解雇補償金を支払わなければなりません。また、従業員が自己都合で退職する場合は解雇補償金は払う必要がありませんので、解雇補償金の話は生じません。
香港雇用条例に定める解雇補償金(解雇手当)とは、24カ月以上継続して雇用されている従業員が以下の条件の下で解雇ないし退職した場合に会社から支給される金銭を言います。なお、次項の長期服務金を受給した場合は重複して解雇補償金を受給することはできません。解雇補償金の受給資格は次のいずれかに該当していることとなります。
香港雇用条例に定める長期服務金とは、5年以上継続して雇用されている従業員が以下の条件の下で解雇ないし退職した場合に会社から支給される金銭を言います。長期服務金の受給要件は次のいずれかに該当していることとなります。
香港雇用条例に掲げる解雇補償金及び長期服務金の計算方法は以下の通りです。なお、雇用期間が1年未満の場合は按分計算をします。
・月給制の場合
以下の(a)又は(b)のいずれか小さい金額が適用されます。
・日給制の場合
以下の(a)又は(b)のいずれか小さい金額が適用されます。
なお、解雇補償金又は長期服務金は、必ず解雇後2ヶ月以内にお支払いください。香港法人が合理的な理由なく解雇補償金を支払わない場合には50,000香港ドル以下の罰金を科される可能性があります。あるいは、香港法人が故意に合理的な理由なく長期服務金を支払わない場合には、350,000香港ドル以下の罰金及び3年以下の禁固刑を科される可能性がありますのでご注意ください。
下記のリンクは東亜銀行の解雇補償金の自動計算機です。
ご参考になれば幸いです。
https://www.hkbea.com/html/en/calculator-long-service-payment_main.html
香港法人が解雇した従業員に対して解雇補償金を支払う場合、MPF積立金のAccrued Benefit(退職給付引当金)を解雇補償金として使うことが可能です。
Accrued Benefitの金額の確認する方法は、まずご利用のMPFの会社に確認してください。
Accrued Benefitの金額を受け取るためには、MPFの会社に申し込みが必要となります。
この申込書はMPFの会社が提供しています。
従業員が解雇等されたときに解雇補償金が支払われる場合、MPFの積立金のうち、会社負担の分が払い戻されることになります。つまり、個人の掛金部分については原則としてその者が60歳以上で退職をしない限り受給できません。(一部例外あり)
もう少し細かく言いますと、払い戻されるMPFの額は、香港法人がMPFの会社に支払った毎月のMPFの積立金とその金額に係る運用利益です。したがって、投資状況によっては運用利益がマイナスになるケースもあります。
なお、解雇補償金がMPFの Accrued Benefit から支払われた場合、その金額分については当該従業員は将来受給予定の年金額から控除されることになります。また、香港法人が負担してきたMPFは、香港法人に還付されるのではなく、あくまでも香港法人が従業員本人に支給する解雇補償金に充てられます。
以上、香港のMPFと解雇補償金について解説させていただきました。
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