GERBERA PARTNERSブログ

香港|香港法人の口座開設が難しくなったと聞いていますが本当ですか?

2023/10/16

Q、当社は中国の会社と取引をしている関係で、代金徴収を目的として香港に子会社を設立したいのですが、香港では銀行の法人口座の開設がとても難しいと聞きました。通常、日本の会社は、どのような感じで香港子会社を設立しているのでしょうか?

A、香港に日本法人の子会社を設立するのは簡単なのですが、2016年頃から法人口座を開設するのが難しくなりました。これは、マネーロンダリング(資金洗浄)を回避したい欧米の圧力と聞いていますが、最近は少しずつ緩和されています。法人口座開設にあたってのメリット、デメリットその他回避策についてご案内してまいります。

 

解説(公開日:  最終更新日:

 

香港に進出をご検討の会社様から「日本の会社が香港に会社を設立することはできても、法人口座を開設するのは難しい」といわれたと、当社に照会いただくことがよくありますので、ブログにまとめることにしました。

 

これまでのサポート経験で申し上げますと、日本法人の子会社という位置づけで香港法人を設立されたお客様は、たしかに法人口座の開設について壁にぶつかるケースがあります。

 

当社が日本のクライアントの香港法人設立をサポートする際は、香港に現地法人を設立し、そのあとHSBCなど香港の地場銀行での口座開設をサポートしています。これは決してできないわけではないですが、やはり「香港で何をするか」が重視され、商流や契約相手との書類の準備なども必要で、かなり詳しく銀行への説明を要します。

 

そのため、香港進出を手掛けている会計事務所やコンサルティング会社は、このような日本の会社に対しては「日本の会社が香港に子会社を設立するのは口座開設の観点で難しいので、個人で出資する形で香港現地法人を設立しませんか?」と回答しているのかなと考えます。もちろん、当社も原則としてそれをお勧めしています。

 

すなわち、日本の会社が香港に子会社を設立する際は、同社が取引をしている日本のメガバンクの香港支店や横浜銀行など大手地銀が現地で提携する香港地場銀行で口座開設を行うのが一般的です。この取引というのは単に口座を持っているだけではなく、融資を受けているという意味になります。

 

なぜこのようなことになっているかというと、日本の法人登記制度に原因があります。日本の株式会社を設立する際は、まず定款を作成し、公証役場の公証を経て、そのあと法務局に登記申請を行いますが、発起人(最初の株主)こそ定款に記載されるものの、登記完了後に発行される会社謄本には、株主情報は表示されません。定款には最初の株主しか掲載されておらず、株主が変わったとしても、それを公的に証明してもらう方法がありませんので、そのように公的な株主証明が出ない日本の法人は、HSBCなど香港地場銀行では受け入れられないケースが多いのです。

 

実は香港では、2016年6月までは日本法人の子会社でも簡単にHSBCなど地場銀行での口座開設ができたのですが、それ以降は開設不可能になりました。 ただし、当社のように長年HSBCに優良な顧客を紹介していれば、様々な書類を提出して「クリーンな会社であること」の証明を進めることで認めてもらうことが可能になります。しかし商流や証明書類などを準備しなければならないことから、非常に骨が折れる作業を伴います。

 

メガバンクや大手地銀と長年お取引をされている場合は、その信用をもとに、現地の同行支店へ日本の会社を紹介し、現地支店での調査を経て、開設準備が進みます。これが一番の近道ですので、メガバンクが現地銀行を紹介してくれるのであれば、それに乗るのが最も早いと思います。

 

また、これはどの会社でもできる話ではなく、メガバンクから融資を受けていたとしても、財務状況が悪ければ断られる会社もあります。そのため、海外子会社が邦銀の支店の口座を持っていることは、一つの信用創造にはなるのかなと考えます。

 

ただし、口座維持コストや送金コストはHSBCなど香港地場銀行の5~10倍くらいはかかるイメージです。とはいえ、口座にいくら残金を入れておくかにより口座維持手数料はかからなくなるか、かなり低くなりますので、そうなると送金時の手数料だけが地場銀行と比べると割高感があるといった感じです。

 

あとは邦銀支店を使うデメリットとして、ネットバンキングの「マルチカレンシー(多国籍通貨)対応」や、現地での銀行手続きの煩雑さ、現金化の面倒さが挙げられます。

HSBCやハンセン銀行など香港地場銀行は他の通貨に口座内で変換するのがスムーズで、海外送金もネットでできます。一方、年々改善されていっているものの、日本の銀行はネットバンキングでこれらのマルチカレンシー対応やネット送金が地場銀行と比べれば少し面倒または不可といったイメージです。

 

邦銀支店のメリットとしては、ネットバンキングの画面が日本語対応しているので貴社の経理担当者様は安心されるのではないかと思います。そのため、維持コストや送金コストはやや高くなるかも知れませんが、邦銀支店で進められるのであれば、開設しておかれるのもいいかと思います。そして邦銀口座が開設されているのを見ると、香港の地場銀行も開設をスムーズに進められる可能性が高くなります。

 

銀行との取引可否については、国際的な思惑も絡むため、時事情報が重要になります。当社は常に法人設立を進めていますので、なんなりとご相談ください。

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