2020/11/19
A、コロナ禍で、海外赴任の在り方が今後どのように変わっていくのかを踏まえ、駐在員の再赴任および新規赴任に向けて、住宅・帯同家族のケア・ハードシップ手当の見直し等の海外人事担当者様がご留意しておくべきポイントをご案内します。
海外赴任国や地域が劣悪な環境の場合、赴任・出張する従業員に対しては、現地のコロナ感染症が鎮静化するまでの期間は、留意点2の生活手当補助以外に、「特別手当」の支給を検討されている企業が多いようです。
また、「コロナ感染予防キット」や「生活に関する物資」といった目に見える「物」で支給する企業も増えています。
ここで一番大事なのは、海外赴任者に対して、会社が従業員の身体・生命の安全を重く考え、行動しているということを理解してもらい、海外赴任者に安心を与えるということです。
海外赴任国と日本との医療水準のギャップを埋めることが困難な国・地域については、コロナ感染拡大が完全に鎮静化するまで、「再赴任は見合わせる」という対応も検討すべきだと考えます。
判断基準については、留意点1(前号配信)の計算式とは別に、たとえば、前後数週間で、コロナによる死亡者数が「ゼロ」を維持したとき、といった分かりやすい、「社員が納得しやすい明確な基準」が必要でしょう。
もし、ビジネス上の問題で、どうしても再赴任しなければならないときは、重度の予防措置、長期間生活できる備蓄品の準備、そして、暴動・治安悪化に対応するための警護員の雇用など、十分な安全対策を講じることが必要となります。
既に多くの会社で、緊急退避した駐在員の帰任決定や帯同家族の渡航延期措置を講じています。
現地に家財道具一式を放置したまま退避した駐在員にとっては、現地の住居を引き払い、引越しも必要になりますが、物流網が停滞している地域においては、早期の輸送が難しいケースも見うけられます。
また、再赴任を単身として変更する場合には、現地の住居を単身基準の住居に変更する必要がありますが、外国人に対する風評被害や現地の混乱によって、住居探しが難しくなることも懸念されます。
会社としては、コストの関係上、「早急に解決したい問題」ですが、駐在員や帯同家族に無理を強いるべきではなく、「最大限の配慮をすべき」と考えます。
もし、世界的に第二波・第三波や同様のパンデミックが発生した場合、現地政府が移動制限や都市封鎖、入国禁止措置などを実行する前、日本政府が入国制限措置を行う前に帰国させる必要があります。
万が一、帰国が遅れた場合、現地に滞在せざる負えない状況になったことに備えて、「安全な住居を確保」し、少なくとも「数か月の滞在ができるように、食料品などを備蓄しておく」必要があるでしょう。
第一波では、多くの国で、外出が規制され、スーパーも品薄で生活物資の調達が出来なかったことを考えると、長期の滞在に耐え得る備蓄が必要であることは「常識」として想定しておくべきでしょう。
さらには、第一波同様、日本からの追加物資の供給は、ほぼ不可能であるという前提に立っていたほうが良いかと思います。
基本的な考え方としては、「空港・航空会社が通常稼働しており、空港までの移動の安全性が確保できている」うちに退避するのが、セオリーです。
そのためには、退避判断は、できるだけ早めに行う必要があります。
また、新型コロナウイルスは感染の拡大速度が速いため、赴任地はもちろん隣国等で大規模に再度、発生した場合には、あっという間に世界中に広まる可能性もあります。
そのため、「不安を感じる情報」がメディアや外務省、危機管理コンサル会社現地政府などから発令されたときには、躊躇せず早めに退避することが重要です。
退避の順番としては、「帯同家族」~「事業所責任者以外の駐在員」、そして最後に「事業所の責任者」というのが、一般的です。
また、一時帰国者・帯同家族の「帰国時の空港から宿泊先までの移送」をはじめ、「健康管理」、「日本滞在中の業務や給与支給、税務処理などの人事上の取扱い」、そして、「家族への心理的な配慮」などを今のうちに準備しておくべきでしょう。
結論として、海外駐在員規程に加えて、上記のような有事に迅速に対応できる「海外危機管理または安全対策に関するマニュアル」を用意しておくことを強くお勧めいたします。
安全対策費の捻出には、駐在員の数を減らした「コストダウン効果額を充当する」のが、現実的な方法です。
駐在員を減らして、企業としての感染症リスクを低減し、尚且つ、その効果額を駐在員の安全対策に充当するという方法は、多くの企業で検討されています。
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