2022/05/11
A、日系企業が多く進出している地域として、デリー首都圏、ニムラナ日本企業専用工業団地、グジャラート州、チェンナイ、ムンバイ、バンガロールなどが挙げられます。その他にもインフラや工業団地のの整備を進めるなど、企業の誘致を積極的に進めている地域もあります。進出先を検討する際には、それぞれの地域の特色や利点、どのような企業が多く進出しているのかなどを比較すると良いでしょう。
インドの国土は日本の約9倍の広さがあります。万年雪の積もるヒマラヤ山脈、灼熱のタール砂漠、世界一の降雨量を記録する北東部の密林、比較的冷涼な南部の高原地帯、海洋に面するムンバイやチェンナイなど、地理も気候も様々です。インドには30以上の州や中央政府直轄領(デリーなど)がありますが、これは単なる行政上の区分というだけではなく、各州ごとの独自性が強く、民族や文化・習俗も様々であり言語さえも異なります。それぞれの州の権限も強く、州独自の法律もあります。謂わば、ヨーロッパの国々が一つの国として統合された状態、それがインドのイメージに近いかもしれません。
在インド日本大使館とジェトロが共同で取りまとめた資料(2020年10月時点)によると、インドに進出している日系企業は1455社、拠点数は4948となっています。インド国内には、多くの日本企業が集まっているいくつかの地域があります。インドのどこに進出するのかを検討する際のご参考に、主要な6地域を紹介します。
インドの首都であるデリー準州(中央政府直轄領)及び、デリーに接する各州の一部を合わせた地域がNATINAL CAPITAL REGEON (NCR)と呼ばれるデリー首都圏です。インド国内最多、約1300の日系企業の拠点を有する地域です。
首都であることが進出先として選ばれやすいことはもちろんですが、1980年代、インド最大の自動車メーカーであるマルチスズキの製造拠点がNCR内のグルグラム(旧称グルガオン)に置かれたことが地域の産業と発展に大きな影響を与えました。多くの日系企業を含む数多くの自動車関連企業が、グルグラムに製造拠点を置きました。90年代以降、工業団地やインフラの整備が更に進み、自動車関連のみならず多くの企業が、各種規制も厳しくコストも高いデリー市内を避けてグルグラムに拠点を置くようになりました。果てしなく荒野が広がるだけであったグルグラムは変貌を遂げ、現在では、工業地帯としてだけでなくオフィスビルやタワーマンションが所狭しと並び、メトロの走る近代的な都市への変貌を遂げました。日本人が最も多く居住する地域でもあり、日本人向けの各種サービスもインドで最も充実している地域といえるでしょう。
既に過密状態となったグルグラムの南西に位置するマネサールなどの地区に工場地帯が拡大しています。また、デリーの東に接するウッタルプラデーシュ州のノイダ地区もデリー首都圏の主要な工業地帯です。同州は政治的な要因から一時期発展が停滞していましたが、2017年以降の州政権交代以降、中央政府の強力な後押しも得て急速に発展しており、今後大いに期待できる地区となっています。
ラジャスタン州にあるニムラナ工業団地は、グルグラム、マネサールの南西に位置します。デリーからムンバイに至る国道 8 号線に面し、デリー空港からは約 105 キロ(約 1 時間半)の道のりです。2021年現在48社の日系企業が工場を構えています。
2006 年 に、ラジャスタン州政府の産業開発・投資公社とジェトロが「対日投資誘致キャンペーン」を支援する覚書 を交わし、この一環としてニムラナ工業団地が日本企業専用に分譲されました。現在では日本食レストラン等も営業しており周辺の生活環境も整ってきています。ニムラナ工業団地の入居率も約9割に至っており、ラジャスタン州政府は、ニムラナにほど近いギロット日本企業専用工業団地を 2015 年 4 月より分譲しています。
デリー首都圏からの地理的利便性に加え、 2017 年 7 月に実施された全国統一の物品・サービス税(GST)の導入により州境の壁が取り除かれたこともこの地域の発展を大きく後押ししました。
日系企業専用の工業団地であることから、2019年には、在インド日本大使館とニムラナ入居企業代表団がラジャスタン州政府に直接要望を伝えるなど、インフラなどの共通の課題に対し、日系企業各社が一丸となって対応することができるなどのメリットもあります。
首都デリーとインド最大の商業都市ムンバイを繋ぐ大動脈の中間に位置するグジャラート州は、企業の進出先として大きな注目を集めています。ナレンドラ・モディ首相は、インド首相に就任した2014年以前、10年以上にわたりグジャラート州首相を務めていました。当時のモディ・グジャラート州首相が道路や水、電気といった基礎インフラ整備、ビジネス環境整備に注力したことで、充実した基礎インフラはインド随一とも言われています。
デリーにもムンバイにもアクセスのよい地理条件も大きな魅力となっており、州の中心都市であるアーメダバード郊外のサナンドⅡ工業団地には、タタやフォードなどの自動車メーカー、ボッシュやマキシスなどの自動車部品メーカー、ニベアなどの化粧品メーカー、ネスレ、コカ・コーラといった食品・飲料メーカーなど、20社程の日系企業を含め約200社が入居しています。また、 2013年より分譲を開始されたマンダル日本企業専用工業団地も好評です。同工業団地では日系企業によるレンタル工場のサービスも行われています。グジャラート州内全体には、345の日系企業の拠点があります。
グジャラート州内の港やインド最大の貿易港を有するムンバイへのアクセスに優れ、インドを生産拠点としたアフリカへの輸出の拡大も視野に、グジャラート州は今後の更なる発展が見込まれます。
グジャラーティーと呼ばれるグジャラートの人々は、信頼を大事にする伝統的な気質があり、また穏やかな人が多く、仕事のやりやすさも評価されます。他方、州内の飲酒が禁じられており、レストランでの飲酒ができないなど(例外として、所定の手続きをとって自宅で飲酒することは可能)日本人駐在員にとっては厳しい環境だとの声も聞かれます。
ムンバイの衛星都市ターネー、新しく開発されたナビムンバイ(新ボンベイ)など周辺の大都市を含めた都市圏人口は2300万を超え、世界第6位の巨大な大都市圏を形成しています。デリーに比べて街が洗練されている印象で、都市としての風格が感じられます。アメリカのシンクタンクが2016年に発表した世界都市ランキングにおいて、インドの都市としては首位の第44位と評価されています。ムンバイに暮らす人々も全体的に洗練された印象で、デリーに比べると仕事も比較的スムーズに進みやすいです。また、治安も比較的良好で、夜遅くに若い女性が一人で市内列車を使い夜道を歩いて帰宅する姿も普通に見られます。華やかで娯楽施設も多いムンバイは、日本人にとっても生活しやすい街でしょう。
アラビア海に突き出す半島になっているムンバイは、迂回路が限られており、しばしば大渋滞に巻き込まれます。2009年に海上高速道路「シーリンク」が開通したことで随分渋滞が緩和されたとはいえ、通常ならば10分程度の道のりに夕方の混雑時には1時間以上かかるということもざらです。ムンバイは水はけの悪い土地なので、毎年雨季には洪水により交通が麻痺することも少なくありません。
ムンバイは国内随一の商業の中心都市であり、国全体のGDPのうち5%、工業製品の25%、海運の40%、資本取引の70%を占めます。インド準備銀行、インド国立証券取引所といった官民の金融機関をはじめ、多くのインド企業の本社や多国籍企業の主要拠点が置かれています。ムンバイを含めたマハーラーシュトラ州内には、デリー首都圏に次いで多い811の日系企業拠点があります。ムンバイには金融業・保険業の拠点やメーカーの流通拠点等が多く、州内のプネー、ナグプールには、機械・化学の製造拠点等が多いです。
インド南部、東海岸に位置するタミルナード州の州都チェンナイ周辺には、日系のルノー日産、ヤマハ、いすゞ、外資系では現代、フォード、ダイムラー、BMW、インドのTVS、アショック・レイランド、ロイヤル・エンフィールド、ヒンドゥスタンなど、自動車や二輪車メーカー各社が工場を構えており、「南アジアのデトロイト」とも称されます。
チェンナイ港などの大規模な港もあることから、インド国内向けにとどまらず、東南アジアなど周辺国への輸出の拠点としても注目されています。チェンナイ周辺には、日系企業が開発整備・運営に携わっている複数の工業団地があり、日系企業が進出しやすくなっています。タミルナード州内には589の日系企業拠点があります。チェンナイ市内ではチェンナイメトロの建設が進むなど、インフラや住環境も改善されています。
タミルナードゥの人々は堅実で謙虚な人が多いとも言われ、北インドのゴリゴリとアグレッシブなインド人よりも親しみやすさがあります。他方、大声で言い合っても次の日にはケロッとしている北インドの人たちとは対照的に、一度関係を損なうと二度と心を開いてくれない、というようなこともあるので注意が必要です。
カルナータカ州の州都ベンガルールは、標高920mの高原にあるため、最も暑い4月でも最高気温は33度前後、冬の最低気温は12度前後と、非常に過ごしやすい気候です。市域人口は推計1200万人。主要言語はカンナダ語ですが、英語の普及率が高く、小さな商店主やオートリクシャーの運転手まで広く英語が通用します。インドの他の都市に比べると町も人々も整然としていて、「生活しやすい都市」「住みたい都市」といったランキングでは、常にインドで一位の座を占めるほど生活環境や治安面で優れています。
ベンガルールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれるようにインド随一のIT産業集積地です。もともとは米国のIT大手企業のオフショア拠点として発展し、現在では、世界有数の企業のグローバル戦略拠点や研究開発拠点を有する世界のイノベーション拠点になっています。ベンガルール近郊には優れた情報インフラ・設備の工業団地があります。インフォシス、ウィプロといった地元IT企業が本社を置くほか、日系・外資系IT企業も多く進出しています。日系企業は、ベンガルールを含むカルナータカ州内に519の拠点を有しています。IT企業、IT関連機器の他、トヨタが生産拠点を有しており、自動車関連の企業も多く進出しています。
世界のITアウトソーシングのうち半数以上はインドが受注しており、雇用人数で見ても日本のIT産業全体の約4倍もの規模があります。アメリカとの取引が全体の6割を占め、日本は全体の1%にも満たない状況です。言葉の問題など様々な障壁はあるものの、優秀なインドのITサービスを日本でももっと活用していく必要があるのではないでしょうか。
ベンガルールでは、IT産業のみならず、航空宇宙、バイオ産業も盛んです。また、ベンガルールは、インド国内最大のスタートアップ集積地でもあります。多数の多国籍企業が積極的に投資を行い、IT分野を中心とした研究開発を行っていることでも知られ、イノベーションが生まれやすい環境が発達しています。
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