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不動産登記法|相続登記の義務化とはいったい何のことでしょうか?

2022/08/23

Q、先日、知人から相続登記が義務化されると聞きました。その時はなんとなく聞き流しておりましたが、まったく内容をわかっておりませんので、具体的に教えていただけますでしょうか?

A、相続を原因として、日本全国で増え続けている所有者不明の空き地や空き家問題に対応した法改正となります。以下具体的に説明します。

 

解説(公開日:2022/08/23  最終更新日:2022/09/26 )

 

まず、今回法整備に至った経緯から説明します。

 

国土交通省の2016(H28)年度地籍調査によると、所有者不明土地は410 万ヘクタールで九州全体の面積(368 万ヘクタール)よりも広く、空き家は総務省の2018 年(H30)年の住宅・土地統計調査によると、849 万戸に及び空き家率は13.6%であることが判明しました。この原因は相続にあると言われています。

 

現在、相続登記は義務ではないため登記をしていなくても不利益を被ることはありません。さらに、都市部への人口集中や高齢化の進展により、遺産分割をしないまま相続が繰り返され、土地共有者がねずみ算式に増加してきたことで、土地所有意識の希薄化、土地有効活用の低下が起こっております。

高齢化がますます進展してくる昨今、この事態を放置していると、さらに所有者不明の土地が増えてくることとなります。

 

そこで、不動産登記法改正として相続登記の義務化が行わることとなりました。

 

具体的には、①2024(R6)年4月1日から、相続(特定財産承継遺言を含む)や遺贈で不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることの義務付けがされます。②所有者不明土地の要因である住所や名前の変更登記の未了についても変更があったときから2年以内の登記が義務付けられます。この②については、現段階では施行日が未定ですが、遅くても2026(R8)年までには施行される予定となります。

 

なお、①をしなかった場合は、10 万円以下の過料の罰則の対象となり、②についても登記を怠った場合は、5万円以下の過料の罰則の対象となりました。

 

さらに注意が必要なこととして、①については、2024(R6)年4月1日施行日以前に生じた相続にも適用されるということです。2027(R9)年3月末までに手続きが必要となります(「相続の開始を知り、かつ所有権を取得した日から3年を経過した日」と「2027(R9)年3月末」のいずれか遅いほうになります)。

また、②については、変更日から2年以内に登記申請が必要ですが、氏名・住所等に変更が発生した日と施行日(現段階では未定)のいずれか遅い日から法定期間(2年)が開始することとなります。

 

最後に、①については、義務化と同時に手続負担を緩和する「相続人申告登記」が創設されました。これは、登記名義人に相続が発生した旨を相続人が法務局登記官に申し出て、それを受けて登記官が職権で報告的登記を行うというものです(要するに、所有する不動産について内容の変更が生じた時に報告的に行う登記のことを言います)。

ただ、通常の相続の所有権移転登記とは異なり、権利そのものは移転しないため、相続人の持ち分も登記されません。従いまして、この登記で不動産を売買することはできません。

また、この登記については、相続人の一人が相続人全員分を申し出ることもできます。

 

「相続人申告登記」の具体的な活用シーンとして、遺産分割協議がまとまらず通常の相続登記ができない場合があげられます。この時、「相続人申告登記」をしていると相続登記をしている扱いとなりますので、3年以内に相続登記をしていなくても罰則の対象となりません。まずは「相続人申告登記」を行い、きちんと遺産分割協議が決まった時点で通常の相続登記をしていく流れが想定されます。

この件についての更なる制度の詳細については、お近くの法務局までお尋ねください。

 
 

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