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事業承継|特例措置の活用に向けて2024年中に確認すべきポイント

2024/03/28

Q、法人版事業承継税制の特例措置には適用期限があると聞きました。これから対策をはじめても、特例措置の適用を受けることは可能ですか?

A、法人版事業承継税制の特例措置は、2018年1月1日から2027年12月31日までの贈与・相続等が対象です。特例措置を受けるための要件を確認し、計画的に準備を進めましょう。

 

解説(公開日:2024/03/28)

 

事業承継や株価対策に関する総論については、こちらの記事をご参照ください。

助成金・補助金・給付金|

中小企業経営者が直面する相続税リスクと事業承継対策

 

1.法人版事業承継税制の特例措置の概要

法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

 

この法人版事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2つの制度があり、特例措置については、事前の計画策定等や適用期限が設けられていますが、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)がされているなどの違いがあります。

特例措置 一般措置
事前の計画策定等 特例承継計画の提出
2018年4月1日から
2026年3月31日まで
(*1)
不要
適用期限 次の期間の贈与・相続等
2018年1月1日から
2027年12月31日まで
(*2)
なし
対象株数 全株式 総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 贈与:100% 相続:80%
承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者 複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化 承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 あり なし
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から
18歳以上の者への贈与
60歳以上の者から
18歳以上の推定相続人
(直系卑属)・孫への贈与

*1:令和6年度税制改正により2年間延長

*2:特例措置で贈与税の納税猶予を受けている場合には、経営承継贈与者の相続の発⽣が2028年以降になったとしても、特例措置で相続税の納税猶予を受けることができます。

 

2.先代経営者と後継者の主な要件

■ 贈与の場合

先代経営者等である贈与者の主な要件

  1. (1) 会社の代表権を有していたこと
  2. (2) 贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
  3. (3) 贈与の時において、会社の代表権を有していないこと
 

後継者である受贈者の主な要件

  1. (1) 贈与の時において、会社の代表権を有していること
  2. (2) 贈与の日において、18歳以上であること
  3. (3) 贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること
  4. (4) 贈与の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
  5. (5) 贈与の時において、後継者の有する議決権数が、次のイ又はロに該当すること(特例措置)
    1.  イ 後継者が1人の場合
        後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除きます。)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
    2.  ロ 後継者が2人又は3人の場合
        総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除きます。)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
 

■ 相続の場合

先代経営者等である被相続人の主な要件

  1. (1) 会社の代表権を有していたこと
  2. (2) 相続開始直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
 

後継者である相続人等の主な要件

  1. (1) 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有していること
  2. (2) 相続開始の時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することなること
  3. (3) 相続開始の時において後継者が有する議決権数が、次のイ又はロに該当すること(特例措置)
    1.  イ 後継者が1人の場合
        後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除きます。)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
    2.  ロ 後継者が2人又は3人の場合
        総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者(他の後継者を除きます。)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
  4. (4) 相続開始の直前において、会社の役員であること
    (被相続人が70歳未満で死亡した場合及び後継者が都道府県知事の確認を受けた特例承継計画に記載されている者である場合を除きます。)
 

3.2024年中に対応すべきポイント

先代経営者等については、会社の代表権を有していた(又は現在も有している)方で、議決権の一定割合以上を有していればよく、多くの場合は要件を満たすと思われます。

 

他方、後継者については、贈与の場合であれば「贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること」、相続の場合であれば「相続開始の直前において会社の役員であること」の要件を満たしておく必要があります。

 

特例措置は、2018年1月1日から2027年12月31日までの贈与・相続等が対象であることから、後継者となる予定の方(またはその可能性ある方)は、2024年中に役員に就任しなければ「贈与の日まで引き続き3年以上を会社の役員であること」の要件を満たせなくなってしまいます。また、突然、相続が発生してしまった場合も、後継者となる予定の方(またはその可能性のある方)が役員になっていなければ、特例措置の活用を選択肢として検討することができなくなってしまいます

 

法人版事業承継税制の特例措置は、株式等に係る贈与税や相続税の納税が猶予され、また、一定の条件を満たした場合はその納付が免除されるという大きなメリットがある一方、認定後も一定期間ごとの手続きが必要であること、認定の取消し事由があり、認定が取り消された場合は、猶予されていた税額に加え利子税を納付しなくてはならないことなどのデメリットもあります。そのため、会社の状況(株価の状況)、社会情勢、後継者の方の意向などを総合的に判断することが必要ですが、特例措置を活用するかは、その適用期限である2027年12月31日までに見極める必要があります。

 

慎重な検討を重ねた結果、いざ特例措置を活用しようとした際に、後継者の方が要件を満たしていなければ、特例措置を受けることができません。現在、後継者の方が要件を満たしていない場合であっても、2024年中に対応をすることで特例措置の活用が選択肢として残ります。

 

この機会に、改めて、特例措置の要件や手続きを確認してみてはいかがでしょうか。

  1. ◆国税庁HP:法人版事業承継税制
  2. ◆中小企業庁HP:事業承継の支援策
   

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