2014/08/04
Q 会社の株式を先代経営者から後継者へ引き継ぐ際に、相続税が80%OFFになる制度があると聞きました。どのような制度か具体的に教えていただけますでしょうか?
A はい、確かにございます。最初に、この制度ができた背景を簡単にご説明いたします。現在、日本の中小企業の数は385万社、雇用者数は3,216万人となっており、日本経済を支える中心的存在になっています。
その中小企業ですが、1999年から2012年までの間に経営者の高齢化を背景に、約2割減少(98.4万社減少)しています。さらに、60歳以上の経営者の割合が、20年前の3割だったのが、5割まで上昇しています。つまり、経営者の高齢化と、今後10年で多くの経営者が事業承継のタイミングを迎える、ということになります。
このような現状の中で、対応策としてできた制度が、「相続税の納税猶予制度」です。これは、先代経営者が後継者に株式を引継ぐ際に、多額の相続税が発生し、事業承継を阻害してしまうのを何とか改善しようとして作られた法律です。
相続が発生した場合にこの制度を利用することで、納付すべき相続税のうち、株式に対応する部分の80%が「猶予」、最終的には「免除」されます。
猶予された相続税については、後継者がさらにその次の後継者に株式を引継ぐタイミングで、「免除」になりますので、この制度をうまく活用していければ、相続税を非常に低く抑えることができます。
一方で、特例を受けるためにはいくつか条件があり、代表的なものとして、①最初の5年間は従業員の雇用の8割を維持すること、②猶予されている株式について、後継者は原則持ち続けること、③税務署と経済産業局へこの要件を満たしていることの届出書を忘れずに提出すること、などが挙げられます。
要件を満たし続けることや、届出書の定期的な提出など、煩雑なところもありますが、最近では税制改正によって徐々に緩和されていますので、今後はより一層受けやすい制度になっていきます。
また、「生前」に自社株を後継者に引継いだ場合の贈与税の納税猶予制度もありますので、ご自身が生きている間に株式を承継するのか、相続発生後に承継するのか、自社の状況に合った使い方もできます。
最後に、上記のような優遇措置を利用する場合、事前に現状把握を行うことが重要です。自社の株価はいくらなのか、何パーセントくらい承継するのか、税金はどのくらい発生するのか、などしっかりシミュレーションして実行に移されることをお勧めします。
弊社では株価算定、将来シミュレーション、事業承継の計画書の作成、納税猶予制度手続き、など事業承継に関する実績が豊富にございますので、ちょっと心配だなと思われたら、まずはお気軽にご相談下さい。