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社会保険|海外赴任者の社会保険の取扱いについて -社会保険編-

2018/06/25

Q、この度、海外事業の強化のため、海外子会社(現地法人)を設立しました。それに伴い、日本から海外子会社へ従業員を出向させる予定ですが、社会保険の手続きに関してどのような点に注意すればよいでしょうか。

  A、加入している保険制度によって留意すべき点や対応が異なります。また出向の形態や赴任国によっても違いが生じることがありますが、基本的な対応(健康保険、介護保険、厚生年金)を解説いたします。  

解説(公開日:  最終更新日:

海外赴任者に関する社会保険の取扱いに関しては、日本の制度と現地国の制度のいずれかが適用されるのかが問題となります。

 

前回(公開日:2018/5/16)掲載の労働保険(労災保険、雇用保険)に引続き、今回は社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金)について解説いたします。

   

◆健康保険

まず、雇用保険とは異なり、出向先から全額給与が支払われ、国内給与が発生しない場合は、国内の被保険者資格が喪失となることに注意が必要です。

 

赴任国では現地の医療保険制度に従うことになりますが、国内で被保険者資格があり、社会保障協定が締結されている場合は、現地での加入が免除される場合があります。協定内容は国により異なりますが、赴任期間が5年を超える場合は通常、社会保障協定は適用されません。

  (リンク)社会保障協定とは     <国内給与が発生する場合>

原則として、国内給与に対してのみ、標準報酬月額が算定されますが、例外的に現地給与も含めて出向元が賃金額を決定した場合は、現地給与、国内給与を合算した額に基づき標準報酬月額が算定されます。

  <国内給与が発生しない場合(出向先から全額給与が支払われる場合)>

単身赴任などでこの場合に該当すると、資格喪失となるため、親族を扶養に入れることが出来ません。親族は国内で国民健康保険に加入する必要があります。

  <給付を受ける場合>

国内の被保険者が海外で負担した医療費に対して、国内の健康保険から「療養費」が支給されます。ただし、かかった費用の7割が戻ってくるわけではなく、国内の医療費水準に対する7割の金額が後日給付されます。その為、赴任国によっては、療養費の支給だけでは不十分な場合や、信用のある保険証書がないと受診が出来ない場合もあり、民間保険会社の海外旅行傷害保険を付保することをお勧めします。

   

◆介護保険

結論から申し上げると、月末時点で非居住者となっている従業員については、当該月より介護保険料はかかりません。海外赴任者の健康保険の取扱いとは異なることに注意が必要です。

 

国内では健康保険料と一緒に保険料の納付を行っていますが、保険者は協会けんぽや健保組合ではなく、市区町村です。海外赴任により非居住者となる場合は、「介護保険適用除外等該当・非該当届」を年金事務所に提出することで納付対象外となりますので、忘れずに手続きを行いましょう。

   

◆厚生年金

国内の取扱いと同様に、基本的な仕組みは健康保険と同様で、国内給与が発生しない場合は、国内の被保険者資格が喪失となります。社会保障協定については、もともと年金の二重加入防止の観点から発生した制度であるため、協定適用国は医療保険よりも多くなっています。協定国との間では、赴任期間が5年までであれば、国内の厚生年金にのみ加入すれば足ります。また、現地の年金制度に加入した場合は、日本での加入期間を通算することが出来るため、掛け捨て防止に役立っています。

    <国内給与が発生する場合>

標準報酬月額の算定は、健康保険と同様となります。

また、厚生年金における標準報酬月額は、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金等の給付額に影響を与えるため、標準報酬月額が下がる場合、上がる場合の影響について、従業員への説明は特に重要です。

  <国内給与が発生しない場合(出向先から全額給与が支払われる場合)>

健康保険と同様に、単身赴任で資格喪失となった場合は、扶養という概念がなくなるため、3号被保険者であった配偶者は国内で国民年金に加入する必要があります。

   

以上が海外赴任者の社会保険の取扱いについての解説となります。

労働保険や社会保険制度は、それぞれの特性から、国内においても対応の仕方に様々な違いがあります。そのため、国内の制度をしっかりと理解したうえで海外赴任者の対応を行っていかないと、思わぬところで従業員の不利益が発生してしまいますので、くれぐれもご注意ください。

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