2018/11/07
『中華人民共和国労働法』のなかで、三つの関連規定を挙げます。
使用者は、法に基づいて就業規則制度を確立及び整備し、労働者が労働権利を享受し、労働義務を履行することを保障しなければならない | |
労働者が労働規律あるいは使用者の規則制度に著しく違反した場合、使用者はいつでも労働者との労働契約を解除することができ、かつ経済補償金を支払う必要はない | |
使用者が制定した就業規則制度が法律法規の規定に違反している場合は、労働行政部門が警告を与え、是正を命じる。労働者に損害をもたらした場合は、賠償責任を負わなければならない |
これらからわかるように、使用者に内部規定がなかったり、あるいは規定内容が明確でなかった場合、労働争議が生じたときには、根拠がないか、あるいは根拠が不明確なために、企業が守勢・劣勢に陥ってしまうことが多々あります。
規範的な「企業内ルール」と合法的な「就業規則」を制定することは、国家・法律から与えられた企業の権利であり、義務でもあります。そして同時に、企業の管理にとっても必ず必要なものといえます
2001年3月に施行された『最高人民法院の労働争議案件審理に適用する法律の若干の問題に関する解釈』第十九条では、以下のように規定されています。
※中華人民共和国労働法 第四条
「雇用側の組織は法に従い規則制度を確立し完備させ、労働者の労働権利の享有と労働の義務の履行を保障すべきである。」
この第十九条の規定は、企業内ルールの有効性について、民主的手続きにより制定されたものであること、内容が合法であること、労働者に公示していることの、三つの基準を確定しており、この三つの要件のどれかが欠けるとなると、規則制度自体が無効になってしまうので注意が必要です。
中国の労働争議のなかでは、労働者が使用者の規則制度を著しく違反したことによって引き起こされる割合が非常に大きいのが特徴です。
浙江省法院(裁判所)の2016年データ分析結果によると、「規則制度の重大違反」によって引き起こされる「賠償金争議」案件数の割合が47%に達しており、従業員サイドの違反にも関わらず、最終的に使用者の敗訴で終わることも多く、その敗訴率は40%に達しています。
敗訴後、使用者が労働者に支払わなければならない賠償金は平均で61,700元で、使用者は労働者の「規則制度の重大違反」をもって労働契約を解除するリスクが非常に大きいといえます。そして企業は、これらの法的リスクの予防を強化すべき立場にあります。
(1)就業規則の制定主体に関する法的リスク
就業規則は誰が制定するのかといえば、使用者である企業が制定するものであり、その制定された就業規則に記載されている制度は、企業の名のもとに公布され、実施されるべきものとなります。
使用者の内部管理部門が就業規則の制定活動に関与することはもちろん可能なのですが、就業規則の制定主体としての資格は、実はないということに留意しなければなりません。すなわち、実務上においては、企業の内部管理部門が就業規則制度を制定し、就業規則制度を公布するという状況が往々にしてありえるかと思いますが、制定主体の不適格によって就業規則制度が法的効力を有さず、従業員に対する拘束力を持たない可能性があるため、交付時の主体がどこにあるのかは、意外にも重要となります。
防措置として、企業の内部管理部門は、業務上の必要性から、就業規則を制定するに際して、その規則制度の効力を保障するために、企業名で公布し実施しておくという形が適しています。
(2)制定手続き上の法的リスク
以下に、二つの法律法規を列挙します。
『中華人民共和国会社法』第十八条第三項(2006年1月1日改正)
『中華人民共和国労働契約法』第四条(2008年1月1日実施)
これらの法律規定に適法に対応するための予防措置として、企業は就業規則の具体的な制定手続きにおいて、以下の三点に留意しなければなりません。
(3)公示に関する法的リスク
企業内ルール及び従業員就業規則は、労働者に公示してこそ労働者に対して拘束力を持つものといえます。
労働者はよく規則制度の内容を知らないことを理由に「規則制度が公示されていない」と主張しますが、実は使用者もまた、公示した証拠を提供できないがために、不利な結果を招いてしまうことがあります。
予防措置として、必ず関連公示を行うようにしてください。なお、公示は通常、以下のいずれかの方法を採用することになります。
現段階で比較的有効な方法は、企業内ルールを就業規則に記入し、従業員に受取サインをしてもらうこと、あるいは従業員に対する規則制度の研修を行い、受け取りと閲読のサインをしてもらうことなどが挙げられます。
(4)内容が適法でないことの法的リスク
以下に、二つの法律法規を列挙します。
『中華人民共和国労働法』第八十九条
『中華人民共和国労働契約法』第八十条
これらの法律に対抗するための予防措置として、企業が規則制度を制定するときは、制定主体が適格で、内容も適法であり、かつ、手続きが完備され、公序良俗に違反しないようにしなければなりません。
2006年7月10日公布・施行の『労働争議案件審理に適用する法律の若干の問題に関する解釈(二)』第十六条では、「使用者が制定した内部規則制度が集団契約あるいは労働契約の約定内容と一致しないときに労働者が契約の約定の優先適用を求めたときは、人民法院はそれを支持する」と規定しています。
したがって、企業内ルールは、労働契約及び集団契約に抵触しないように注意しなければなりません。また、企業は常に現行の法律及び法改正並びに新しい法律の制定に注目し、適法ではない内容を修正するように心掛けなければなりません。
[ご案内]
ガルベラ・パートナーズでは、中国のほか、香港、タイ、ベトナム、アメリカ、台湾、韓国、シンガポールなど各国での給与、就業規則、ビザなどの労務案件のサポートをいたしております。
現地の就業規則や雇用契約書の作成、給与計算や個人所得税の確定申告についてお困りの企業様は、ぜひお声がけください。
中国その他の国での個人所得税申告の代行手数料は、こちらをご覧ください。
◆ガルベラのメールマガジンに登録しませんか◆
ガルベラ・パートナーズグループでは毎月1回、税務・労務・経営に関する法改正や役立つワンポイントアドバイスを掲載したメールマガジンを配信しております。 加えて、メルマガ会員のみガルベラ・パートナーズグループセミナーに参加可能!
10秒で登録が完了するメールマガジン 登録フォームはこちら!