2020/09/18
A、確かにガイドラインは改定されましたが、労働法令自体に改正はなく規制緩和されたわけではありません。ガイドラインでは、労基法第38条第1項の労働時間通算規定をはじめ、法定労働時間(1日8時間、週40時間)、割増賃金の規定を再確認するような内容になっており、この内容をタイトルのとおりに「副業推進」と解釈するかどうかは企業のスタンス次第かと思います。
下記の記事にも記載のとおり、副業解禁を検討する上で、現実問題として企業側の管理上の問題になるのは、労基法第38条第1項の労働時間通算規定と思われます。
関連ブログ
2020年9月のガイドライン改定でも、この「労働時間通算規定」は維持されており、より厳密に企業側の義務が確認されている状況です。
厚生労働省 「副業・兼業」
このガイドラインを前提に企業が法令遵守をするためには、副業先での人事情報(労働契約内容や勤怠情報)を把握する必要がありますが、個人情報保護や機密情報保護の観点から、こうした情報を企業間でやり取りすることは困難です。
その点についてガイドラインでは、『他の使用者の事業場における実労働時間は、(中略)労働者からの申告等により把握する。他の使用者の事業場における実労働時間は、労基法を遵守するために把握する必要があるが、把握の方法としては、必ずしも日々把握する必要はなく、労基法を遵守するために必要な頻度で把握すれば足りる。』と記載されていますが、いささか無責任な内容という印象を受けます。
企業側の立場に立てば、労働者の申告が虚偽・誤認であった場合に会社側は免責されるのかという点が気になりますがその点については明言されていません。
また、労働時間について「必ずしも日々把握する必要はない」としつつも、「労基法を遵守するために必要な頻度で」という表現が使われていることから、把握する方法は企業に任せるが法令遵守の責任は企業側が追うということが前提になっていると読むことができます。
以下、ガイドラインの中から、企業側の管理に関連すると思われるポイントをまとめます。
関連ブログ
なお、今回「管理モデル」なる仕組みが提唱されていますが、これは、「36協定一般条項の月45時間」は両社通算されないが、「36協定特別条項の絶対上限(単月100時間、平均80時間)」は両社通算で適用されるという規制の特性から考案されたしくみと思われますが、A社とB社の合計で月100時間(平均80時間)の範囲内で残業時間を取り決める限り違法状態は発生しない(はず)という立て付けのことを言っているのだと思われます。
建前としてはそうなのですが、前述のとおり、副業先の労働契約内容や勤怠データの把握に虚偽・過誤があった場合の企業リスクはどうなるのでしょうか?
また、注意点として、「違法状態は発生しない」のはそうなのですが、割増賃金はしっかり発生しますし、そもそも月100時間(平均80時間)の範囲でコントロールするという発想自体が特別条項の常時発動を前提としているものであり、このような内容がガイドラインで推奨されること自体については、意見の分かれるところと思われます。
以上を考えると、現実的に可能な形態としては、以下の2形態ということになります。
今回のガイドライン改定について、一部報道では、労働者が正しく申告できない可能性があり過重労働への懸念があるとして労働者保護の観点からの問題提起が行われていましたが、企業管理を行う立場からすれば、労働者保護以前に、そもそもこのガイドラインをタイトルのとおりに「副業推進」と解釈できるのかという点については、各企業の意見が分かれるところではないでしょうか。
弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。
◆ガルベラのメールマガジンに登録しませんか◆
ガルベラ・パートナーズグループでは毎月1回、税務・労務・経営に関する法改正や役立つワンポイントアドバイスを掲載したメールマガジンを配信しております。 加えて、メルマガ会員のみガルベラ・パートナーズグループセミナーに参加可能!
10秒で登録が完了するメールマガジン 登録フォームはこちら!