2021/05/12
A、休業補償給付が受けられる可能性があります。
通院等の理由により所定労働時間の一部について労働することができない場合は、実労働時間に対して支払われた賃金が平均賃金の6割未満であれば、「労働することができず賃金を受けない日」として支給対象となり得ますので、管轄労働基準監督署で詳細を確認してください。
なお、被災した時点で、兼業により事業主が同一でない複数の事業場で就業する労働者(以下、「複数事業労働者」といいます。)についても同様に扱われます。
産業構造の変化や情報技術の発展等により働き方の多様化が進んでおり、その一つの手段として、多くの企業では副業・兼業を積極的に活用し始めています。行政も2020年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(厚生労働省:PDF)を改正し、多様な働き方を推奨しています。
また、労働災害に関しては、責任の所在があいまいとなったり、労災により就労不能となった場合の補償が不十分である等の問題も提起されていましたが、前述のガイドラインの改正と合わせて、法改正や実態に伴った解釈がなされておりますので、事例に沿って複数事業労働者に関する休業補償給付について解説いたします。
休業補償給付は、継続、断続を問わず、実際に休業した日の4日目から給付基礎日額の6割(別途特別支給金の2割が加算、以下同じ。)が支給されます。所定労働時間の一部について労働し賃金を受けた場合は、給付基礎日額から当該賃金額を控除した額の6割が支給されます
(労働基準行政全般に関するQ&A(厚生労働省))
支給要件として、①業務上の傷病による療養のため、②労働することができないため、③賃金を受けないことを満たす必要があります。
通院等で所定労働時間の一部について労働することができない場合で、実労働時間に対して支払われた賃金が平均賃金の6割未満であれば、上記「②労働することができないため、③賃金を受けない」日として取り扱われ、当該一部の労働日は支給対象となり得ます。
複数事業労働者に関しても、前述1.と同様の支給要件となりますが、給付基礎日額については、各就業先の事業場で支払われている賃金額を「合算した額」を基礎として算出するよう、2020年9月より法改正がなされています。
お問い合わせの事例で言いますと、会社及び兼業先の双方から支払われた賃金をもとに給付額が決定されることとなります。なお、法改正前は、労災が発生した事業場(事例の場合は「兼業先」)で支払われた賃金のみを基礎として給付額が決定されていました。
まず、事例のように、複数の事業場のうち、一部の事業場でも賃金を受けない日に該当する場合は「賃金を受けない」日に該当することとされており、支給要件を充足します。
また、一部の事業場(事例の場合は「会社」)において所定労働時間のうちその全部を労働し、他の事業場(事例の場合は「兼業先」)において通院等で労働することができず、所定労働時間のうちその全部について休業している場合の給付額については、前述1.の「所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日」に準じて取り扱うことと解されています。
以上より事例の場合では、会社及び兼業先から支払われている賃金額を合算した額を基礎として給付基礎日額を算出し、そこから会社で労働した1日分の賃金を控除して得た額の6割(限度額を上限とする)が休業補償給付額となります。
なお、一部の事業場(事例の場合は「会社」)で実際に労働せず、有給休暇を使用した場合においても同様の取扱いとなります。
以上が、複数事業労働者に関する労災給付の取扱いとなります。制度が施行されてから日も浅く、取扱いのパターンが多岐にわたっていますので、事案発生時は個別具体的な状況に応じ、専門家や行政官庁にご相談ください。
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