2021/09/03
A、結論から申し上げますと、個人間売買の価額決定は、財産評価基本通達の評価額(相続税法上の時価)で差し支えありません。取引後に、売手が同族株主の場合は原則的評価額、それ以外の株主等の場合は特例的評価額となります。同様に買手のほうも同族株主の場合は原則的評価額、それ以外の株主等の場合は特例的評価額となります。
財産評価基本通達の規定は、当然の事ながら相続贈与時の財産評価に適用するものです。
そして、所得税法基本通達59-6や法人税法基本通達9-1-14は、「個人-法人」「法人-法人」「法人-個人」間での売買で考慮すべき規定となります。
では、なぜ個人間売買(「個人-個人」)の時は、財産評価基本通達の評価額(相続税法上の時価)でいいのかについて説明します。
個人間売買で非上場株式を時価未満で売買した場合、所得税法上の様な時価を基準とした課税関係はありません。言い換えますと、売手は実際の売却金額をもとに所得税の計算をしますので、「個人-法人」間で見られる様な「みなし譲渡」の様な考えは発生しません。
所得税法基本通達59-6は基本的に所得税を課税するための規定で、個人間売買の場合は個人が必ずしも営利を目的として取引をするわけではないという考えがあるからなのです。
ただし、買手は時価と実際の取引価額の差額について贈与税が課税されます。要するに、買手が著しく低い金額で買い取った場合、本当は実際の時価で買い取りしなければならないのに、著しく低い価額で買い取ったということで、その差額がみなし贈与となり贈与税が課税される訳です。
この時の時価の考えですが、実務上は財産評価基本通達の評価額(相続税法上の時価)で構いません。各裁決、判決でも同様の考え方となっています。
従いまして、個人間で非上場株式の売買をした場合に考慮すべき税務上の時価は買手側の財産評価基本通達の評価(相続税法上の時価)方法に基づいて取引すれば税務上の問題は生じないものと考えられます。
今回のご質問のケースですと、社長個人が弟から買い取る訳ですので、財産評価基本通達の原則的評価額(相続税法上の時価)でやりとりすれば問題ないと考えられます。
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