2022/08/24
A、「準備行為として事業所内で行うことが義務づけられている作業服への更衣時間」は労働時間として取り扱うとの考え方が一般的です。
先般、ある外食企業に対して、着替え時間の労働時間不算入に対する是正勧告(労働基準監督署)が行われたとして報道がありました。対象企業が大手企業であったこともあり大きな影響が出ることが予想されています。
「更衣室で制服に着替えて店舗に移動することで1日30分ほどかかるが、当該時間が労働時間に含まれていなかったとして、労働者の一部が外部ユニオンを通じて会社側に賃金の支払いを求めたが、拒否されたため労働基準監督署に申告した。労働基準監督署は、着替え時間は労働時間にあたるとして、未払賃金として支払うように是正勧告を出した。」
労働時間への該当性を判断したものとして、有名な判例に「三菱重工業長崎造船所事件」(最判平12・3・9 民集54-3-801)があります。人事労務の担当者であれば、着替え時間は労働時間に該当することを知らない人はいないといえるような有名な論点ではあるのですが、企業現場の感覚としては、過去の経緯もあり、労働時間には含めないとする慣行も根強いようです。このような事例が出たことで、そういった現場慣行は、近年の労務コンプライアンスの感覚としても、徐々に通用しない時代になってきたように思われます。
「労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。労働者が就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、またはこれを余儀なくされたときは、その行為を所定労働時間外に行うものとされている場合でも、その行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できる。」
その他にも、労働時間に該当する準備行為として次のような事例があります。
① 更衣所から作業場所までの移動時間
② 慣習上義務化されている作業前の準備時間、作業後の後始末、掃除、朝礼、ミーティングで、行わないと何らかの不利益が予想されるもの
③ 法令上一定の準備行為や後始末が義務づけられている作業服保護具等の装着
④ 作業を行う場合にその性質上必ず一定の準備行為や後始末を要するもの(始業時の点検、用具の整備、作業後の格納)
⑤ 休憩時間中の来客当番、電話番
⑥ 手待ち時間、待機時間
⑦ 労働者が労働から離れることを保障されていない仮眠時間
こういった時間についても、今後、労使紛争の要因になってくることが想定されます。疑義ある時間については、その性質を整理した上で、労働時間にすべきものとしないものに区別して管理を進めたいところです。
弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。
(IPO労務DD/労基署初動対応/労務コンプライアンス/就業規則整備/申請代行・給与計算・労務相談)
弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。
◆ガルベラのメールマガジンに登録しませんか◆
ガルベラ・パートナーズグループでは毎月1回、税務・労務・経営に関する法改正や役立つワンポイントアドバイスを掲載したメールマガジンを配信しております。 加えて、メルマガ会員のみガルベラ・パートナーズグループセミナーに参加可能!
10秒で登録が完了するメールマガジン 登録フォームはこちら!