2023/02/20
A、残業代未払いが発生するポイントは10以上ありますので、それぞれについて対策が必要となります。
労働基準法第32条にて法定労働時間が、第35条にて休日が定められています。そしてその法定労働時間を超えた労働や、休日の労働、または深夜労働をした際は労働基準法第37条にて一定の率の割増賃金を支給しなければいけない旨が定められております。その割増賃金を計算する際には様々なポイントがあり、そのポイントを抑えて計算を行わないと、割増賃金の計算を行っているにも関わらず、結果的に未払いに繋がる恐れがあります。今回はその割増賃金の計算の際に、未払いに繋がるポイントについて解説します。
残業代未払いに繋がるポイントとして、大きく挙げるだけでも以下の通りです。
上記のポイントをグループ分けしますと、
となります。ではそれぞれついて以下より簡単に解説します。
割増賃金につきましては、時間単価の計算方法および割増率について、それぞれ法令で定められております。
まず、分母となる時間数につきましては、月給制の場合は「1年を平均した1か月の所定労働時間」となります。これは1年間の労働時間数(労働日数×1日の所定労働時間)を12で割った数字となります。
次に割増賃金の分子となる手当については、基本給だけでなく、基本的には全ての手当を算入する必要があります。(一部除外できる賃金については労働基準法第37条第5項および労働基準法施行規則第21条に定められています。)
最後に割増率については労働基準法第37条により
※中小企業の場合は、2023年4月より適用されます。
これらの3つの計算を正しく行う必要があり、その計算が誤っていると、未払いに繋がる可能性があります。
例えば自社の管理監督者の範囲が管理監督者として認められない従業員まで広げられている場合。固定残業代や変形労働時間制の運用に不備がある場合などです。このように不適切な運用をしている場合は、一部の従業員の管理監督者性が否認されたり、固定残業代や変形労働時間制が否定される可能性があります。そうなると、例えば管理監督者性を否定された従業員に割増賃金の支払が必要となったり、固定残業代を含んで時間単価の計算が必要となったり、変形労働時間制を廃止して原則通りの計算をする必要があります。よって、これらの制度を導入する場合は、否定されない制度や運用を構築し、未払いとならないようにする必要があります。
例えば始業と終業時刻を30分単位で丸めて、その時間を一律で切捨て処理を行っている場合。休憩が取得できていないのに、休憩時間として一律労働時間から控除している場合。申告のない残業時間の切り捨てや残業時間そのものを認めない場合などが該当します。この論点は未払いが発生しているだけでなく、指導によっては会社が記録している従業員の労働時間の記録そのものの信憑性が問われることになります。そうなると勤怠記録の仕組自体の変更や改善を求められます。よってこのような労働時間の不算入を起こさないように、正しい労働時間の記録を行うことが必要です。
例えば休日出勤した日の振替休日が取得できずに、そのまま翌月以降に持ち越して(ストック)いる場合。法定休日に出勤しているにも関わらず、法定休日の割増賃金の計算をしていない場合などです。これらを防ぐためには、休日について法定休日かそうでないかをしっかり確認をしたうえで割増賃金を計算する必要があります。また、振替休日についても、持ち越しが起こらないように、当月中に取得するようにするか、当月で振替休日を取得できない場合は、休日出勤として割増賃金を計算するかという運用が必要です。
この点は給与計算を行う際の実務上のミスによって未払いが発生しているパターンです。例えば残業代の基礎となる手当をしっかり把握しているにも関わらず、給与計算システムでは計算から除外されている手当として設定されている場合。勤怠システムの集計で残業時間が正しく集計されていない設定になっている場合などです。これらの計算ミスを防ぐためには、計算結果を全てシステム任せにするのではなく、定期的に給与計算業務の担当者自身が手動で計算を行い、システムでの計算結果と合致するかチェックを行うことで防ぐことが可能です。
残業代については、自社ではきちんと計算し払っていると思っている場合でも、その計算方法や会社の運用に不備があり、結果的に未払いに繋がっていることはよくあります。今一度自社の残業代の計算方法、制度の運用などが正しくできているかをチェックし、思わぬ未払いに繋がらないようにしてまいりましょう。
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