2026/07/09
A、2025年6月1日より施行された労働安全衛生規則の一部を改正する省令により、事業者は業種・職種にかかわらず熱中症による従業員の健康障害を防止するため、対策を講じる必要があります。
昨年の2025年6月1日、「労働安全衛生規則」の一部改正により、事業者は熱中症による従業員の健康障害を防止するため、必要な対策を講じなければならなくなりました。
改正から1年経過しましたが、昨今の労働者の熱中症発生状況も踏まえ、事業者が今取り組むべき対策について改めて解説します。
今年も7月下旬頃から9月にかけて猛暑の予報が出ておりますが、先日、厚生労働省から「職場における熱中症による死傷者数の状況(2016~2025年)」が公表されました。
直近である2025年の職場内での熱中症による死傷者数(死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数)を見ると、全体で過去最多の1,803 人を記録しました。前年の1,257人と比較して約 43%増加しており、特に過去5年間の推移を見ると増加の一途を辿っています。
一方で、2025年の職場における熱中症による死亡者数は19人となっており2024年の31名に比べ約39%も減少しています。これは昨年事業者が熱中症への対策措置を講じることが義務付けられたため、事業場における熱中症防止対策がより一層進んだことによるものと考えられます。

(出典:厚生労働省「職場における熱中症予防情報 職場における熱中症による死傷者数の状況(2016~2025年)」)
また、過去5年間(2021~2025年)の死傷者数(合計数)を業種別に見ると、製造業が1,063人、 建設業が1,038人の順で上位を占める一方で、商業が623人、その他業種でも958人に上っています。このデータからも熱中症は特定の業種だけでなく、あらゆる職場で発生していることがわかります。
| 建設業 | 製造業 | 運送業 | 警備業 | 商業 | 清掃・と畜業 | 農業 | 林業 | その他 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 死傷者数(2021~2025年合計) | 1,038 (52) |
1,063 (15) |
742 (7) |
614 (18) |
623 (12) |
347 (5) |
128 (11) |
41 (0) |
958 (11) |
5,554 (131) |

職場における熱中症死傷者数の深刻な増加を受け、2025年6月1日に施行された改正労働安全衛⽣規則(第612条の2)では、事業者は熱中症のおそれがある労働者に対して、以下の3つの施策を講じなければならないと義務付けられています。
熱中症の自覚症状がある労働者、または熱中症のおそれがある労働者を発見した者がすみやかに報告できる緊急連絡網の整備や、緊急搬送先の連絡先・所在地をあらかじめ定めておくことが必要です。衛生委員会等を活用し対策を労使で事前に話し合って決めておくのがスムーズです。
熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、必要な措置の実施手順(マニュアル)を定めておく必要があります。「作業から一時離脱させる」、「身体を冷却するなどの適切な応急処置を行う」、「必要に応じて医療機関へ搬送する」といった具体的な措置や流れを手順書として作成しておきましょう。
(1)で整備した緊急連絡体制や(2)で作成した対応手順書を、会社(現場)の作業者全員に事前に周知することが義務づけられています。
本改正のポイントは、「業種」ではなく「環境と作業時間」で対象が決まる点です。以下の条件に当てはまる場合、オフィスワークや営業職であってもすべての事業者に対策が求められます。
「移動中の場所も含む」とされているため、屋外の現場や空調設備のない工場等はもちろん、営業職の外回り移動や、空調設備が不十分な環境での作業、エアコンが効く前の車内移動なども累積・継続すれば対象となります。また、事務職であっても、空調設備のない倉庫での整理作業やエアコンの効きが悪い環境下での長時間作業も例外ではありません。
より具体的な施策や予防法については、厚生労働省が公開している「職場における熱中症防止のためのガイドライン」や、ガイドラインに沿って分かりやすくまとめられているパンフレット(「職場における熱中症防止のためのガイドラインを参考に熱中症を効果的に防止しましょう︕」や「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」など)を活用するのがおすすめです。
リーフレット「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」には、「熱中症を防ぐ3つの注意点」として以下の項目を挙げています。
| 1) 前日のチェック |
|---|
| 仕事前日の飲酒は控えめに |
| ぐっすり眠る |
| 熱中症警戒アラートの確認 |
| 2) 仕事前のチェック |
| よく眠れたか |
| 食事をしたか |
| 体調は良いか |
| 二日酔いしてないか |
| 熱中症警戒アラートの確認 |
| 3) 仕事中のチェック |
| 単独作業を避け、声をかけ合う |
| 監督者は現場パトロール |
| 水分·塩分の補給 |
| こまめに休憩 |
特に「仕事前日の飲酒は控えめに」や、「ぐっすり眠る」、「食事をしたか」などの従業員個人のプライベートな体調管理には、事業者はなかなか触れにくいと思います。しかし、これら個人の体調も熱中症を引き起こす要因の一つであることを、リーフレットや「「応急⼿当」カード(携帯⽤)」などを従業員の皆さんへ配布するなど活用し、事前に周知しておくのが良いでしょう。
すでに熱中症対策を行っている事業者様は、現行の体制が義務化の要件を満たしているか改めて見直しを、まだ十分に対策できていない事業者様は、まずは緊急連絡体制の整備や手順書の作成などから着手していただければと思います。
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