2021/08/13
A、結論から申し上げますと、決算で未払計上はできません。法人税法基本通達2-2-14は実際に支払った分だけが損金算入できる規定となります。
まず法人税法基本通達2-2-14を確認します。
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。
要は、倒産防止共済掛金に限らず生命保険料についても、原則は期間対応する保険料だけしか当該事業年度の損金に計上できませんが、期間対応していなくても(前払状態になっていても)その支出の効果(役務の提供を受ける期間)が1年以内なら、実際支払った分だけが当該事業年度の損金に計上できます。そして、これは継続適用が必要です。ただし、売上等と期間対応させるべき原価等の費用の支払については認めませんよ、という内容です。
ここで気になる点が2点あります。一つ目は「継続して」という点です。そして二つ目は「売上等と期間対応させるべき原価等の費用の支払については認めません」という点です。
一つ目の「継続して」という点ですが、例えば今期だけは年払いで、翌期から月払いに変更するといっても、原則としては問題がない様に考えます。ただ、これを繰り返し交互に使うのは通達の主旨に反するため問題があるかと考えます。
二つ目の「売上等と期間対応させるべき原価等の費用の支払については認めません」についてですが、これはズバリ「売上原価=製造原価の地代家賃等」を指しています。この地代家賃の年払について、短期前払費用の通達適用が可能かどうかは専門家により意見の分かれるところですが、私見としては、製造原価科目は売上原価でもあるため、売上と期間対応させるのが原則と考えるのが筋かと思いますので、たとえ決算期末に年払いをしていても年払いベースでの損金計上はできず、前払費用処理をして期間対応させるべきと考えます。
これら以外にも短期前払費用の通達適用については「等質・等量のサービスのみの適用に限る」「2年分など1年を超える支払いをした場合は適用不可」「契約書がきちんと年払い契約になっている」等注意点が沢山ありますので、実際の適用については顧問税理士先生にご確認ください。
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