GERBERA PARTNERSブログ

国際税務|租税条約ゼミナール(4)海外出張者が給与をもらうと税金はどうなるの?

2017/07/18

Q. 租税条約がもたらす恩恵のなかで、納税者にとって有利に働く規定の一つに「短期滞在者免税」というものがあると聞きました。これは具体的にどういうものでしょうか?

税務イメージ

 

A. 非居住者(居住者)が国内(国外)での勤務が年183日以内(※)の場合で一定の要件を満たす場合は、国内(国外)での課税を免除するという日本が結ぶすべての租税条約に盛り込まれている規定のことです。
※一部日数が異なる租税条約もあります。

      

解説(公開日:  最終更新日:

一般に給与に対する課税は給与を支払った者の所在する国によって課税が行われるのではなく、その給与に係る役務の提供を行った国勤務を行った国)において課税が行われます。

 

よって、非居住者がごく短期間日本に滞在し勤務したことによって得た給与にに対しても日本の課税庁がその非居住者に課税を行うのが原則ということになります。

 

しかし、その非居住者は居住地国において、日本で課税されている部分に対しても課税されていることになっており、二重課税が生ずることになります。(一部の国では課税されていない場合もあります。)

 

居住地国の申告にて外国税額控除など二重課税を排除することにはなりますが、これには非常に煩雑さが伴います。

 

そこで、二重課税排除を目的に租税条約にて整備されているのが「短期滞在者免税」です。これには3つの要件があり、これらの要件のすべてを満たす必要があります。

 

183日基準

非居住者(居住者)の日本(締結国)の滞在期間が183日を超えないこと。
※例外としてタイとの間で結ばれている租税条約では180日とされています。

 

支払地基準

非居住者(居住者)に対して支払われる給与が、居住者(その国の居住者)またはこれに代わる者より支払われていないこと。

 

恒久的施設負担基準

非居住者に対して支払われる給与について雇用者が保有する日本国内の恒久的施設によって負担されていないこと、あるいは居住者に対して支払われる給与について雇用者が保有する締結国の恒久的施設によって負担されていないこと。

 

ポイント

これらの要件を満たすことにより、短期滞在者は条約締結国での課税を免除されることになります。

 

短期滞在者免税を確認する上で留意すべきこと

 

(1) 租税条約によって”183日”の数え方が異なる

租税条約のひな形である”OECDモデル条約”と”国連モデル条約”では、短期滞在者免税の第1要件である183日の計算基準が異なります
OECDモデル条約の場合は「当該課税年度に開始もしくは終了する12か月において合計183日以内」と規定されているのに対し、国連条約モデルでは「当該課税年度において合計183日以内」と規定されています。

 

つまり、OECDモデル条約は非居住者が国内で出発(あるいは居住者が締結国へ出発)した日から1年間のうちに何日間相手国に滞在したかをみていくことに対し、国連モデル条約では平成28年、平成29年など一暦年中に相手国に何日間滞在したかをみていきます。

 よって租税条約締結国との間でどちらのルールを採用しているかで短期滞在者免税の適用の可否に相違が生じるケースが出てきますので留意が必要です。

 

(2)183日を超えてしまった場合の取り扱い

183日を超えるか否かの判定は、相手国へ出国時に相手国に何日間滞在を予定するかによって判定します。当初相手国に183日以内の滞在予定だったものの、予定の変更により183日を超えて滞在することになった場合は、183日を超えた分ではなく出国当初に遡って相手国にて課税が行われることに留意をしなければなりません。

 

(3)届出書の提出

国内において短期滞在者免税の適用を受けようとする者は“租税条約における短期滞在者免税適用のための届出書”を入国後最初に給与等の支払を受ける日の前日までに給与等の支払者を経由してその支払者の納税地の所轄税務署長に提出をしなければなりません。

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