2018/02/26
財産を多数保有する資産家への課税制度は、日々強化されています。平成24年度の税制改正により「国外財産調書制度」が創設され、平成27年度の税制改正では、「財産及び債務の明細書」の「財産債務調書」への変更により制度が厳格化され、また、国外転出する居住者の所有する一定の資産の含み益に対して課税する「国外転出時課税制度」が新たに創設されました。
今回は、一定額以上の財産を保有している方が、確定申告の時に提出する必要がある「財産債務調書」と「国外財産調書」についてご説明します。
もともとは「財産及び債務の明細書」という名称で存在した財産債務調書は、高所得者の財産や債務状況を把握することを目的に、所得(収入から必要経費を控除した金額)の合計額が2,000万円超の方を対象としていましたが、未提出であっても特に罰則等なく、提出義務の有無さえも知らない方がほとんどでした。
そのため、この制度は平成27年税制改正により「財産債務調書」に変更され、加算税等の措置が新たに講じられることとなりました。提出者に対しては、その調書に記載された財産について調査時に所得税などの申告漏れがあっても、過少申告加算税が5%軽減されます。一方で、未提出の場合や、記載されていない財産等があり、その財産等に関する所得税の申告漏れがある場合には、過少申告加算税が5%加重されます。
ただし、提出義務者には制限があり、所得基準は2,000万円超で変わりませんが、その年の年末時点で、3億円以上の財産があるか、または上場株式等を1億円以上保有している方に対象者を絞っています。そのため、不動産の売却があり、たまたまその年だけ所得金額が2,000万円を超えてしまった方などは該当しなくなりました。
国内での課税逃れを防ぐべく、税務署等が昨今最も力を入れているのが海外にある財産の把握です。その年の年末時点で5,000万円を超える国外財産がある方は、国外財産の種類、数量、価額を記載した「国外財産調書」を提出しなければなりません。
これらの資産の把握は、資産の譲渡や収益に関する所得税においてはもちろんですが、相続税においても重要な問題となっています。日本の相続税を回避するために、財産を海外に移転させ、被相続人や相続人となる方が海外に出国することが年々増えてきているからです。
この調書の提出義務者の要件は、居住者(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する方)で、国外に5,000万円超の財産を有する者のみですので、国内に住んでいる方の大半は居住者である以上、国外財産が高額であれば提出義務があるといえます。
そしてこの規定には罰則規定が設けられていますので特に注意が必要です。偽りの記載をした場合または、正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
調書提出の有無に関わりがありそうな方は是非一度、お気軽に問い合わせください。
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