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相続税|日本の相続税は世界最高税率!税負担を少しでも下げるにはどんな方法があるの?

2024/10/04

Q、日本の相続税は負担が大きいと聞いたことがあります。少しでも税負担を減らすために出来ることとしては、どのようなものがあるのでしょうか?

A、日本の相続税は、海外と比較しても突出した最高税率55%に加えて、基礎控除額も3,000万円+αと低く、死亡者に対して約10%(10人に1人)の割合で課税される為、対象となることも多く負担が大きい税金です。対策としては、年間110万円の贈与税非課税枠を活用した生前贈与、相続時精算課税制度、税制上の各種特例を上手く使えば、税負担を減らすことが可能です。

 

解説(公開日:2024/10/04)

   

日本の相続税負担は世界トップクラス

日本の相続税は、最大55%という非常に高い税率で、これは世界的に見てもトップクラスの負担となっています。特に、都市部の不動産価格が高騰している近年において、相続財産の評価額が思いのほか高くなり、予想以上の相続税が発生するケースが増えています。

 

G7 各国の相続税比較

日本 アメリカ ドイツ イギリス フランス イタリア カナダ
最高税率 55% 40% 30% 40% 45% 8%
基礎控除額
(日本円換算)
3,000万円+600万円
×法定相続人
1,361万ドル
(約20億円)
75.6万ユーロ
(約1億1年万円)
32.5万ユーロ
(約6千円)
10万ユーロ
(約1,500万円)
100万ユーロ
(約1億5千万円)
特徴 最高税率が高く、
基礎控除が少ない
基礎控除が
非常に高額
比較的税率が低く、
基礎控除も高い
原則税率固定
配偶者は免除
配偶者は免除 税率が低い 相続税
なし

※アメリカの基礎控除は、2024年度のインフレ調整(Tax Inflation Adjustments)後の数字です。

※ドイツの基礎控除は、配偶者に対する相続を想定した数字です。

 

相続税の課税対象は、原則被相続人(故人)の財産すべてです。不動産や現金、株式といった資産はもちろん、借金などの債務も含めて計算されます。相続税の計算は、まず相続財産の総額を算出し、そこから「基礎控除額」を引いた額に対して課税されます。この基礎控除額は、法定相続人の数によって異なり、基本的には「3,000万円 + 600万円×法定相続人の数」で計算されます。つまり、例えば法定相続人が2人の場合、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円×2 = 4,200万円」となり、それを超えた部分に課税されます。

 

さらに、日本の相続税は累進課税制度が採用されており、財産の総額が増えるに従って税率も高くなります。具体的には、課税対象額が1,000万円以下であれば10%の税率が適用されますが、これが6億円を超えると、最大で55%の税率が適用されます。この累進課税の仕組みにより、富裕層だけでなく、中間層の一般的な家庭でも、遺産に含まれる不動産の評価額次第では、非常に高い税額が発生することがあります。

 

相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(参考:相続税の税率(国税庁HPより))

 

また、相続税の計算には不動産の評価が重要な要素となります。例えば、自宅として利用している土地や建物が高額な評価を受けると、現金が十分にない家庭にとっては、その評価額に基づく相続税を支払うのが非常に困難な場合があります。このため、多くの相続人が不動産を売却して相続税を支払う羽目になることも珍しくありません。特に都市部では、土地の価格が高騰しているため、不動産を含む相続は大きな経済的負担となることが多いです。

 

こうした背景から、相続税対策の必要性がますます高まっています。実際に相続が発生する前に、どのような対策を取っておくべきかを考えることは、家族にとっても重要な課題となります。日本の相続税制度は複雑であり、多くの人がその仕組みを十分に理解していないため、相続が発生してから慌てて対策を講じるのでは遅すぎることが多いです。早期に適切な準備を行うことで、相続税の負担を大幅に軽減することが可能です。

 

次章から、具体的な相続税の負担を少しでも下げるための方法について詳しく見ていきましょう。

 

① まずは「生前贈与」を活用してみよう

相続税の負担を軽減するために効果的な手段の一つが「生前贈与」です。生前贈与とは、相続が発生する前に、生きている間に子供や孫、その他の親族に財産を贈与することです。相続時に一度に多額の財産を受け取ると、その分相続税も大きくなるため、財産を事前に少しずつ移転することで、結果として相続税を抑える効果があります。

 

1.年間110万円までの非課税枠を活用する

日本の税法では、贈与税には年間110万円の非課税枠が設けられています。このため、例えば子供や孫に毎年110万円までの贈与を行えば、贈与税を一切支払うことなく財産を移転することが可能です。110万円を超える金額には贈与税が課されますが、110万円以内であれば長期間にわたって少しずつ財産を分け与えることで、無駄な税負担を回避することができます。

 

2.特定の贈与制度を活用する

生前贈与には、通常の贈与税の非課税枠以外にも、いくつかの特例制度があります。これらを効果的に活用すれば、さらに大きな税制上のメリットを得ることが可能です。代表的な特例制度には、以下のようなものがあります。

 

 ◆ 教育資金の一括贈与の非課税制度

祖父母が子や孫(30歳未満の受贈者)に対して、教育資金を一括で贈与する場合、最大1,500万円まで非課税となる制度です。教育費に充てる目的であれば、その資金が税金の対象外となるため、子や孫の将来のためのサポートができるうえ、相続税の課税対象財産も減らすことができます。

 

 ◆ 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度

こちらも祖父母が子や孫(50歳未満の受贈者)に対して、結婚や子育てに関連する費用を贈与する場合、最大1,000万円までが非課税となる制度です。この制度を利用すれば、結婚費用や子供の養育費をサポートしつつ、贈与税や相続税の負担を軽減することが可能です。

 

これらの特例制度を組み合わせることで、非課税で贈与できる金額が大きくなり、さらに効率的に財産を移転できます。特に、教育費や結婚・子育て資金は将来の家族のために必要な費用であるため、実用的かつ税制面でのメリットを享受できる有効な手段となります。

 

3. 贈与のタイミングに注意

生前贈与を行う際には、タイミングも非常に重要です。特に注意しなければならないのが、「生前贈与加算」のルールです。これは、贈与を行った後3年以内(令和5年度の税制改正により7年以内に延長)に贈与者が死亡した場合、その贈与財産が相続財産に加算され、相続税の課税対象となってしまうというものです。例えば、死亡の直前に多額の財産を贈与したとしても、それは相続財産として扱われ、相続税が課されることになります。

 

そのため、生前贈与を活用する際には、長期的な計画が必要です。できるだけ早い段階から贈与を開始し、少しずつ財産を移転することで、生前贈与加算のリスクを避けつつ、相続税の負担を軽減することが可能です。また、贈与する財産の種類や金額についても、相続人や家族としっかり相談し、将来を見据えた計画を立てることが重要です。

 

② 値上がりが予想される資産があるときは「相続時精算課税制度」も視野に

相続税の負担を減らすためのもう一つの手段として、「相続時精算課税制度」があります。

 

1. 相続時精算課税制度の仕組み

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫に対して生前贈与を行う際に、最大2,500万円までを非課税で贈与できる制度です。この2,500万円の枠内であれば、複数回に分けて贈与しても贈与税はかかりません。ただし、通常の贈与税が非課税となる年間110万円の非課税枠とは異なり、相続時に再度贈与財産が相続財産に加算され、相続税が課税されるという点が特徴です。

 

つまり、この制度では、贈与時点で贈与税が軽減されるものの、最終的には相続税の精算時に相続財産として一括で課税されることになります。このため、「相続時精算課税」という名前がつけられています。

 

なお、2024年1月以降は、2,500万円の非課税枠とは別枠で110万円の基礎控除が追加されました。これにより、年110万円以下の贈与は贈与税の申告が不要になり、また2,500万円の枠を使わず、相続時に相続財産に加算する必要もない為、使い勝手が良くなりました。

 

2. 相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度にはいくつかの大きなメリットがあります。

 

◆ まとまった財産を早めに移転できる

この制度を利用することで、一度に大きな財産を移転することができます。例えば、親が不動産や株式などの資産を子に贈与したい場合、通常の贈与税では年間110万円の非課税枠を超える部分に対して多額の贈与税が課されますが、この制度を利用すれば、2,500万円までの財産を一括で移転することが可能です。

 

◆ 資産運用の自由度を高める

財産を早めに子や孫に移転することで、次世代がその財産を運用する機会が増えます。例えば、株式を早期に贈与し、その運用益を子が自分で管理できるようにすることで、贈与者が生存している間に子が財産運用のノウハウを習得することができます。また、不動産を早めに贈与することで、賃貸収入などの利益も受贈者が得ることが可能となります。

 

◆ 財産の将来価値が高くなる場合はかなり有利

相続時精算課税制度は、値上がりする可能性のある資産に適しているといえます。例えば、現在の株式や不動産の価値が今後大きく上がると予想される場合、相続時精算課税制度を利用して早めにこれらの資産を子や孫に贈与すれば、価値が上がる前の評価額で贈与することができるため、相続税額を抑えることができます。つまり、今後の資産価値の変動を見越して計画的に贈与を行うことで、相続税対策に繋げることができます。

 

3. 相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度は非常に有効な制度ですが、注意すべきデメリットもあります。

 

◆ 相続時に課税対象となる

この制度で贈与された財産は、最終的に相続財産に加算されるため、相続税の精算時に税金が発生することがあります。そのため、贈与時に節税効果があっても、最終的には相続税が発生することを前提に計画を立てる必要があります。相続時に他の財産が増えている場合や、他の相続人がいる場合には、最終的な相続税の負担が想定より大きくなる可能性もあります。

 

◆ 申告の手間がかかる

相続時精算課税制度を利用する際には、贈与を受けた年ごとに贈与税の申告を行う必要があります。たとえ贈与金額が2,500万円の非課税枠内であっても、毎年の贈与について税務署に申告を行わなければならないため、その都度手続きの手間がかかります。

 

◆ 小規模宅地等の特例が使えなくなる

相続税対策で有効な「小規模宅地等の特例」は、相続時精算課税制度を利用する場合には適用が出来なくなります。この特例は、被相続人が住んでいた自宅や事業に使っていた宅地について、一定の条件を満たすとその評価額を最大80%減額できる非常に有利な制度です。しかし、相続時精算課税制度で住宅などの不動産を生前に贈与してしまうと、その不動産は相続財産として扱われなくなるため、特例の対象外となります。

 

③ 相続税負担を軽減する各種特例を知ろう

相続税対策を行う際、贈与や生前の財産管理だけでなく、税制上の「特例制度」をうまく活用することが相続税の負担を大幅に軽減するポイントとなります。適切に活用することで、評価額を引き下げたり、非課税枠を拡大したりすることが可能です。以下では、代表的な特例制度とその活用方法について解説します。

 

1.小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」は、相続税対策において非常に強力な制度です。この特例を利用することで、被相続人が居住していた宅地や事業用地の評価額を、最大80%も減額することができます。これにより、土地にかかる相続税を大幅に軽減できるため、特に都市部などの土地の評価額が高い地域においては、相続税対策の要ともいえる特例です。

 

◆ 適用条件

この特例を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。例えば、被相続人が居住していた宅地については、相続人が引き続きその土地に住み続けることが要件となります。また、事業用地については、相続人が事業を継続する必要があります。適用対象の宅地の面積にも上限があり、居住用宅地であれば330㎡、事業用宅地であれば400㎡が減額の対象となります。

 

◆ 活用例

例えば、都心部に高額な土地を所有している場合、相続税評価額が非常に高くなるため、相続税が重くのしかかります。しかし、この特例を適用すれば、土地の評価額を大幅に減額でき、結果として相続税の負担が大きく軽減されるのです。土地の評価額が1億円であれば、80%の減額を適用することで、実質的な評価額は2,000万円となり、その分の税金が軽減されます。

 

◆ 注意点

ただし、この特例を利用するには、相続開始後に一定期間その土地を保有し続けることが求められるため、相続人が土地をすぐに売却する予定がある場合や、居住や事業を継続する意思がない場合には適用できません。また、贈与や相続時精算課税制度を利用して生前に土地を移転してしまった場合、この特例の適用が受けられなくなる点にも注意が必要です。

 

2. 配偶者の相続税軽減:配偶者に対する優遇措置

相続税法では、配偶者が相続する財産について特別な軽減措置が設けられています。配偶者は相続税が免除されるか、もしくは非常に大きな額まで非課税で財産を受け取ることが可能です。具体的には、法定相続分または1億6,000万円までのいずれか高い方の金額が非課税となります。

 

◆ 配偶者の相続税控除

配偶者が相続する財産には、他の相続人に比べて大幅な優遇措置が適用されます。例えば、配偶者が自宅や預貯金などの大部分を相続した場合でも、相続税の負担がほとんどないか、まったくかからないことが殆どです。この特例によって、残された配偶者が老後に安心して生活できるように配慮されています。

 

◆ 適用例

例えば、被相続人が1億円の財産を持っていた場合、配偶者がその全額を相続しても、1億6,000万円まで非課税であるため、相続税が発生しません。これにより、配偶者は手元の資産を維持しつつ、将来的な生活資金を確保することができます。

 

◆ 注意点

ただし、配偶者が相続税の優遇措置を受ける場合、その財産は配偶者の死亡時に再度相続税の課税対象となるため、次世代への相続に際しては別途対策が必要です。

 

3. 障害者控除・未成年者控除

相続人が障害者や未成年者である場合、相続税の負担を軽減するための特例控除が設けられています。障害者控除は、相続人が85歳に達するまでの年数に応じて、1年あたり10万円(特別障害者の場合は20万円)が相続税額から控除されます。また、未成年者控除は、相続人が18歳に達するまでの年数に応じて1年あたり10万円が控除される仕組みです。

 

◆ 活用例

例えば、15歳の未成年者が相続人となった場合、20歳までの5年間に相当する50万円が相続税から控除されます。障害者の場合も同様に、年齢に応じた控除額が適用されるため、相続税の負担を大幅に減らすことが可能です。

 

事業承継を含めた相続税対策はお任せ下さい

相続税対策は、様々な制度から最も有効なものを選択するために、複雑な知識と制度への理解が必要な分野です。特に株式を保有しているオーナー経営者様など、事業承継を絡めた相続税対策は数多くの実績もあり、もし対策に悩んでいることがあれば是非お任せ下さい。

 

ガルベラ・パートナーズグループでは、税理士をはじめ社会保険労務士など専門家同士が連携を取れる体制を整えておりますので、幅広いご相談に対応することができます。もし、お困りのことがございましたら、ホームページからお気軽にお問い合わせください。

 

【注意事項】

本記事は、令和6年9月30日(記事執筆)時点で発表されている各種情報を基に作成しています。実際に活用される際は、最新の税務情報を基に判断頂きますようお願い致します。

   

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