2018/05/16
海外赴任者に関する社会保険の取扱いに関しては、日本の制度と現地国の制度のいずれかが適用されるのかが問題となります。
社会保険と一口にいっても、制度の性質上、それぞれ制度ごとに対応が異なります。
制度ごとの留意点に関して、今回は労働保険(労災保険、雇用保険)について解説いたします。
使用者の責任として従業員が不利益とならないよう適切な対応を行いましょう。
法律の一般原則として属地主義がとられていることから、赴任国での労災について日本の労災保険法は適用されません。赴任国によっては制度が不十分な場合もありますので、任意で加入することが出来る「海外派遣者の特別加入」を利用する場合があります。
<海外派遣者の特別加入>新規で特別加入を行う場合、特別加入を希望する日の30日前までに管轄の労働基準監督署に「特別加入申請書」を提出します。その際に、派遣先の事業規模などを証明するための資料を添付する必要があります。
その際に、海外派遣の具体的が決定している場合は、「海外派遣に関する報告書」を同時に提出します。これは、海外派遣者が発生する都度、個人毎に提出します。
保険事故発生時の給付については申請・承認された「給付基礎日額」をもとに行われ、保険料については、申請・承認された給付基礎日額×365×保険料率(3/1000)を乗じた金額となります。保険料の申告・納付については特別加入の年度更新にて行いますので、漏れがないよう手続きをお願いします。
なお、「海外出張者」については国内の労災保険法が適用となるため、「派遣」か「出張」の判断が重要となりますので、以下、労働基準監督者からの例示を参照ください。
海外赴任者が無保険状態とならないよう、必要な手続を進めましょう。
出向等により、雇用関係が継続している限り、被保険者資格は継続します。逆に海外子会社へ転籍する場合には資格喪失となりますので、まずは赴任形態をご確認ください。
保険料については、国内で給与が発生する場合としない場合によって処理が異なります。
<国内給与が発生する場合>「国内で勤務する場合に通常支払われるべき給与の額」を雇用保険法上の賃金と解し保険料を算定します。その際に、「海外手当」、「在外手当」等の国内で就業していた場合には発生しないものは賃金には該当しません。当該賃金額は、給付を受ける際の算定基礎額にもなります。
※詳しくはこちら(雇用保険法業務取扱要領) <出向先から全額給与が支払われ、国内給与が発生しない場合>被保険者資格は継続されますが賃金が発生しないことになるため、基本手当(失業給付)を受ける場合に注意が必要となります。
具体的には、赴任期間が1年を超えかつ、帰国後1年以内に自己都合退職した場合、被保険者期間要件が足りずに基本手当の給付が受けられない可能性があります。
自己都合の際の基本手当の受給要件では、離職後2年間の間(以下、「算定対象期間」といいます。)で賃金を受けた月(支払基礎日数が11日以上ある月に限る。以下、「被保険者期間」といいます。)が12カ月以上ある事が求められていますので、1年を超える海外赴任期間がある場合、帰国後1年以上の被保険者期間が必要となります。
ただし、海外赴任により30日以上、賃金を受けられない場合は、算定対象期間の延長(最大4年まで)が可能となります。
帰国後間もない従業員の退職の際は、算定対象期間の延長を行いましょう。
以上、海外赴任者の労働保険の取扱いについての解説となりました。
海外赴任においては、ビザの取得、社会保険や税金の処理、現地での生活の支援など様々な対応が必要となります。
今後、社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金)の取扱いについても折を見てご案内できればと思います。
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