2014/12/16
Q 先日、職場で転倒事故が発生しました。すぐに病院へ行き、全治2週間で休業することになりました。現場からの聞き取りで書類を作成して労基署に提出しましたが、総務担当者も不慣れで何度も労基署から確認が来ている状況です。いざというときに上手く対応するポイントを教えてください。
A 労災保険は細かい法律や制度を見ると複雑な制度ですが、実務的な対応の観点から、分かりやすくポイントをまとめてみまので実務にお役立てください。
(1)職場で事故発生時は初動対応がポイント
初動で大切なことは、現場と総務担当者のホットラインを確保して、正確な情報を収集することです。事故の状況、社員や同伴者、病院・薬局名、全治の見込などを総務で把握してください。
病院に正確に情報が伝わっていない場合もありますので、総務からも病院に確認の連絡をしておくと確実です。
(2)労災保険の治療は自己負担がありません。
間違って健康保険証は使わないようにしましょう。後日、返金処理が必要になり、社員や病院へ負担をかけてしまいます。
(3)ケガの治療のため休業になっても、休業補償が出ます。
事故の後で社員も不安になっていますので、安心させてあげることが大切です。
3日目までは事業主が平均賃金の6割を支払います。4日目からは労災保険から休業補償給付として、平均賃金の約8割が支払われます。
給付金の請求は1カ月ごとに行うのが一般的なので、実際に振り込まれるまで時間がかかります。その点も説明するようにしてください。(その月に労災で休業した日数が確定してから申請するため)
※実務上の注意点ですが、「3日目」「4日目」のカウントは原則として労災発生日を1日目としてカウントします。(ただし労災発生が所定労働時間終了後の場合は、翌日からカウントします。)
(4)労災保険の担当窓口は労基署です。
労基署と言っても、労災課という別の課ですので、身構える必要もありません。書類で分からないことなど親切に対応してくれます。
(5)通勤中の事故も労災保険の対象になります。
間違って社員が健康保険で受診してしまうことが多いのですが、労災ということで病院・薬局の受付で申し出るように指示してください。
ただし、自動車事故の時は、相手の自動車保険で治療をすることが多いですので、保険会社の担当者と連絡とっておくとスムーズです。
(6)要注意!ぎっくり腰は労災にならない?
腰痛に関しては、認定が厳しいというが労災保険の特徴です。本当に業務が原因なのかどうか特定するのが難しいという理由です。
通勤や腰痛など、労災かどうかすぐには判断できない場合、まずは社員の治療が最優先ですから、病院には労災の可能性が高いと伝えて治療をしてもらうべきです。
後日、書類を提出してから労基署の判断が出ることになりますが、違っていれば、さかのぼって健康保険での治療に切り替えてもらえばよいのです(この場合は3割の自己負担になりますので、社員への説明が必要。)
(7)労災保険は、ケガをした社員が治療に専念できるように用意された制度で、自己負担は一切ありません。会社にとっても、労災保険から支払われた分は、使用者としての責任が免責されます。
社員が不安になっているときに、労災保険のしくみや金銭的な補償のことをきちんと説明できることが、会社への信頼を高めることになります。いざというときの会社の対応を周りの社員も見ています。頼りになる会社、福利厚生のしっかりした会社をアピールできるのです。
(8)現場と本社総務のやり取りのために簡単な書式で「労災連絡票」を作成しておくことをおすすめします。
また、土日も営業している業種であれば、土日対応の救急病院の連絡先の確認、初動対応の注意事項などをペーパーにまとめて職場に備え付けておくことで、万が一にも迷わずスムーズな対応ができます。
弊社では、このような危機管理のしくみ作りのご提案も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
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