2021/04/30
A、コンピテンシー評価、目標管理制度など無数の作成事例があります。ただし、運用経験値が浅い企業では難しい場合もありますので、「仕事の基準」をイメージしながら評価項目を作成する方法をお勧めします。
結論から申し上げますと、人事評価制度に特定の正解はないと考えられ、人事評価シートの作成方法は、企業の課題に応じて多数のパターンがあります。
古くは、職能等級等級制度でよく見られたような「積極性」「責任感」といった基本的資質をピックアップして5段階評価するような内容から、近年では、「コンピテンシー評価」「目標管理制度」等を複雑に組み合わせた内容も多くなっております。
※コンピテンシー評価
一定の職務や作業において、絶えず安定的に期待される業績をあげている人材に共通して観察される行動特性。
豊富な知識や高い技能、思考力のある人がかならずしも業績をあげられない事実に着目し、好業績を達成している人材(ハイパフォーマー)にみられる行動、態度、思考パターン、判断基準などを特性として列挙したものをさす。
[出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)]
コンピテンシー評価については、サンプルを元に作成するケースが多いと思われますが、他社事例の借り物のような内容になってしまい、経営陣も従業員が他人事になって白けてしまう事例も多く、内容の精査が難しいところです。
目標管理制度は、ある程度自走できるレベルの従業員でないと適切な目標設定が困難であること、定量的な目標を持たない部門(事務部門、専門職等)での設定が困難であること、上司側が評点をつけることが難しいこと等から、人事評価の運用経験値が必要なところです。
今回は、「仕事に求める基準」を設定して評価シートを作成する方法をご紹介したいと思います。
会社の仕事には「基準」があります。「基準」とは「この仕事をどの水準で行うか?どこまでのレベルを求めるか?」を指すものであり、会社によって異なるものであると考えます。マニュアルや基準書で明示されているものもありますし、ノウハウなどで暗黙知になっているものもあります。
同じ業界内でも、レベルが高いと言われている会社とそうでない会社があり、それにより顧客評価や受注単価が異なるということはありえることですが、総じて「業務レベルの高い会社=基準が高い会社」であるというのはビジネスの実感としてご理解いただけるところかと思われます。
他社との差別化を目指す上で、企業経営として考えるべきことは、「日々当たり前に行われている業務」の基準をいかに引き上げていくかという点に集約されますが、
例えば、見積書一つ作成するにしても、内容の精度、依頼してからのスピード、添付されている資料の分かりやすさ等で大きく差別化されているのは、相見積りの経験がおありの人には分かりやすいと思います。
営業の組み立て方、予算の進捗管理、品質管理や安全管理の水準などについても、よく見てみると企業ごとに大きな差があることが分かります。
ここで忘れてはならないのは、経営者の意識だけが先行してしまい、現実離れした基準を現場に押し付けても、現場がついてこれないため形骸化してしまい、そのような現実離れした基準は「無いと同じ」ことになってしまうという点です。
経営者が理想として描いている「我が社の基準」と「現場で行われている業務の実態」が大きく乖離することになってしまい、最悪のケースでは、不正や手抜きにつながります。
したがって、企業経営者と管理職は「ちょっと高いけどがんばれば実現できる基準」を示し続け、各担当者はその達成に向けて、「日々行われている業務のレベルを引き上げ続けていくこと。」が不断の努力として行われていることが望ましい姿であると言えます。
本稿でお勧めしたいのは、こうした「経営者が思い描いている基準」を評価項目として設定することで、人事評価制度を通じて従業員の意識向上を誘導するという方法です。
例えば、社内の業務連絡の基準があいまいで、連絡漏れによるクレームやチャンスロスが頻繁に起こるという課題を認識しているところで、経営会議で「報連相をしっかりしなさい」と訓示しても効果は薄いことは容易に想像できるところです。
であれば、人事評価項目に次のような項目を設定してはいかがでしょうか。
仕事は指示(依頼)と報告で成り立っていることを理解し、報連相の鉄則を抑えているか。「結論から伝える」「事実と私見を区別する」「数字や固有名詞を入れて具体的に報告する」「事態が悪化する前に事前に相談する」
また例えば、各社員が自己最適で仕事をしていて、顧客との距離感がある中で営業担当だけが孤軍奮闘しているような状況にあるのであれば、次のような項目を設定することも考えられます。
仕事の判断基準は、自己都合を優先するのではなく、顧客や関係者視点での行動がなされているか。部署にかかわらず顧客視点に立ち、要望に対し当事者意識をもった行動をしたか。
いろいろな働き方がある昨今ですので、例えば個人事業主であれば、特定の能力や特性を武器に稼いでいくことは可能かもしれません。
ただ、企業という組織で働く場合は、必ず「他者との関わり、協業」が発生します。職位が上がれば上がるほど、自分一人でコントロールできる業務領域が減少し、部下や他部署を巻込むことが必要になってくる、顧客との折衝が必要になる業務領域が増えてきます。
「名選手、名監督にあらず」の格言は有名ですが、ビジネスキャリアにおいても、業務領域の変化を想定せずに腕一本で乗り切ることは危険であると言えるでしょう。
また、ホワイトカラー職種になれば、特定領域の業務を定型的に行う割合が減り、広範な分野を対象にした判断業務や試行錯誤の要素が多くなってくることになります。
したがって、
といったものがバランスよく養成できないと、どこかでキャリアが行き詰まっていくことになります。例えば、特定の分野に造詣が深く、頭の回転自体は良好な方であっても、他者に理解されにくいコミュニケーションを取り、後ろ向きな批判を繰り返し、知識やノウハウをブラックボックス化するような批評家タイプの人であれば、周囲の協力は得られず、ビジネスの世界では早期に行き詰まってしまうことは容易の想像されるところです。
人事評価は単純な能力スペック査定ではなく、会社が求める特性へのマッチングであるという視点を持っていただくと、人事評価シートに盛り込むべき内容が見えてくるところかと思われます。
評価シートのフォーマットや言語化の支援というところで外部専門家の力を借りるのも一案です。
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