2019/02/20
A、適正な選挙の結果として同じ人物が選出されること自体に問題はありませんが、「お願いする」と言ってしまっている時点で事実上の会社指名になっていることが疑われますので、労働者による民主的な方法で実施する必要があります。
人事業務の管理年度が4月起算の企業の場合は、就業規則の意見聴取や労使協定の締結などが多く発生するシーズンです。
その際に、「事業場ごとに適正な手続きにより過半数代表者を選任する」必要がありますが、理屈としては理解していても、なかなかきちんとした形で実施できず、適正な手続きを経ずに過半数代表者が選任されている事例が多く、注意が必要と思われます。不適切代表者と締結した協定などは、無効と判断される可能性があり、企業管理上のリスクを抱えることになってしまいます。
労働基準法施行規則第6条の2においては、次のように労働者代表の要件が定められています。
(1)労働基準法第41条の管理監督者ではないこと。
(2)法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
とはいえ、多くの中小企業の実態としては、「一部の従業員での話し合いで決めている」「社員会や親睦会等の代表者が自動的に労働者代表となる慣行」「社長や人事担当者が裏で指名している」などの状況が多く見られ、不適切事例として指摘されているところです。
前掲の施行規則の基準に基づき、企業実務の面から検討しますと、選択可能な方法としては、事実上、次の3つに絞り込まれると思われます。
(1)投票による選挙方式(投票用紙を使う、メールなどの電子的な方法を利用する等)
(2)持ち回り決議方式(書面を回覧して賛否を問う方式)
(3)全従業員の話し合い方式
小規模な事業場では、全員が集まったタイミングで(3)を実施するのが簡便と思われますが、一人でも欠席した場合は実施不可能です。(これはパートアルバイト等も含め「全員」参加が必要になります。)
ですので、中規模以上の事業場では、漏れなく実施するためには(1)又は(2)を検討することになります。ちょっとしたイベントになりますので、実施ルールを定めて年次行事としてルーティン化することが望ましいと思われます。
なお、実施上の注意事項は次のとおりです。
労働者代表選挙は、一般的な中小企業では形骸化しやすい論点ではありますが、「実質的に会社指名が行われている」とか「投票から排除された労働者が確認された」等の状況が発覚して「非民主的な選出方法である」として手続に瑕疵があるとされた場合は、重大なリスクを抱えることになります。
労働者代表の選出に虚偽や瑕疵が存在する場合は、その後の手続(就業規則届出、労使協定の締結等)は遡及無効を争われる可能性があり、企業としての労務コンプライアンス上、重大な問題を引き起こすことになります。そのようなことが起こりえないように、選出過程の透明化、記録化が求められます。
弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。