GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|【働きかた改革】私傷病の治療と仕事の両立支援の注意点

2019/08/26

Q、当社の正社員が心臓の疾患で入院し、このたび復職することになりましたが、主治医から残業時間を制限するように言われていると申し出がありました。また定期的な通院が必要となるため、半日単位で有給休暇が取れるように希望しています。 現在当社の有給休暇は1日単位に限定しています。このような場合、会社としてはどのような対応が必要か、また留意する点があれば教えてください。

 

A、従業員が治療と仕事の両立がしやすいように会社が対応する場合には、主治医などの医師による専門家の意見に基づいて、職場の状況に応じて取り入れることが可能な、新しい休暇の導入や取り方、勤務形態などを検討していく必要があります。その際には、特例的な扱いは避けて、制度として導入することが重要です。 また、これらの措置を取った後の新しい勤務形態が、本来の雇用契約により定められた労働条件と異なる場合には、給与を含めた労働条件の見直しも必要となります。

 

解説(公開日:2019/08/26 最終更新日:2019/08/24)

 

診断技術や治療方法の進歩により、療養しながらの仕事との両立が可能な場合が増え、癌などに代表される不治と言われる疾病であってもすぐに離職をしなければならないという状況が、必ずしも当てはまらなくなってきました。

 

本年4月より労働基準法などの改正で推し進められている「働きかた改革」でも、健康経営やワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ推進といった観点から、労働者の療養治療と仕事の両立支援の取組が推奨されています。

他方、労働安全衛生法では、事業者である会社は「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪する恐れがあるものにかかった者」についてはその就業を禁止しなければならない、とされており、会社が就業を受け入れる場合は慎重に進める必要があります。

 

今回のご質問の心臓疾疾患のある方のように、治療を継続しながら復職する場合には、就業により症状の悪化がないようにするために、また職場環境において受入れがスムーズとなるように、会社がどのような配慮をとることが必要かを整理する必要があります。

まずは会社が治療と仕事の両立に取り組む場合の留意点をあげていきます。

 

(1)疾病に関する情報の収集

従業員の疾病の増悪、再発や労働災害が生じないよう、会社には、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の適切な就業上の措置や治療に対する配慮が求められます。

その判断のためには、主治医からの書面による意見書の提出が必要です。 そして、意見書での情報に不足が有ると会社が判断する場合には、産業医や会社の指定医による診断や従業員本人の同意を得ての主治医への意見聴取などのさらなる情報収集が必要になります。

 

(2)労働者本人による取組

会社が両立支援を検討すると同時に、疾病を持つ従業員本人が、主治医の指示等に基づき、治療を受けること、服薬すること、適切な生活習慣を守ることなど、治療や疾病の増悪防止について適切に取り組むことは不可欠です。また病状に変わりがあった場合にも、従業員本人から速やかに会社に届け出るといったことも義務付けておきます。

 

(3)相談窓口の設置など

私傷病による疾病が、支援が必要な状況にあるかを従業員から申し出しやすいように、会社は相談窓口の設置や情報を守秘することを明確に公表しておくことが重要です。

 

(4)治療と仕事の両立支援の特徴を踏まえた対応

治療と仕事との両立には、入院や通院、療養のための時間の確保等が必要になるだけなく、疾病の症状や治療の副作用、障がいなどによって、従業員本人の業務遂行能力が一時的に低下する場合などがあります。このため、会社は労働時間に対して配慮するだけでなく、従業員本人の業務遂行能力の変更も踏まえて、就業における対応を取ることが必要となります。

 

(5)個別事例の特性に応じた配慮

症状や治療方法などは個人ごとに異なるため、具体的な対応内容や対応する期間について、会社はどの程度、個別対応の幅を持っておくかを検討しておくことも重要です。

 

(6)対象者、対応方法を明確化したルール作り

職場の状況に応じて、会社はルールを制定し、対象者、対応方法などを明確にしておくことが重要です。

 

(7)個人情報の保護

従業員の傷病、治療状況などの疾病に関する情報は、センシティブな個人情報であるため、労働安全衛生法に基づく健康診断において把握するものを除いて、会社は情報提供を強制することはできません。このため、従業員本人にも理解を求め、同意の上で情報取得する必要があります。また、これらの疾病に関する情報は、取扱い者の範囲を定めて、漏えいが起こらないようにする管理体制の整備が必要です。

 

この他に、受け入れる側の職場の整備として、社内の上司や同僚などに様々な働きかたに関する研修を行う教育や、産業医や保健師などの産業保健に関連するスタッフ、主治医を含む医療機関関係者、従業員の家族との連携が取れるようにしておくことが重要です。

 

このような点に留意したうえで、実際にはどのような措置を取り入れるかを検討します。

 

具体的な例としては、年次有給休暇の半日や時間単位の取得、傷病休暇や病気休暇の導入、休職制度の整備、また、勤務形態については、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務などがあげられます。

会社は、職場の状況により、実現可能な措置を適用し、全ての従業員が同じ状況になった時に措置が受けられるように、制度として導入することが重要です。

従業員個別の特例的な対応を場当たり的にしてしまうと、受け入れる側の職場の理解が得られにくく、結果的に疾病を持つ従業員も仕事を続けることが難しくなり、職場環境に影響を及ぼす結果になりかねません。

 

またこれらの勤務形態の変更に応じた給与制度もルールの整備が必要です。

 

疾病の治療と仕事の両立には、労働時間の変更だけでなく、従業員本人の業務遂行能力が低下した場合もあるため、業務内容に応じて給与の減少を含む給与の見直しもできるように就業規則の賃金規定でも対応が必要です。

 

従業員の支援の申出は、私傷病である疾病に関わるものであることから、突然となることがあり、対応を急ぐあまりに特例的な対応をとることも見うけられますが、労務管理の観点からは、制度として導入することを奨めます。

 

社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、多様な働きかたができる職場を実現する労務管理のサポートを行なっています。制度導入や規定整備などのご相談を承っておりますのでどうぞお気軽にご相談ください。

 

参考資料:厚生労働省 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン

       

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