2020/02/26
A、ハローワークの上位機関である各都道府県労働局に「雇用保険審査官」が設置されていますので、ハローワークの決定に異議がある場合は、審査請求をすることができます。
近年、退職をめぐる環境は多様化しており、従来のように「会社都合退職」「自己都合退職」という区切りでは判断が難しい状況が発生しています。
退職にいたる事実関係の判断が難しくなる事例としては、次のようなものがあります。
このような状況においては、会社と労働者の言い分が異なる場合が多く、退職日や退職理由を巡って争いになることも多くなっています。
通常の会社側の処理としては、退職日後に次のような各種喪失手続を行います。
(2)の手続の中で、企業側が「雇用保険被保険者離職証明書」という書類に「離職理由」を記載しハローワークに提出しその複写控えが、「雇用保険被保険者離職票-2」として労働者に返送されるという段取りになりますが、この「離職理由」の記載を巡って会社と労働者側の認識に相違が発生する場合があります。
ハローワークとしては、原則としては、退職届・退職合意書・解雇通知書など、添付された証拠書類を元に判断をすることになりますが、自己都合として記載された退職届が添付されているのにかかわらず、労働者側から「あれは退職を強要して書かされたものだ」「ハラスメントに耐えきれず不本意に退職に追い込まれたものだ」など、事実関係を争うことになるケースが多々あります。
会社と労働者での話し合いで解決できるとよいのですが、感情のもつれやコミュニケーションギャップなどもあって水掛け論に終始する場合には、ハローワークの行政判断により決定されることになります。ただし、ハローワークでの結論に納得ができない場合の不服申立機関として審査請求制度が用意されていますのでお知りおきいただくといざというときのご相談が可能かと思われます。
訴訟とは異なり費用はかかりませんし、弁護士に代理を依頼する必要もありません。ただ、一般的になじみのない制度ですし、定型の書式なども公開されていませんので、管轄労働局の雇用保険審査官席に問い合わせしていただければ、親切に案内してもらうことが可能です。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000190211.pdf</p>
多くの場合は、このような不服申立は労働者側からなされることが多いのですが、現実問題としては、企業側にとっても「離職理由」がどのように判断されるかは大きな関心事になります。
会社としては、「事業主からの働きかけによる退職」(いわゆる、「解雇」「退職勧奨」など)を発生させるということは、レピュテーションリスクや不当解雇を争われるリスクもありますので、事実関係が異なるものであれば、容易に合意することはできません。また、よく言われる話としては、助成金の欠格要件に該当することが言われています。利用率が高い、キャリアップ助成金制度においては、申請欠格要件として、『当該転換日(注:正社員転換を実施した日)の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させたこと。』が説明書類上に明記されています。
労働局に問い合わせたところ、こうした企業側の実務的な不利益感や不安感は、「審査請求すべき理由に該当せず、企業側から離職理由を巡る審査請求は原則不可」との説明でしたので、企業側のそうしたご要望にはお応えは難しいということになります。
ただし、退職日の認識相違などは、企業側の労働保険料にも影響する部分ですので、会社側からの審査請求も可能な場合もあるとのことでした。
まとめますと、
・雇用保険給付に関すること(離職理由による給付日数の違い)は、原則として労働者のみが申立することができる。
・雇用保険の資格取得や資格喪失に関することは、労働者も会社も申立することができる。
ということになりそうです。詳細についてもっとお知りになりたい場合は、上記リンクに記載の各都道府県の窓口にお問い合わせください。
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