GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|【雇用保険の審査請求制度】雇用保険の離職理由の変更は可能か?

2020/02/26

Q、離職票の処理について労働者との認識相違があり論争になってしまいました。管轄のハローワークに説明したのですが、当社の言い分を受け付けてもらえず困っています。相談できる機関はありますか?

 

A、ハローワークの上位機関である各都道府県労働局に「雇用保険審査官」が設置されていますので、ハローワークの決定に異議がある場合は、審査請求をすることができます。

 

解説(公開日:  最終更新日:

 

【1】退職理由の多様化

近年、退職をめぐる環境は多様化しており、従来のように「会社都合退職」「自己都合退職」という区切りでは判断が難しい状況が発生しています。

 

退職にいたる事実関係の判断が難しくなる事例としては、次のようなものがあります。

 
  1. ・ハラスメントや人間関係プレッシャーによる退職
  2. ・会社と正常なコミュニケーションができず退職代行サービスの活用
  3. ・人事異動、人事評価、処遇変更に対して納得できないことによる退職
  4. ・違法な長時間残業、隠れ残業の強要、割増賃金の未払等による退職
 

このような状況においては、会社と労働者の言い分が異なる場合が多く、退職日や退職理由を巡って争いになることも多くなっています。

 

【2】退職時の会社側手続き

通常の会社側の処理としては、退職日後に次のような各種喪失手続を行います。

  1. (1) 健康保険や厚生年金保険の資格喪失手続
  2. (2) 雇用保険の資格喪失手続
  3. (3) 住民税の特別徴収異動手続
 

(2)の手続の中で、企業側が「雇用保険被保険者離職証明書」という書類に「離職理由」を記載しハローワークに提出しその複写控えが、「雇用保険被保険者離職票-2」として労働者に返送されるという段取りになりますが、この「離職理由」の記載を巡って会社と労働者側の認識に相違が発生する場合があります。

 

ハローワークとしては、原則としては、退職届・退職合意書・解雇通知書など、添付された証拠書類を元に判断をすることになりますが、自己都合として記載された退職届が添付されているのにかかわらず、労働者側から「あれは退職を強要して書かされたものだ」「ハラスメントに耐えきれず不本意に退職に追い込まれたものだ」など、事実関係を争うことになるケースが多々あります。

 

会社と労働者での話し合いで解決できるとよいのですが、感情のもつれやコミュニケーションギャップなどもあって水掛け論に終始する場合には、ハローワークの行政判断により決定されることになります。ただし、ハローワークでの結論に納得ができない場合の不服申立機関として審査請求制度が用意されていますのでお知りおきいただくといざというときのご相談が可能かと思われます。

 

【3】審査請求制度、再審査請求制度とは?

厚生労働省の資料によれば、次のように説明されています。 『雇用保険では、ハローワークが行った「被保険者となった(または被保険者でなくなった)ことの確認」や「失業等給付に関する処分」に不服がある場合は、都道府県労働局に配置された雇用保険審査官に対して審査を申し出ることができます。これを「審査請求」といいます。審査請求が行われた場合、雇用保険審査官により審理が行われ、その結果に基づき、審査請求の却下、審査請求の棄却、失業等給付に関する処分等の取消しのいずれかの決定がなされます。』  

訴訟とは異なり費用はかかりませんし、弁護士に代理を依頼する必要もありません。ただ、一般的になじみのない制度ですし、定型の書式なども公開されていませんので、管轄労働局の雇用保険審査官席に問い合わせしていただければ、親切に案内してもらうことが可能です。

 

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000190211.pdf</p>  

【4】企業側から審査請求をすることは可能か?

多くの場合は、このような不服申立は労働者側からなされることが多いのですが、現実問題としては、企業側にとっても「離職理由」がどのように判断されるかは大きな関心事になります。

会社としては、「事業主からの働きかけによる退職」(いわゆる、「解雇」「退職勧奨」など)を発生させるということは、レピュテーションリスクや不当解雇を争われるリスクもありますので、事実関係が異なるものであれば、容易に合意することはできません。また、よく言われる話としては、助成金の欠格要件に該当することが言われています。利用率が高い、キャリアップ助成金制度においては、申請欠格要件として、『当該転換日(注:正社員転換を実施した日)の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させたこと。』が説明書類上に明記されています。

 

労働局に問い合わせたところ、こうした企業側の実務的な不利益感や不安感は、「審査請求すべき理由に該当せず、企業側から離職理由を巡る審査請求は原則不可」との説明でしたので、企業側のそうしたご要望にはお応えは難しいということになります。

 

ただし、退職日の認識相違などは、企業側の労働保険料にも影響する部分ですので、会社側からの審査請求も可能な場合もあるとのことでした。

 

まとめますと、

 

・雇用保険給付に関すること(離職理由による給付日数の違い)は、原則として労働者のみが申立することができる。

 

・雇用保険の資格取得や資格喪失に関することは、労働者も会社も申立することができる。

 

ということになりそうです。詳細についてもっとお知りになりたい場合は、上記リンクに記載の各都道府県の窓口にお問い合わせください。

 

弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。

       

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