GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|【60歳→65歳】定年延長を検討する際に考慮すべき論点

2020/08/03

Q、高齢者のモチベーションアップのため、定年を60歳から65歳に延長することを検討しています。注意点など教えてください。

 

A、「定年延長するから」「中高年層のモチベーションが上がる」という因果関係があるとは言い切れません。むしろ順番としては、「年功序列によらない中高年層の適材適所」や「世代間の人事の活性化」が先に必要で、その結果として定年延長という人事施策が可能になると考えられます。

 

解説(公開日:2020/08/03 最終更新日:2020/08/05)

 

高年齢者雇用安定法の改正により、2021年4月より、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置(定年引上げ、継続雇用制度の導入、定年廃止、労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入のいずれか)を講ずることが努力義務となります。

 

業種によっては、人手不足や後進育成不足ということもあり、高齢者の活用を真剣に検討しなければ人事施策が回っていかないという状況もあろうかと思われます。

 

現状は、定年を60歳として、65歳まで再雇用制度を運用している企業が多数派と思われますが、これを定年65歳に引き上げるとの方向性で検討中の企業が増えています。本稿では、60歳から65歳へ定年を延長する場合に、実務上、どういった論点が発生するかという点を検討してみたいと思います。

 

【1】役職定年の検討

仮に定年を65歳まで延長した場合、年功序列の人事制度を65歳まで続けていくということは現実的に困難であると思われます。

 

年功序列による人事の硬直化を防止する、後進に経験を積むチャンスを与えるという意味から、一定の年齢で役職定年を設定している事例が多いと思われます。

 

一つの活性化策として、50歳代後半(例:55歳)で役職定年を設定し、ライン役職を後進に譲り、自身は専任職や担当職に就任して、担当業務の深掘りや後進の指導サポートに注力するという人事制度があります。

 

そして、60歳(一般的な定年)で、さらに職責や業務範囲を軽減して役職を退任し一般職となる等、二段階で軟着陸させていくということが事例として多いところかと思われます。

 

以上のように、定年延長をする際には、人事の硬直化を防止する対策を合わせて検討することが必須となります。政府の方針は、高齢者の社会保障の代替として、少しでも長く働いていただくという生活保障の側面が強い議論になっていますが、単純に高齢者の権利保護のみを考えてしまうと、組織としてかえって不合理かつ非効率な人事制度が蔓延することになってしまいます。

 

【2】賃金カーブ

賃金カーブを65歳までひたすら右肩上がりということは現実的に難しいと思われ、役職定年、60歳到達時を起点として、職責や業務内容に合わせて、一定の範囲内で賃金や諸手当を減額するのが一般的運用かと思われます。

 

他社事例のアンケートによりますと、「60歳定年、65歳歳まで再雇用」制度において、下記のような運用イメージが多いようです。

(第一段階)役職定年による職責と処遇の見直しにより、賃金ベースで70~90%に減額。

(第二段階)60歳定年による職責と処遇の大幅見直しにより、賃金ベースで50~80%に減額

※役職定年到達前の最高時の賃金水準を基準とする。

 

当然のことながら、同一労働同一賃金との兼ね合いがありますので、単純に「払える人件費」という会社都合のお話ではなく、職責や業務範囲の見直しという「職務給」の考え方が重要となります。(仕事が軽くなるから、処遇も下がるということ。)

 

【3】最も重要なこと(後進の育成)

さて、前述の賃金カーブの低下は「職責や業務範囲が減少する」ことが大前提となります。

従来あったような、「同じような仕事をしているのに、60歳で一方的に賃金が減額される」という状況は、同一労働同一賃金の観点から許容されない時代となりました。

 

こうした観点から重要になってくるのは、現職役職者の「職責や業務範囲を軽減」させるために、「後進が育っていること」が大前提となります。これができませんと、役職定年自体を実施できず、後進に人件費やポストを配分できず、そのために世代交代が進まず、ますます組織が高齢化していくという循環に嵌まります。

 

経営層としては、「後進が育っていないため現役職者が役職定年以降も留任せざるを得ない。」という状況を避けることが人事上の最優先課題となります。(特に中小企業において)

 

これは、経営層自身にも言えることですが、組織における一定以上のポジションは、「上がりポスト」になりやすく、情実のしがらみや管掌業務のブラックボックス化により、成果主義や競争原理が働きにくい状況ができあがります。

 

これからの時代は、在職年数が長くなるからこそ、意識的に自身の「後進の育成」にしっかり取り組むことが、事業の継続性の観点から、高く評価される時代になってきたように思われます。

(これは、自分のやり方を踏襲するイエスマンを侍らせるという意味ではなく、自分を超える人材と見いだし、育成し、後を託すという営みに他なりません。)

 

定年延長とは、単に就業規則の「60歳」を「65歳」に書き換える作業ではなく、事業の継続性や市場競争力の向上を背景として、人事評価制度やその運用をきれい事抜きで考え抜かなければ実現は困難なものであると言えます。

 

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