GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|【今さら聞けない】労働契約書のフォーマットの見直しのポイント

2020/11/16

Q、労働契約書のフォーマットが古くなっているため作り直しをしたいと思います。どういった点に注意すべきでしょうか?

 

A、労働契約書は法令上の義務だから交付するという消極的な意味合いだけではなく、労働者との合意内容を明確化してお互いに気持ちよく働くという積極的な意味合いがあります。法令記載事項を漏らさないことは当然として、会社にとって運用しやすく、労働者にとっても簡潔で見やすい形を目指しましょう。

 

解説(公開日:2020/11/16 最終更新日:2020/11/13)

   

【1】根拠法令について

労働基準法第15条と同法施行規則第5条が根拠法令となります。

その他に、パート有期法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)第6条と同法施行規則第2条が、パートタイム社員と契約社員の過重事項を定めています。以下、本稿ではこれらの法令に添ってご説明をいたします。

 

【2】書面の名称について

法令上は「書面」とあるのみですので、名称は任意でかまいません。一般的には、双方の合意書形式で作る場合は「労働契約書」「雇用契約書」、通知書形式で作る場合は「労働条件通知書」「雇入通知書」などといった名称が多いように思われます。

 

労働契約法第3条「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」にもあるように、会社と労働者の合意を重んずるという風潮から合意書形式で作成する企業が多いようです。

 

【3】電子交付について

労働基準法施行規則第5条第4項二号により、電子交付も認められています。近年では、SmartHRやオフィスステーションといった人事管理クラウドシステム市場が急成長しており、電子交付で効率化を図る企業が多くなっています。書面であれば、渡し忘れや紛失などの人為的ミスが発生してしまいますが、システム内であれば通知機能やアラート機能でのチェックができますので、大人数の労務管理においてはシステム管理の方が安定すると思われます。

 

【4】書面による通知義務事項について

法令により書面による通知が義務づけられている事項があり、下記のとおりです。これらの事項については、「採用面接で説明していてお互い納得しているからOK」とはならず、必ず書面として交付する必要がありますのでご注意ください。特に、パートタイム・契約社員の特有事項は漏れやすいところですのでご注意ください。

 
記載事項
根拠法令
正社員
パート・契約社員
労働契約の期間 労基法施行規則
第5条第1項一号
必須
必須
期間の定めのある労働契約を
更新する場合の基準
同一の二号
必須
必須
就業の場所 同一の三号
必須
必須
従事すべき業務 同一の三号
必須
必須
始業及び終業の時刻 同二号
必須
必須
所定労働時間を
超える労働の有無
同二号
必須
必須
休憩時間 同二号
必須
必須
休日 同二号
必須
必須
休暇 同二号
必須
必須
就業時転換(交替制勤務)等 同二号
必須
必須
賃金の決定、
計算及び支払の方法
同三号
必須
必須
賃金の締切り及び支払の時期 同三号
必須
必須
退職に関する事項
(解雇の事由を含む)
同四号
必須
必須
昇給の有無 パート有期法施行規則
第2条第1項一号
必須
退職手当の有無 同二号
必須
賞与の有無 同三号
必須
相談窓口 第四号
必須

 

【5】書面交付義務がない通知事項について

その他、下記の労働条件について定めがある場合は、労働者への通知義務がありますが、書面交付までは義務とされていません。入社オリエンテーション等での口頭説明や就業規則閲覧で確認させる等の方法で対応する企業が多いと思われます。

 
  1. ・昇給に関する事項(パートタイム、契約社員は書面交付必須)
  2. ・退職手当に関する事項
  3. ・賞与や臨時手当等に関する事項
  4. ・労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  5. ・安全及び衛生に関する事項
  6. ・職業訓練に関する事項
  7. ・災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  8. ・表彰及び制裁に関する事項
 

【6】固定残業の表記に関する注意事項

多くの企業で採用されている固定残業代については、紛争事例が多いことから下記の行政通達により、表記の明確化が求められていますのでご注意ください。

 

基監発 0731 第 1 号平成29年7月31日
時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのための留意事項について(抜粋)

 

労働基準法第37条が時間外労働等について割増賃金を支払うことを使用者に義務づけていることには、時間外労働を抑制し、労働時間に関する同法の規定を遵守させる目的があることから、時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っている場合には、上記1を踏まえ、次のことに留意する必要があること。

 

(1)基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提に、例えば、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金に当たる部分について、相当する時間外労働等の時間数又は金額を書面等で明示するなどして、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区別できるようにしているか確認すること。

 

(2)割増賃金に当たる部分の金額が、実際の時間外労働等の時間に応じた割増賃金の額を下回る場合には、その差額を追加して所定の賃金支払日に支払わなければならない。そのため、使用者が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日付け基発 0120第3号)を遵守し、労働時間を適正に把握しているか確認すること。

 

以上のように、労働契約書は書面としてはA4サイズ1枚程度で作成されることも多く、労務管理上の論点としてはあまり目立たない存在ではあるのですが、その法令上の重要性は高く、論点としてはたいへん奥深いものです。単に法定事項を書き連ねればよいというものではなく、ビジネスフォームで整然と作成するスマートさも求められますので、記載の詳細度も調整する必要があります。(就業規則をそのまま書き写すようなことをしてしまうと極めて冗長な書面になってしまいます。)

 

そういった意味で、きちんと作成するのはなかなか難しさがありスキルを要するところですので、適宜、社会保険労務士の助言を得ながらフォーマット整備をすべくお勧めいたします。

 

※なお、外国人社員が増加していますので、フォーマットの英訳版なども必要になってきますが、そうした場合も専門家にネイティブチェックを受けるなどご相談された方がよろしいかと思います。(機械翻訳ではなかなか難しいです。)

 

社会保険労務士としての経験上、労働契約書フォーマットの管理レベルを見ると、企業の労務管理のレベルが見えるといった資料でもあります。ご不安な点がございましたら、お気軽にご相談いただければと存じます。

 

弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。

         

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