GERBERA PARTNERSブログ

アジア|RCEPが発効したと聞きましたが、具体的な内容を教えてください

2020/11/16

Q、昨日、2020年11月15日にRCEPが発効したと聞きました。そもそも、RCEPとは何なのでしょうか?また、これにより、日本にはどのような影響があるのでしょうか?

 

A、RCEPとは東アジア地域包括的経済連携協定のことをいい、関税の削減と非関税分野の障壁低減を目的とした、アジア地域全体を巻き込む巨大市場の創設を意味します。2021年中を目途に、各国の国会等での承認手続きを経て、正式に動いていくことになります。

 

解説(公開日:2020/11/16 最終更新日:2020/11/20)

   

■ RCEPとは

RCEPとは、東アジア地域包括的経済連携協定といい、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略称で、2020年11月15日に第4回RCEP首脳会議の席上で協定は署名されました。

2011年に東南アジア諸国連合(ASEAN)の10ヵ国が発起し、関税と非関税障壁の削減を通じて統一市場の創設を目指して協議がはじまりました。

 

もともと、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5か国は、それぞれがASEAN10か国と包括的経済連携協定を締結していましたが、今回はこれら5か国とASEAN10か国が1つの包括的経済連携協定を締結しました。

 

アナリストらによると、RCEPが署名されたあと、その影響力は北米自由貿易区(アメリカ、カナダ、メキシコ)やEU関税同盟(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、ギリシアなど20数か国)同じレベルに達するとのことです。

 

RCEPが関連する分野は、商品貿易、サービス貿易、投資の参入、標準技術、動植物検疫、経済技術協力、知的所有権、電子商取引、争議の解決などが挙げられます。

 

■ RCEPに署名した国家

および東南アジア10か国です。なお、インドは2011年からRCEP交渉に参加していましたが、中国からの製造品やオーストラリアやニュージーランドからの農産物・乳製品のダンピング懸念を理由に2019年11月に交渉から離脱しました。

具体的加盟国:

中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、フィリピン、 シンガポール、タイ、ミャンマー、ベトナム、ラオス、マレーシアです。

 

■ 今までの包括的経済連携協定(AJCEP)

もともと日本は、アセアン諸国と二国間経済連携協定(EPA)が発効していましたが、2008年12月に日本・シンガポール・ベトナム・ラオス・ミヤンマーの5カ国で包括的経済連携協定(AJCEP)が発効し、それ以後、ブルネイ(2009年1月)、マレーシア(2009年2月)、タイ(2009年6月)、カンボジア(2009年12月)、フィリピン(2010年7月)、インドネシア(2018年 3月)が加盟しました。

 

なお、自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)は、経済連携協定(Economic Partnership Agreement: EPA)の範囲に含まれる形で、詳細は以下のようになっています。

(1) FTA

特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃する協定

  1. ・物品の関税を削減・撤廃
  2. ・サービス貿易の障壁等を削減撤廃
 

(2) EPA

FTAを柱に、ヒト、モノ、カネの移動の自由化・円滑化を図り、幅広い経済関係の強化を図る協定

  1. ・投資規制撤廃
  2. ・人的交流の拡大
  3. ・各分野の協力
  4. ・知的財産制度、競争政策の調和
 

■ RCEPの影響力

RCEPは、参加国の人口だけで約23億人に達し、また参加国の国内総生産(GDP)は合計約25兆ドルで、世界経済の約25%を占めます。

すなわち、RCEPは世界最大規模で、最も影響力のある自由貿易協定となります。

協定発効後、同盟国は以下の施策を実行します。

 

(1) 関税引き下げ

カンボジア、ラオスとミャンマーの30%貨物に対して、ゼロ関税優遇が適用されます。

その他同盟国の65%貨物に対して、ゼロ関税優遇が適用されます。

 

(2) 市場開放

各国は少なくとも100の分野の市場を開放します。ただし、カンボジア、ラオス、ミャンマーについてはまだ経済的に脆弱なため、特殊優遇措置を受けています。

 

■ RCEPにおける中国の役割

中国の市場は巨大で、RCEP加盟国全体の人口に占める割合は約65%。また、GDPと外貨準備高は全体の約50%を占めており、RCEPにおいては、否応なく中国が重要な役割を果たすと言われています。

 

2018年、中国は他の14カ国に160億ドルを投資し、地域内の外資140億ドルを誘致しました。世界銀行「グローバルビジネス環境報告2020」によると、中国のビジネス環境は2年間にわたって、世界中のビジネス環境の改善幅が最も大きい十大経済体にランクされています。日本のメディアがどれだけ中国を悪く言おうとも、経済的には大きな役割を担っています。

 

■ RCEPにおける日本の役割

日本はRCEP加盟国のなかでは中国に次いで第2位の経済大国であり、中国の専横的な行為に歯止めをかける存在として、加盟各国から期待されているところです。インドの撤退によりRCEPに対する期待はやや削がれたものの、世界最大かつまだまだ成長していくアジアマーケットにおいて、RCEPの存在価値はますます高まるものと思われます。

 

そのようななかで、日本が加盟各国と協調し、中国の専横を許さない立場をとるとともに、RCEP以外の経済連携協定、すなわちTPPやEUEPAの加盟国との間に入ってモノやサービスの流れにおいて、中心的立場となっていけるのではと考えます。今後の日本の役割に大いに期待したいと思っています。

 

■ RCEPの沿革

2012年11月
正式に起動する
第21回ASEANサミットでは、地域的な包括的経済連携協定が正式に交渉を開始した。
2013年5月
第1回交渉
RCEPは第1回目の交渉を行い、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドおよびアセアン10カ国はいずれも代表団を派遣して参加した。
2017年11月
初指導者会議
RCEPでは初めて首脳会議が開かれ、会議に出席した各国の指導者は会議後、既存の自由貿易協定を統合し、新たな経済関係を構築する必要があるとの共同声明を発表した
2018年9月
四章交渉完了
2018年9月までに参加国部長16人は税関の流れと貿易の便利化、中小企業と経済協力など四つの章の交渉を完了した
2019年11月
インド撤退
インドは「地域的な包括的経済連携協定」に署名しないことを決定した。残りのメンバー国はすべてのテキスト交渉を終え、実質的にすべての市場参入許可交渉を終了した
2020年8月
交渉終了
閣僚級会議は「共同メディア声明」を発表し、出席した各当事者は年内に協定を締結することを決定した
2020年11月
協定署名
第4回RCEP首脳会議の席上で協定は署名された
 

■ RCEP署名前と署名後の違い

RCEPの署名前と署名後で、以下のような違いがあります。

署名前
署名後
5つの「10+1」モードで、アセアン10か国はそれぞれ先進5か国と協定に調印していた 1つの「10+5」モードで、新たな経済関係を統合し、協定を締結した
各国の協定の内容は互いに違っており、異なる国に入るにはそれぞれ協定が必要だった 区域内でルールを統一し、いずれかの国に入ることは全地域に入ることを意味する
一定の関税と非関税障壁が存在した 関税・非関税障壁を削減し、地域全体の国に統一基準を敷いた
貨物貿易の開放水準は相対的に低かった 貨物貿易の開放水準は90%以上に達した
新型コロナウィルスが同盟国間の貿易投資に影響を与えた 重要な商品とサービスに対する開放性を維持し、新型コロナウィルスに共同で対抗するようにした
 

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今回のRCEP発効は、アジア全域においてEUのような市場が誕生することを意味し、大きな意味を持ちます。ガルベラ・パートナーズグループは、日本企業の貿易推進を国内外からサポートしております。当社自身でも海外各国と100品目以上の輸出入を行っておりますが、現地でのパートナー探し、商談代行、価格交渉、展示会代行など、サポートをしています。ぜひお声がけください。

 

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