2021/02/17
A、会社は従業員に対して定期健康診断を行う義務があり、従業員もまた、会社が行う定期健康診断を受診する義務があります。受診しない理由を把握し、必ず受診してもらうように働きかけましょう
労働安全衛生法第66条第1項に「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」と定められています。そして労働安全衛生規則第44条には「事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、医師による健康診断を行わなければならない」と定められています。
しかしながら、中には会社が行う定期健康診断の受診を労働者が拒否する場合もあります。その時、会社はどのように対応するべきかについて以下に述べていきます。
労働者が定期健康診断の受診を拒否する場合、その理由は様々あります。
例えば、
などが考えられます。
会社はまず労働者が定期健康診断の受診を拒否する場合は、なぜ拒否するのか。その理由を知る必要があります。そして例えば会社が指定した日に業務の都合上受診ができないなどの場合は、会社は別日程を用意したり、定期健康診断の実施日に合わせて対象の労働者の業務の調整を行うなどの配慮が必要となります。
また、会社が指定する医療機関ではなく、本人が指定する医療機関で健康診断の受診を希望する場合、労働安全衛生法第66条第5項の但し書きでは以下の通り定められています
「事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない」
よって、会社の実施する定期健康診断を受診しなかったとしても、労働者が労働安全衛生法令に定める項目を網羅している健康診断を自身で受診している場合は、その結果を会社に提出してもらうことで、会社はその労働者について定期健康診断を実施していることになります。
ただ、労働者の中には、定期健康診断を受診することが面倒であったり、労働者自身の健康状態を会社に知られたくないという理由で、定期健康診断の受診を拒否している場合があります。
労働安全衛生法第66条第5項には「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない」と規定されており、労働者の都合で定期健康診断を拒否することは労働者自身が労働安全衛生法違反となります。
よって会社は労働者に対して定期健康診断を受診することは労働者の義務であることを伝える必要があります。また定期健康診断の受診は会社の業務命令であることも伝えることにより、労働者に定期健康診断の受診を促していく必要があります。
定期健康診断の受診は労働者の義務であり、会社の業務命令であることから、労働者が定期健康診断の受診を拒否するということは、会社の業務命令を拒否することになります。よって、例えば就業規則に「労働者は、正当な理由なく会社が実施する定期健康診断の受診を拒否した場合は、懲戒処分に処することがある」という条文がある場合は、定期健康診断の受診を拒否する労働者に対して、就業規則に基づき懲戒処分にすることも可能です。
会社は労働者に対し安全配慮義務を負っています。労働者に対する定期健康診断の実施は安全配慮義務の一つです。
労働者に対して定期健康診断を実施しないということは、労働安全衛生法違反だけでなく、会社が安全配慮義務を果たしていないということになります。そしてこれは労働者の都合で定期健康診断の受診を拒否している場合においても同じです。
定期健康診断を受診していない労働者が例えば過重労働などによって体調の異常を起こした際は、会社は安全配慮義務違反として大きな責任を問われることになります。
安全配慮義務の観点からも、会社は労働者が定期健康診断の受診を拒否しているからといって放置するのではなく、確実に受診してもらうようにする必要があります。
労働者が健康診断の受診を拒否した場合、そのままの状態にしておくことは、労働安全衛生法違反だけでなく、安全配慮義務違反にも該当し、会社は大きなリスクを抱えることになります。よって、労働者が定期健康診断の受診を拒否した場合、まずはなぜ受診を拒否するのかという点を理解し、受診できる体制を整えていくことが重要です。それとともに、労働者の個人的な理由で定期健康診断の受診を拒否する労働者に対しては、健康診断の受診は労働者にとって義務であり、会社の業務命令である点を伝える必要があります。そしてそれでも定期健康診断の受診を拒否する場合は懲戒処分も検討せざるを得ないことも説明して、労働者全員に確実に定期健康診断を受診してもらうようにしましょう。
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