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労務管理|労基署調査 求められる書類がない場合(雇用契約書・就業規則)

2022/02/02

Q、労基署から調査を実施するとの案内が届きましたが、調査時に準備が必要な書類の中で、雇用契約書や就業規則について当社は作成しておりません。どうしたらいいでしょうか。

A、調査日までに間に合うのであればそれまでに作成することをお勧めしますが、どちらも労働者の労働条件の詳細を示す重要な書類であるため、慎重に作成することをお勧めします。

 

解説(公開日:  最終更新日:

 

労基署調査においては、企業が労働基準法、労働安全衛生法を初めとした労働法令について違反事項がないかどうかを調査されます。そしてその労働法令の取り決めの中には、書面の作成や届出義務があるものも多くあり、労基署調査時にはその書面の存否や内容の確認が行われます。今回は前回に引き続き労基署調査時に確認が行われる書面が企業にない場合の対応で、雇用契約書や就業規則がない場合にどうすればいいのか以下に解説させて頂きます。

 

1.雇用契約書がない場合

労働基準法第15条により会社は労働者を雇入れした際に、労働条件の明示が義務付けられています。そして、その労働条件の明示については、以下の事項の記載が必要となります。

 

絶対的明示事項(必ず明示しないといけない事項)

  1. ①労働契約の期間
  2. ②就業の場所及び従事すべき業務
  3. ③始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
  4. ④賃金(退職金、臨時に支払われる賃金、賞与を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切日及び支払日、昇給)
  5. ⑤退職(解雇の事由を含む
 

相対的明示事項(決まりがあれば明示する必要がある事項)

  1. ⑥退職金(労働者の範囲、金額の決定、計算、支払いの方法、支払いの時期)
  2. ⑦臨時の賃金(慶弔見舞金など)、賞与及び最低賃金額
  3. ⑧労働者に負担させるべき食費、作業用品、その他に関する事項
  4. ⑨安全及び衛生に関する事項
  5. ⑩職業訓練
  6. ⑪災害補償及び業務外の傷病扶助
  7. ⑫表彰および制裁
  8. ⑬休職
 

上記のうち、①~⑤までについては、書面もしくはFAX、電子メール、SNSなどによって明示する必要があります(ただし、④の昇給については書面である必要はありません)。それ以外は口頭での明示でも構いません。また、これらは雇用契約書という会社と労働者双方向の同意が必要な形式でなく、会社から一方的に本人に通知する形(労働条件通知書)でも構いません。

 

この労働条件の書面による明示(雇用契約書や労働条件通知書)は、労基署調査では必ずチェックされます。そして書面がない場合や、書面があったとしても、記載事項に漏れがある場合は必ず指導されます。よって会社と労働者双方が署名、押印をする「雇用契約書」か、会社から労働者に一方的に通知する「労働条件通知書」か、どちらにするかを会社で判断のうえ、記載すべき事項を網羅した書面の作成が必要となります。

 

2.就業規則がない場合

労働基準法第89条により、労働者が常時10人以上いる事業所は就業規則を作成し、労基署へ届出が必要となります。この事業所は会社全体ではなく、個々の事業所(支店や営業所、店舗などの)単位で労働者が10人以上いるかどうかで判断します。よって、事業所の労働者が9人以下であれば、就業規則の作成義務はありませんし、労基署の調査でも就業規則の有無や届出の有無について指摘されることはありません。

 

その就業規則の内容については、以下の事項の記載が必要となります。

 

絶対的必要記載事項(必ず記載しないといけない事項)

  1. ①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並び交替制の場合における就業時転換
  2. ②賃金(退職金、臨時に支払われる賃金、賞与を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切日及び支払日並びに昇給
  3. ③退職(解雇の事由を含む)
 

相対的必要記載事項(決まりがあれば記載する必要がある事項)

  1. ④退職金(労働者の範囲、金額の決定、計算、支払いの方法、支払いの時期)
  2. ⑤臨時の賃金(慶弔見舞金など)、賞与及び最低賃金額
  3. ⑥労働者に負担させるべき食費、作業用品、その他に関する事項
  4. ⑦安全及び衛生に関する事項
  5. ⑧職業訓練
  6. ⑨災害補償及び業務外の傷病扶助
  7. ⑩表彰および制裁
  8. ⑪その他全労働者に適用される事項
 

よって、労基署調査においては、労働者が10名以上の事業所について就業規則の有無、労基署への届出の有無およびその記載事項に関してチェックが入ります。よってしっかりと自社のルールに合わせ、法令で定められている事項が記載された就業規則の作成が必要となります。

 

また就業規則についてのもう一つの側面があります。就業規則は会社の人事労務に関すする全労働者共通のルールブックです。そして例えば労働者に対して以下のようなことを行いたいときは全て就業規則が根拠となります。

 
  1. ・休職制度
  2. ・懲戒処分
  3. ・人事異動、出向、転勤
  4. ・昇給、降給、昇進、降職
  5. ・教育訓練(研修)
  6. ・試用期間
  7. ・内定取り消し
  8. ・解雇
  9. ・退職事由、自然退職(行方不明時等) 等々
 

上記はいずれも労働者を雇用するうえで必要となるものばかりです。また、労基署調査とは少し異なりますが、労働者と個別トラブルになった際には、就業規則でどのように取り決めがされていたのかということが重要なポイントとなります。労基署調査対応だけであれば、労働者が9人以下の事業所については、就業規則の作成は必要ありませんし、労働者が10人以上の事業所についても、最低限の事項を網羅した就業規則の作成で事足ります。しかしながら就業規則は企業の労務管理上、非常に重要な書類です。作成義務がある事業所についてはもちろん。作成義務がない事業所についても、詳細に至るまでしっかりと内容を記載した就業規則の作成をお勧めします。

 

3.まとめ

労基署調査において、雇用契約書や就業規則については、会社の労務上のルールを定めている重要な書面です。そして、これらはただ法定の記載事項を記載するだけにとどまらず、労働者とのトラブル発生時には要となる書類でもあります。よって、雇用契約書、就業規則については、例え労基署の調査日に間に合わなかったとしても、記載事項の詳細までしっかりと検討したうえで作成を行う必要があります。

 

社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、今までに数多くの労基署対応を行った実績から、労基署の調査対応や未然予防について、あらゆる面で企業様に合わせたサポートが可能となっております。労基署対応・予防についてお悩みの場合は、お気軽に弊社の営業案内のホームページよりお申し付け下さい。百戦錬磨の社労士がご対応させて頂きます。

 
 

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