2022/08/25
A、一定の要件に該当する場合は、先払い給与については、銀行の振込手数料を従業員の負担としても、即時に労働基準法違反とはなりません。
賃金については、労働基準法第24条において以下の5原則のもとに支払を行なわなければいけないと定められています。
そして、③の賃金全額払いの原則により、賃金からは社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)料、雇用保険料、所得税、住民税、その他労働者代表との協定(賃金控除の労使協定)で定めた事項以外は控除してはいけないとなっております。
上記の、「その他労働者代表との協定(賃金控除の労使協定)」とは、労働者代表と協定を結ぶことにより、上記社会・雇用保険料や税金以外の費用についても、賃金より控除することが可能となります。しかしながら、控除することができる費用については、通達(昭和27年9月20日 基発第675号)により以下の通り定められています。
「購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の利用、社内預金、組合費等、事理明白なものについてのみ、労使の協定によって賃金から控除することを認める趣旨」となっております。
そして、賃金の5原則の「④毎月1回以上」、「⑤一定の期日」に支払われる賃金について。その際の労働者への銀行口座への振込手数料は、この「事理明白なもの」に該当しないことから、賃金からの控除はできません。
しかしながら、ご質問の先払い給与につきましては、毎月1回、一定の期日の賃金支払いに加えて、希望する労働者に対し、さらに他の期日にその時期までの既往の賃金を支払うという趣旨であることから、以下の要件に該当する場合は賃金からの控除が可能となります。
上記を満たした場合は、先払い給与について、振込手数料を賃金から控除したとしても、即時に労働基準法違反とはなりません。ただしあくまで「労働者の自由な意思に基づいた同意」が必要となります。よって先払い給与制度を利用した労働者に対し、説明や同意なしに一方的に振込手数料を控除することは、労働基準法違反となる可能性があります。
また、繰り返しになりますが、この振込手数料の控除が認められるのは先払い給与の時に限ります。よって通常の支給日の賃金については、たとえ賃金控除の労使協定が締結されていたとしても、労働基準法違反となりますので注意が必要です。
労働者の離職防止の施策の一環として、給与の先払い制度を導入する企業が増えてきていますが、その制度を利用する労働者に対して、銀行口座への振込手数料について、一方的に労働者に負担させる行為は労働基準法違反につながる可能性があります。よって、給与の先払い制度を導入する場合は、安易に振込手数料を控除するのではなく、しっかりと仕組みを整えてトラブルが起こらないようにする必要があります。
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