2024/05/22
A、雇用契約書で定めた内容が、就業規則より下回る場合、その部分については就業規則の内容が優先します。
従業員と使用者の関係を規定する労働契約と、事業所全体の労働条件を定める就業規則は、企業の労務管理において重要な役割を果たします。しかし、これら二つの間には時折矛盾が生じることがあります。特に、個別労働契約が就業規則と異なる場合、その有効性については法的な解釈が必要です。本ブログでは、法的根拠を踏まえながら、就業規則と個別労働契約の関係性について詳述します。
労働契約法および労働基準法に基づき、就業規則と労働契約にはそれぞれ異なる役割があります。労働契約は、個々の従業員と使用者の間で賃金、労働時間、その他の労働条件についての合意を形成するものです。一方、就業規則は、事業所全体の労働条件や職場規律を定めるものであり、使用者が合理的な範囲で策定し、従業員に周知させる必要があります。
労働契約法第12条では、就業規則が労働契約の内容として優先的に適用されることが規定されています。具体的には、労働契約が就業規則の基準を下回る場合、その部分は無効となり、就業規則の規定が適用されるというものです。
個別労働契約が就業規則よりも有利な労働条件を定めている場合、その契約は有効です。労働契約法第12条は、就業規則が最低基準であることを示しており、それを上回る条件を定めることは可能であると解釈されます。したがって、従業員にとって有利な条件が個別契約で合意されている場合、個別契約が優先することになります。
労働契約が就業規則の基準を下回る場合、その部分は無効となり、就業規則の規定が適用されます。また、就業規則の改定を行わずに労働条件を個別に変更した場合も同様です。
就業規則及び個別労働契約の他に、労働組合と使用者との間で締結される労働協約も、労働条件を定める重要な文書です。労働協約は、就業規則や個別労働契約よりもさらに優先されるものになります。就業規則や個別労働契約で定められた内容が個別の従業員に有利であっても不利であっても、実は協約の規定が優先されます。これは、労働協約が労働組合員全体の利益を反映しているためです。(労働組合法第16条、労働契約法第13条)
労務管理においては、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
就業規則は全従業員に対して周知されていなければなりません。
周知が不十分な場合、労働契約が優先される可能性があります。
個別労働契約が就業規則の基準を下回らないよう確認することが必要です。就業規則よりも有利な条件である場合、その契約を尊重する一方で、基準を下回る場合には無効となることを理解することが重要です。
労働条件を変更する場合、個別の同意を得たとしても就業規則を改定する必要があります。改定しない場合、就業規則の規定が適用されるため注意が必要です。
労働協約が存在する場合、その規定に従うことが求められます。労働協約と異なる内容の個別労働契約は無効となります。
就業規則と個別労働契約の関係性は、労働契約法や労働基準法に基づいて厳密に管理が必要なものとなります。就業規則は労働条件の最低基準を定めるものであり、それを下回る個別契約は無効となります。一方で、就業規則よりも有利な労働条件を定める個別契約は有効です。労務管理においては、これらの法的根拠、それぞれの優劣関係を理解し、適切に運用することが求められます。
社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、就業規則や労働条件通知書の作成にとどまらず、それらの運用も含め総合的な労務管理について相談を承っております。些細なことからでも、どうぞお気軽にご相談ください。
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