Q 政府が推し進めている「働き方改革」で実行されることの具体策が出たようです。その内容と、企業への影響を教えてください。
A 政府が推進している働き方改革とは、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手を付けていく改革と謳われています。日本の企業文化の代表的なものと言えば、正社員になれば、長時間の残業が必須で、結婚、出産、育児、介護によって家庭の比重が大きくなると、正社員というキャリアからは外れないといけない、といったことが挙げられるでしょう。
「働き方」という大きな枠組みを根本から変えていくという改革が、実際にどのように進められるのか、企業を運営していく上で気になるところです。
□ 9つのテーマ
政府の働き方改革実現会議が3月28日発表した実行計画では、働く人のから視た3つの課題から、これらを解決するために次の9つのテーマに分けて検討がされています。
【3つの課題】
1. 給与に代表される処遇の改善
2.働く時間や場所などの制約を克服
3.教育を受けることや多様な仕事の選択ができるようになるキャリアの構築
【9つのテーマ】
1.非正規雇用の処遇改善
2.賃金の引き上げと労働生産性向上
3.長時間労働の是正
4.柔軟な働き方がしやすい環境整備
5.病気の治療、子育て介護等との仕事の両立、障害者就労の推進
6.外国人材の受け入れ
7.女性・若者が活躍しやすい環境整備
8.雇用の吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人財育成、格差を固定化させない教育の充実
9.高齢者の就業促進
これらのテーマのうち、影響力の大きなものとして特に注目したいのが、法律の強制力を以って改善が進められようとしている1と3です。
□ 非正規雇用の処遇改善
非正規雇用と正規雇用という2つの働き方には、合理性のない待遇の差があり、労働生産性の向上を妨げる原因になっているとされています。
これを改善するために、推し進められているのが同一労働同一賃金の実現です。今のところはまだ案ではありますが、非正規雇用と、正規雇用とされる正社員の待遇の差で、合理・不合理を具体例で示したガイドラインが出されています。
「同一労働同一賃金ガイドライン案」平成28年12月20日付
実行計画では、非正規雇用の処遇の改善に対して、法改正の方向性として次の3点が示されました。
・労働者が司法判断を求めるための根拠規定の整備
・労働者に対する待遇にかんする説明の義務化
・行政によるADR(裁判外紛争解決手続き)の整備
これまでもパートタイマーについては、事業者に対して待遇の内容について説明が義務付けられていましたが、今回の計画では、これまで対象外であった期間契約労働者にもカバーされます。これに加えて、事業者は、正社員以外で雇ったものに対して、求めがあれば待遇差の理由についても説明することが義務付けられることになります。
□ 長時間労働の是正
長時間労働の是正として、労働基準法で、時間外労働に罰則付きの上限規制を設けるという実行計画が示されました。
【原則】
36協定における延長の限度は月45時間以内、年間360時間以内
【繁忙期の特例】※別途労使協定の締結が必要
・年間720時間以内
・単月100時間未満
・2~6か月平均80時間以内
・特例の適用は年6回まで
このうち、上限とされる、単月100時間未満と2~6か月平均80時間以内には、これまでと異なり休日労働も含みます。
これまでの時間外労働の規制では、36協定における延長の限度を厚生労働大臣の限度基準告示で、原則月45時間以内、年間360時間以内定められていました。しかし告示には、罰則による強制力がなく、上限についても特別条項という労使合意があれば上限なく時間外労働が可能になっています。
今回の計画では、この告示を法律に格上げして厳しくし、罰則による強制力を持たせています。
最も大きな課題とされる、働き方の違いによる格差と長時間労働。この部分に規制が強められることで、企業は労務管理を基から見直しが迫られます。
一方で、失業者数に対する求人数の割合を示した、有効求人倍率が全ての都道府県で1倍を超え、人手不足は深刻な問題になっています。
柔軟な働き方に対応できることが、働き手から視た魅力ある企業として選ばれるようになってきました。
求人や離職を防ぐためには、急場しのぎではない、制度や仕組みづくりが必要です。画一的なものを持ってきても当てはまらない事が往々にしてあり、自社の必要な人材、自社が向かう方向を整理することで、必要な制度と仕組みを作ることができます。
弊社では、多様な人材、多様な働き方の制度と仕組み作りを多数の実績と経験でご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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