Q ブラック企業は厚生労働省に実名公表されてしまうと伺いました。少しでも違反があるとすぐに公表されてしまうのでしょうか? 企業名公表となる基準などについて教えてください。
A ご質問にありましたとおり、5月10日、厚生労働省のホームページにブラック企業名のリストが公開されました。正確には、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」というタイトルで公表されています。
労働基準関係法令違反に係る公表事案(※PDF別窓開きます)
【
労働基準関係法令違反に係る公表事案】は、厚生労働省ホームページの「
長時間労働削減に向けた取組」というカテゴリのページに掲載されており、先週のブログ【
「働き方改革」実行計画のポイント(※別窓開きます)】でも取り上げたのうちの「
長時間労働の是正」に対する政府の本気度合いが伝わります。
このリストに掲載されたのは、
(1)労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案
(2)通達(平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」)に基づき、局長が企業の経営トップに指導し、その旨を公表した事案
の、2つです。
ご質問の中で「
少しでも違反があるとすぐに公表されてしまうのでしょうか?」というご心配がありましたが、一般的には、少しの違反ではこのリストには掲載されません。
【
(1)労働基準関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案】は、送検された事案です。労働基準監督署が調査に入って改善すべき事項や違反があった場合には、まず指導書、是正勧告書が出されます。監督官が判断することなので必ずとは言えませんが、一般的には、すぐに送検されることはほとんどありません。
調査が来たのに対応しない、是正勧告を受けたのに改善しない、虚偽の報告をする、など悪質な場合には送検されることがあります。
もし、ご相談者さまの企業に労働基準監督署の調査が入り、改善事項や違反があるとされた場合には、調査に協力し、今後、どうしていったらよいのか、監督官の方にも相談しながら、ぜひ改善を考えていきましょう。
【
(2)通達(平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」)に基づき、局長が企業の経営トップに指導し、その旨を公表した事案】は、労働局長から指導された事案です。
こちらは送検まではされていない状態でも企業名が公表されてしまうものです。しかし、「
違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業」が対象ですので、程度の高い問題が頻出している大企業に対するものと言えます。
実際にリストを見てみますと、今回
(H29.5.10)の公表分については、すべて送検事案であり、指導事案は1件もありません。
また、ほとんどが安全衛生法違反
(労働者を危険な作業に従事させる際に安全対策を取らないこと)によるものであり、36協定違反や未払いに関するものは数件となっています。
もちろんすべての違反があってよいものではありませんが、安全衛生法違反は、労働者の生命、健康を損なう事態に直結するものなので、より厳しく取り締まられています。
先ほど、労基署の調査がきても、指導、是正勧告からになるのが一般的であると記載しましたが、安全衛生法違反の場合は、すぐに送検されることも考えられます。
今回の公表企業件数は全国で334件とそれほど多いものではありませんが、これから毎月追加されていくものであり、違反のある企業にとっては他人事ではなくなってくるかもしれません。
悪い意味で、行政のお墨付きとなってしまえば、採用が困難になったり、企業間取引が控えられてしまったりと、企業経営に大きなマイナスを与えると考えられます。本業と関係のないところで信用を無くしてしまうのは、とてももったいないことです。
もし、「
まだ創業期だから」、「
それほど企業規模が大きくないから」と後回しにしている労務管理の問題があれば、ぜひ改善に取り組んでいきましょう。
社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、多数の企業様の上場支援又はコンプライアンス対策で培った事例や運用支援をもとに、実務運用を前提とした各種のご支援が可能です。
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