2017/09/06
A、管理監督者や裁量労働制の場合も就業時間管理は必要です。
いずれの場合も深夜割増の支払いは適用されますし、裁量労働制の場合は休日割増も適用されます。
また労働時間管理は賃金の支払いのみならず、従業員の健康管理の観点からも必要な使用者の義務となります。
労働時間管理は何かと注目されているテーマです。全体像を正しく把握されたうえで実務にお役立ていただければと思います。
以下に、時間管理の必要性や使用者のすべき対応を記載しましたのでご確認ください。
まず、使用者が行う労働時間管理の根拠としては、賃金台帳への記載事項であると同時にタイムカード等の保管が労働基準法上義務付けられています。(労基法第108条、109条)
これ以外にも、使用者には実務を行う上で重要な責任が課せられており、以下に2つの観点でその内容を記載します。
労働契約法第5条では使用者の責務として広く労働者の健康に配慮することが規定されています。
また労災認定に関する、「精神障害の認定基準」や「脳・心疾患の認定基準」において健康障害と労働時間の因果関係が記載されていることからも、労働時間管理は使用者の責務として不可欠のものと解されています。
『かとく(過重労働撲滅特別対策班)』の創設や長時間労働等に起因する自殺問題など社会的関心が高く、行政が指導に重点を置いている最も重要な責務の一つです。
使用者には労働の対価として労働契約に則り賃金を支払う義務があります。加えて労働基準法第37条には、時間外や深夜、休日に労働させた場合に法定以上の割増賃金を支払う旨が明記されています。
一方で必ずしも労働時間で賃金の多寡を計ることがふさわしくない、もしくは労働時間を算定する事が困難な場合には、以下に挙げた制度に沿って「実労働時間」に基づかない賃金を支給する事ができます。
ただし、これらの制度を適用できるのは、各要件を満たした一部の労働者に限定されていますので、要件を満たさない場合は未払い賃金が生じる可能性が出てきます。
※各制度の詳細は過去ブログをご参照ください
しかし上記制度を取り入れた場合も深夜割増に関しては支払義務が生じる事から、使用者としては必然的に労働時間管理を行わなければなりません。
また、先に述べた安全配慮の観点として労働時間管理を免れるものでもありません。
故意や過失に関わらず、義務を怠った運用を行い違反が発覚した場合は使用者にとってペナルティが課せられます。
特に労働者の命や健康にかかわる労災事故に発展した場合や悪質な賃金未払いなどの事案については、債務の弁済に加えメディアやSNSを通じた社会的な制裁を受ける風潮が起きています。
まず経済的な影響が大きいものとして損害賠償の支払いが考えられます。労災認定されると労災保険からの補償では賄えない部分について、労働者もしくはその家族から損害賠償を請求されるケースが多々みられます。
不幸にも命を落としてしまった場合には数千万円から億を超える賠償責任が生じる場合もあり、使用者にとっても労働者にとっても望ましくない結末が待っています。
次に信用度の低下が考えられます。労働環境に関する関心が高く、また情報伝播が早い今の社会においては「悪質な労災事故を起こした会社」というイメージが膨らみ、商取引や人材採用・離職に影響が出る場合が少なくありません。
労働時間管理の不適切を指摘された場合、通常、未払い賃金が発生する可能性は極めて高まります。
未払い賃金に関する時効は2年(退職金は5年)となっていますので、ある日突然に最大で2年分の支払命令を受ける事もあり得るわけです。
こちらも従業員数によっては数千万円から億単位の支払いとなる場合も見られ、事業継続に大きな影響を及ぼすことも見受けられます。
賃金制度や規程の不備、労働時間管理の運用の問題により、多額の隠れ債務が発生する場合がありますので、くれぐれも注意が必要です。
従業員の健康と継続的な企業経営のため、以下の対策に取り組みましょう。
安全配慮の観点からも、全ての労働者を対象に労働時間管理を実施しましょう。
※詳細は過去ブログを参照ください
隠れ債務が発生しないように、事業場外みなし労働制/裁量労働制/管理監督者/固定残業代を導入されている場合は、今一度、規程や運用のチェックをしてみてはいかがでしょうか。
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弊社では、実務上の観点から様々な労働時間管理制度のご提案を承っております。就業規則や諸規程の改正も含め総合的な対策も承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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