2020/09/11
A、これまで労災の給付の対象となる災害は、業務災害と通勤災害の2つでしたが、今回の改正によって、「複数業務要因災害」というものが加わりました。また、複数事業労働者の場合には、保険給付の支給にあたって各事業場の賃金額を合算して支給されることとなりました。 令和2年9月1日以降に発生した労災については、すべての勤務先の賃金を元に給付額が決定され、すべての勤務先の負荷が総合的に評価され、労災認定されるようになります。
労災保険とは、業務災害または通勤災害によって、けがをした労働者や病気になった労働者、被災労働者が死亡した場合の遺族を保護するための制度です。おもな給付として、治療の現物給付と所得補償のための現金給付の2つがあります。
今回の改正の影響を受けるのは、労災(業務災害・通勤災害)でけがや病気となったとき、死亡した時点で、複数の会社と契約して働いていた方(労災保険法では、「事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者」と定義されています。)であり、これに該当する方を「複数事業労働者」と言います。
複数事業労働者には、特別加入されている方(労働者として働きつつ特別加入している方、複数の特別加入をしている方。)も該当します。また、けがや病気になったときは、1つの事業所でのみ働いている場合でも、2つ以上の事業場で働いていたときに、そのけがや病気の原因や要因(長時間労働や強いストレスなど)があった場合には、改正制度の対象となりえます。
今回の主な改正内容は、複数の事業主に雇用される労働者の場合に、
非災害発生事業場の賃金額も合算して労災保険給付を算定
複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行う
の2つです。
これまでは、たとえば就業先A(賃金20万円)と就業先B(賃金15万円)という2つの事業場で勤務している方が、就業先Bの業務が原因でけがをしたために、就業先Aでも休業しなければならなくなった場合、これまでは、Bでの賃金15万円のみを元にして算定した「給付基礎日額」等により給付額を決定していました。
今回の改正によって、複数の事業場で働いている場合等については、すべての事業場等の賃金額を合算した額を元にして保険給付額が算定されるようになります。例の場合には、就業先Aと就業先Bの賃金を合計した35万円を元にして給付額が算定されることとなります。
これまでは、たとえば就業先Aと就業先Bという2つの事業場で勤務している方が、就業先Aで週40時間、就業先Bで週25時間の業務に従事しており、脳・心臓疾患を発症した場合、1つの事業場のみの業務上の負荷(労働時間やストレス等)を評価して、労災認定の判断をしていたため、A・Bともに、業務と発症との関連性が強いとは評価されず、労災認定されませんでした(※)。
今回の改正によって、脳・心臓疾患や精神障害などの対象疾病について、1つの事業場のみの負荷では業務災害として労災認定されない場合は、複数の事業場の業務上の負荷を総合的に評価して、複数業務要因災害として労災認定できるかどうかを判断するようになります。
発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働(※)が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる。
労災保険には、事業場の労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内で労災保険率または労災保険料額を増額させるメリット制という制度がありますが、今回の制度改正については、メリット制には影響しません。
今回の法改正により、労災保険給付の申請様式が変更となりました。複数事業就業者でない方の労災についても新しい様式を使いますのでご注意ください。
弊社では、日常的なちょっとしたご相談へのお答えから、労務問題やコンプライアンス対策まで、幅広く承っています。お困りのことがありましたらお気軽に当グループ社会保険労務士までご相談ください。
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