2022/10/19
A、企業規模が大きくなるにつれて退職金制度を導入する中小企業が増えています。厚生労働省の調べでは30人~99人の企業では77%が何かしらの退職金制度を導入しているそうです。退職金制度の内容は各社各様ですが、優秀な人材に長く活躍してもらえるような退職金制度の設計を進めることは、今後の人口減の日本の中小企業には必須と考えます。
退職金制度を設計する場合、3つの視点で検討する必要があります。1つは算出方法、1つは支払方法、そして1つは積立方法です。それぞれ以下に分類します。
退職時の最終基本給に連動させて算出する | ||
基本給とは異なる方法で算出する | ||
退職時に一括で支給する | ||
期間を定めて年金方式で支給する | ||
毎年の課税済み後の内部留保金を積み立てる | ||
生命保険や中小企業退職金共済などを活用して節税をしながら積み立てる |
退職金制度は、企業の規模や求める人材によって内容が異なると考えます。いまの企業規模だけでなく、今後どのような企業になっていくのかも含めて、中長期的な視野をもって制度設計すべきです。
ただし、すべての退職金制度を網羅的に解説するのは紙面の都合上難しいので、今回は最近の制度設計の実績のなかで主流となっている制度を中心に解説してまいります。
退職金の算出方法は大きく分けて「基本給連動方式」と「基本給非連動方式」の2種類がありますが、最近の流行りは基本給非連動タイプの退職金制度です。
「基本給連動方式」は、退職時の最終基本給に勤続年数に応じた係数を掛け合わせるという方法ですが、これのデメリットはその従業員の貢献度が退職金に反映されないという点です。
そのため、従業員の毎年の貢献度が退職金に反映できるように、毎年の貢献を「ポイント」にして、退職時にその累積したポイントを合計し、それに基づいて退職金を支給するという手法が現在は主流となっています。
確かに、ポイント制退職金制度を採用したいという意見が大半を占めますが、その積み上げ方法はまたいくつかに分かれます。まず、退職金制度をなぜ導入するのかを考えなければなりません。もともと、優秀な人材を確保し、従業員が安心して長年働いてもらえるように制度を導入しようと思ったはずです。
そうであれば、その目的を果たすための退職金制度を構築しなければなりません。そのためには、いくつかの視点が必要になります。1つはポイントの積み上げにおいて、それぞれの時点での等級や役職に影響を受けるかどうかという点です。この部分を退職金制度に反映しないとなると、みんな一律で貢献に応じたポイントを付与されて退職金を算出することになりますが、やはり新入社員で貢献した者のポイントと、管理職で貢献した者のポイントは、異なっているべきと考えます。
1つは勤続年数や退職年齢と退職金制度との関係です。長く働いた人のほうが退職金を多くもらえるのは当然ですが、なるべく長く働いてもらいたいのであれば、勤続年数の積み上げとともにポイントが加算されるような制度を導入したいです。逆に、IT業界などどこかのタイミングで従業員のスキルが陳腐化していく業界であれば、退職金制度に勤続年数を連動させるのが難しくなったりもします。
また、年齢についても、定年年齢に近づくにつれて退職金の存在を気にする人は多いものの、人材不足の解消に向けて再雇用契約に応じてくれた人には退職金の追加支給を検討したり、あるいは大企業を退職した人を対象に再雇用を進める企業の場合は、高齢者の退職金制度をどう設計するかなど、優秀な人材の囲い込みに退職金制度を用いることは大いに検討すべきと考えます。
90年代後半以降、日本では終身雇用制や年功序列制は崩れ、税制においても適格退職金制度の掛金の損金算入制度がなくなり、企業が定年まで従業員を守る姿勢は後退しました。
長期的視野に立つと、企業が求める人材は「自分がやりたいことを好きなようにやる」という従業員ではなく、「自分の人生をこの会社に賭ける」という従業員ではないでようか。昨今の厳しい人材市場において採用を進めるにしても、本当に採用すべきは「能力を身につけたら好き勝手に転職します」という者ではないはずです。
そうであれば、企業はやはり、新たに優秀な社員に来てもらうことを第一義にするよりも、入社してくれた従業員に、将来に向かって安心して働いてもらえるような退職金制度の設計を心がけるべきと考えます。
私どもガルベラ・パートナーズグループは、税理士・公認会計士・社会保険労務士・行政書士によるワンストップサービスを行うコンサルティングファームです。
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