2017/10/11
A、労働者派遣法(以下、派遣法)による「労働契約申込みみなし制度」は、派遣先企業が特定の違法行為を行った場合に、受入れている派遣労働者や請負労働者が希望すれば派遣先との雇用契約が成立する制度です。
違法行為が雇入れ義務に直結するため、人事労務管理の面で非常に影響が大きな問題ですが、正しく制度を理解することで適正な派遣活用を継続することができます。
以下、制度の概要から留意すべきポイントなどを解説いたします。
「労働契約申込みみなし制度」は、派遣法違反の是正により、派遣労働者や請負労働者が職場を失うことのないように平成24年改正で制定され、平成27年に施行されました。
派遣先企業が特定の違法行為を行った場合に、雇入れ義務というペナルティを課すことで法規制の実効性を確保すると同時に労働者の雇用も担保された制度設計となっています。
これまで、派遣労働者が派遣先企業との雇用関係の成立を求めた裁判では、ことごとくその請求は棄却されてきました。一方こうした現状を法規制で保護しようとしたことが、本制度の導入背景となっています。
派遣先が以下に掲げる特定の違法行為を行った場合、対象となる派遣労働者や請負労働者に対して、派遣先企業が労働契約を申し込んだものとみなされる制度です。
違法行為を行った時点で労働契約を申し込んだものとみなされる為、複数の派遣労働者がいる場合は会社として非常に大きな雇用リスクを抱えることになります。
人事労務管理の体制が整っていない企業であれば、雇入れ後の対応もおぼつかず、さらなる労務トラブルへ発展する事も容易に想定されます。
では、派遣先企業はどのような労働条件を申し込んだとみなされるのでしょうか。
通達13号では、違法行為を行った時点での、派遣労働者と派遣元会社との間で締結されている労働条件と同一と解されています。
また、その労働条件とは、派遣元会社の就業規則に定めるものを含むと解されており、労務管理上の煩雑さも生じることとなります。
違法行為によりみなされた労働契約の申込は、当該申込の日から1年間は撤回することはできません。
逆に、その1年の間に派遣労働者から承諾の意思表示がない場合は、当該申込は失効することとなります。(派遣法40条の6)
特定の違法行為により効力が発生する「労働契約申込みなし制度」ですが善意無過失の場合は適用除外となる場合があります。
違法行為を行っていると知ることができずに、また違法事実の認識がないことに過失がなかったのであれば免責されることもあるわけです。
派遣法の認識不足や確認すべきことを怠ったなどは、場合善意無過失とは認められませんので注意が必要です。日ごろから違法行為に該当していないかの確認は心がけましょう。
それでは「労働契約申込みみなし制度」の対象とならないためにはどうすれば良いのでしょうか。
禁止業務の受入れ、無許可派遣元からの受入れ、期間制限を超えての受入れについては、派遣開始時および定期的な確認が必要不可欠です。比較的、明確に判別がつく項目だと思いますので、煩雑かもしれませんが毎月、毎年度など、一定の基準日を設けての確認をお勧めします。
一方、以下の場合については、違法行為と判断される基準がやや不明確となりますので、一層のご留意が必要です。
「期間制限を超えての受入れ(事業所単位)」について、過半数代表者の選出手続に瑕疵がある場合
【対応】
事業所単位の受入期限を延長する際は、過半数労働組合もしくは過半数労働者からの意見徴収が必要となります。
期間の管理や延長手続きはもれなく行っていても、意見徴収を行う過半数労働者の選出手続に瑕疵がある場合は期間延長そのものが無効となる場合があります。過半数労働者は選挙や挙手などによる民主的方法により選出される必要がありますので、この点も再確認を行うべきポイントとなります。
意見徴収が無効→制限期間延長手続き不備→制限期間の延長無効→期間制限を超えての受入れ→労働契約申込みみなしの適用 という流れです
「偽装請負としての受入れ」について、厳格な請負体制の確立が必要となります。
【対応】
派遣法の規制強化にともない、選択肢として請負化への流れもささやかれています。一方、すでにご承知のとおり、偽装請負は法律のグレーゾーンとして、過去に多くの指導が行われていますので、今後はより適切な運用が求められてきます。
請負という形態をとる場合は、昭和61年告示37号の基準にそった適切な運用を行う必要があります。
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