GERBERA PARTNERSブログ

中国|企業内ルールと就業規則の制定・公示における法的リスクと予防策

2018/11/07

Q、中国に子会社があるのですが、最近人員も増えてきたので、労務関連のルールをしっかりと社内に浸透させなければいけないと思っています。中国での就業規則の作成や社内ルールの取り決めにあたって、気を付けなければならないことを教えてください。


 
A、中国でも、日本と同様に企業内でルールを制定し、従業員の雇用にあたっては就業規則を作成しなければなりませんが、これらのルール制定や就業規則作成、そしてその公示にあたっては、さまざまなリスクが潜んでいるため注意が必要です。中国における企業内ルールの制定と就業規則の作成における法的リスクとその予防対策についてご案内させていただきます。
 

解説(公開日:2018/11/07  最終更新日:2018/11/23 )

1.企業内ルール及び就業規則に関する法律規定

『中華人民共和国労働法』のなかで、三つの関連規定を挙げます。

 

第四条
使用者は、法に基づいて就業規則制度を確立及び整備し、労働者が労働権利を享受し、労働義務を履行することを保障しなければならない
第二十五条
労働者が労働規律あるいは使用者の規則制度に著しく違反した場合、使用者はいつでも労働者との労働契約を解除することができ、かつ経済補償金を支払う必要はない
第八十九条
使用者が制定した就業規則制度が法律法規の規定に違反している場合は、労働行政部門が警告を与え、是正を命じる。労働者に損害をもたらした場合は、賠償責任を負わなければならない

 

これらからわかるように、使用者に内部規定がなかったり、あるいは規定内容が明確でなかった場合、労働争議が生じたときには、根拠がないか、あるいは根拠が不明確なために、企業が守勢・劣勢に陥ってしまうことが多々あります。

 

規範的な「企業内ルール」と合法的な「就業規則」を制定することは、国家・法律から与えられた企業の権利であり、義務でもあります。そして同時に、企業の管理にとっても必ず必要なものといえます

 

2001年3月に施行された『最高人民法院の労働争議案件審理に適用する法律の若干の問題に関する解釈』第十九条では、以下のように規定されています。

使用者が『労働法』第四条(※)の規定に基づいて、民主的手続きを通して制定した規則制度が、国の法律、行政法規及び政策規定に違反せず、かつ、すでに労働者に公示したものは人民法院の労働争議案件審理の根拠とすることができる。

※中華人民共和国労働法 第四条

「雇用側の組織は法に従い規則制度を確立し完備させ、労働者の労働権利の享有と労働の義務の履行を保障すべきである。」

 

この第十九条の規定は、企業内ルールの有効性について、民主的手続きにより制定されたものであること、内容が合法であること、労働者に公示していることの、三つの基準を確定しており、この三つの要件のどれかが欠けるとなると、規則制度自体が無効になってしまうので注意が必要です。

2. 企業内ルール及び従業員就業規則の法的リスクと予防措置

中国の労働争議のなかでは、労働者が使用者の規則制度を著しく違反したことによって引き起こされる割合が非常に大きいのが特徴です。

浙江省法院(裁判所)の2016年データ分析結果によると、「規則制度の重大違反」によって引き起こされる「賠償金争議」案件数の割合が47%に達しており、従業員サイドの違反にも関わらず、最終的に使用者の敗訴で終わることも多く、その敗訴率は40%に達しています。

敗訴後、使用者が労働者に支払わなければならない賠償金は平均で61,700元で、使用者は労働者の「規則制度の重大違反」をもって労働契約を解除するリスクが非常に大きいといえます。そして企業は、これらの法的リスクの予防を強化すべき立場にあります。

 

(1)就業規則の制定主体に関する法的リスク

就業規則は誰が制定するのかといえば、使用者である企業が制定するものであり、その制定された就業規則に記載されている制度は、企業の名のもとに公布され、実施されるべきものとなります。

使用者の内部管理部門が就業規則の制定活動に関与することはもちろん可能なのですが、就業規則の制定主体としての資格は、実はないということに留意しなければなりません。すなわち、実務上においては、企業の内部管理部門が就業規則制度を制定し、就業規則制度を公布するという状況が往々にしてありえるかと思いますが、制定主体の不適格によって就業規則制度が法的効力を有さず、従業員に対する拘束力を持たない可能性があるため、交付時の主体がどこにあるのかは、意外にも重要となります。

防措置として、企業の内部管理部門は、業務上の必要性から、就業規則を制定するに際して、その規則制度の効力を保障するために、企業名で公布し実施しておくという形が適しています。

 

(2)制定手続き上の法的リスク

以下に、二つの法律法規を列挙します。

『中華人民共和国会社法』第十八条第三項(2006年1月1日改正)

会社が再編及び経営に関する重大問題を検討し決定する場合、または重要な規則制度を制定する場合は、会社の工会の意見を聴取し、かつ、従業員代表大会またはその他の形式を通じて従業員の意見及び提案を聴取しなければならない

 

『中華人民共和国労働契約法』第四条(2008年1月1日実施)

使用者は法により就業規則制度を確立及び整備し、労働者が労働権利を享受し、労働義務を履行することを保障しなければならない。使用者が労働報酬、勤務時間、休憩・休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員研修、労働紀律及び労働ノルマ管理等についての労働者の切実な利益に直接関わる規則制度または重要事項を制定、改正または決定する場合は、従業員代表大会または従業員全体で討議し、方案及び意見を提出し、工会または従業員代表と平等な協議を経て確定しなければならない。規則制度及び重要事項決定の実施過程で、工会または従業員は不適切であると考える場合、使用者にそれを提起し、協議によって改正・改善する権利を有する。使用者は、労働者の切実な利益に直接関わる規則制度及び重要事項決定を、公示するかまたは労働者に告知しなければならない。

 

これらの法律規定に適法に対応するための予防措置として、企業は就業規則の具体的な制定手続きにおいて、以下の三点に留意しなければなりません。

  1. ① 従業員代表大会または従業員全体で討議し、方案及び意見を提出し、工会または従業員代表と平等な協議を経て確定すること
  2. ② 公示または労働者に告知すること
  3. ③ 争議の発生時に証明できないことを避けるために、使用者は労働報酬、勤務時間、休憩・休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員研修、労働紀律及び労働ノルマ管理等についての労働者の切実な利益に直接関わる規則制度を制定するときは、従業員代表大会または従業員全体で討議した書面による証拠を保存しておくこと

 

(3)公示に関する法的リスク

企業内ルール及び従業員就業規則は、労働者に公示してこそ労働者に対して拘束力を持つものといえます。

労働者はよく規則制度の内容を知らないことを理由に「規則制度が公示されていない」と主張しますが、実は使用者もまた、公示した証拠を提供できないがために、不利な結果を招いてしまうことがあります。

予防措置として、必ず関連公示を行うようにしてください。なお、公示は通常、以下のいずれかの方法を採用することになります。

  1. ① 企業のウェブサイトで公布する
  2. ② 電子メールで通知する
  3. ③ 掲示板に貼り付ける
  4. ④ 就業規則を配布する(受取記録を保存する)
  5. ⑤ 規則制度の研修を行う(研修の参加記録を保存する)
  6. ⑥ 記録制度の試験を行う(試験解答用紙を保存する)

 

現段階で比較的有効な方法は、企業内ルールを就業規則に記入し、従業員に受取サインをしてもらうこと、あるいは従業員に対する規則制度の研修を行い、受け取りと閲読のサインをしてもらうことなどが挙げられます。

 

(4)内容が適法でないことの法的リスク

以下に、二つの法律法規を列挙します。

 

『中華人民共和国労働法』第八十九条

使用者が制定した就業規則制度が法律法規の規定に違反している場合は、労働行政部門が警告を与え、是正を命じる。労働者に損害をもたらした場合は、賠償責任を負わなければならない

 

『中華人民共和国労働契約法』第八十条

使用者が制定した、労働者の切実な利益に直接関わる就業規則制度が法律、法規の規定に違反し、労働者に損害をもたらした場合は、賠償責任を負わなければならない

 

これらの法律に対抗するための予防措置として、企業が規則制度を制定するときは、制定主体が適格で、内容も適法であり、かつ、手続きが完備され、公序良俗に違反しないようにしなければなりません。

2006年7月10日公布・施行の『労働争議案件審理に適用する法律の若干の問題に関する解釈(二)』第十六条では、「使用者が制定した内部規則制度が集団契約あるいは労働契約の約定内容と一致しないときに労働者が契約の約定の優先適用を求めたときは、人民法院はそれを支持する」と規定しています。

したがって、企業内ルールは、労働契約及び集団契約に抵触しないように注意しなければなりません。また、企業は常に現行の法律及び法改正並びに新しい法律の制定に注目し、適法ではない内容を修正するように心掛けなければなりません。

 

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