2022/06/08
A、インドにおける従業員に対する社会保障制度には、従業員PF積立基金 (EPF)に加え、低所得者が対象となる従業員年金基金 (EPS)などがあります。インド国内で規定の規模以上の企業・組織はこれらの制度に加入する義務があります。ただし、一定の条件を満たす外国人は加入が免除されます。
インドにおける従業員の社会保障制度は以下の制度があります。
これら基金への加入が義務付けられているのは、20名以上(ESIは一部の州・地域を除き10名以上)を正規雇用している企業・組織(支店・駐在員事務所などを含む)です。これらのうち、EPSと、EDLI(死亡一時金の支給)は月額給与15000ルピーまで、ESI(被保険者及び家族の医療費等の補助)は21000ルピーまでの低額所得者のみ対象となっています。
日本人駐在員は、EPFのみ加入の対象となりますが、日本政府とインド政府間の社会保障協定(Social Security Agreement : SSA)により、日本における社会保険加入証明書(Certificate of Coverage : CoC)をインド当局に提出することによりインドでの社会保障加入が免除されます。
免除の対象となるのは、インドへの赴任期間が5年以下の見込みである場合です。赴任期間が当初の予定と異なり5年を超えた場合には、両国の関係当局が個別に判断の上、引き続き日本の年金制度に加入するのか、インドの年金制度に加入するのか決定されます。
インドへ赴任する時点で、赴任期間が5年を超える見込みである場合には、着任した日からインドの年金制度に加入することが義務付けられています。
なお、日本で就労するインド人も、本国(インド) からCoCを取得している場合は、日本の社会保障への加入が免除されます。
事例としてはさほど多くありませんが、上記の加入免除の対象外となり、インドの社会保障EPFに加入した場合の留意点は下記のとおりです。
従業員本人が基本給の12%を納付し、雇用主も従業員本人納付額と同額を納付します。日本国内で支払われる給与も基本給に算入し計算する必要がありますので注意が必要です。なお、月給が15000ルピーまでの従業員に関しては、雇用主の納入する12%のうち8.33%がEPSに、3.67%がEPFに配分されます。
インドにおける雇用終了時に、保険料に利息を加えた全額の払戻しを受けることとなっています。EPFの請求については、日本の年金事務所で申請することができ、日本国内に在住している人は、送金規制を受けることなく日本またはインドの銀行口座において受領することができます。
しかしながら、現状では、書類の細かな不備などで、申請書が却下され再申請を求められたりするケースが少なからず見られます。日本から申請した場合、複数回のやり取りを繰り返すことで手続きが長期化してしまうことも懸念されます。インド国内で申請した場合でも、日本の銀行口座に払戻金の送金を求める場合は求められる書類も多くなり、手続き完了までに1年間以上を要した事例もあります。総じて、インドで申請しインド国内の銀行口座で払戻金を受領する方法が比較的スムーズですので、EPF払戻が完了するまでインドの銀行口座を保持して手続きを行うことを検討してもよいでしょう。
インド国内での払戻申請は、関連当局のウェブサイトから行います。アーダール番号(インドにおける個人登録番号)と紐づけられたUAN(Universal Account Number)を登録し、オンライン申請書に指定の資料を付して申請することができます。保険料、KYC等についてコンプライアンスが適切に履行されている限り、申請後1か月以内に払戻されることとなっています。
納入した保険料などに不備があった場合、不備を修正した上で再申請する必要があります。当局とのやり取りには長い時間を要し、これを繰り返すとなるとなかなか払戻しが受けられません。短期間で手続きを完了するためにも、申請前に、帰任者のインド在住期間、CoCの取得・提出状況、EPFのウェブサイトのUANアカウントのKYCアップデートと雇用者承認、保険料の算定基礎給与などをしっかりと確認して不備の無いように準備することが肝要です。
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