2021/08/30
A、様々な要件を満たした場合はキャリアアップ助成金の中の「賃金規定等改定コース」が受給できる可能性あります。
2021年度の最低賃金額の改定が発表され、全国平均で28円を目安に上昇する予定です。この最低賃金額の上昇に伴い、有期雇用労働者の賃金を増額させた場合、要件を満たせばキャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」を受給できる可能性があります。ここではこの賃金規定等改定コースの受給のための様々な要件についてご説明致します。また、最低賃金額の上昇と関連して本助成金を受給するための注意点についてもご説明致します。(本記事は2021年8月30日時点の情報です)
この賃金規定等改定コースを含め、キャリアアップ助成金の受給のためには、まずはキャリアアップ計画書を作成し、労働局へ届出することが必要です。賃金規定等改定コースの受給の場合に必要なことととして、キャリアアップ計画書の作成において「キャリアアップ計画期間中に講じる措置の項目」で「3 賃金規定等改定コース」に〇をつけて、実施予定を記入します。そして「対象者」「目標」「目標を達成するために講じる措置」「キャリアアップ計画全体の流れ」を記載する必要があります。
キャリアアップ計画書を労働局へ届出を行った後、有期雇用労働者に適用される賃金規程の改定が必要です。その改定は全てまたは一部の有期雇用労働者に対し、基本給を2%以上増額改定する必要があります。
対象の有期雇用労働者の賃金を、改定後の賃金規程に基づき基本給を2%以上増額させます。その際に例えば基本給は増額させるが、その他諸手当を減額した場合は助成金の支給対象外となりますので注意が必要です。
助成金対象の労働者は以下のとおりです。
賃金を増額した日後6か月分の賃金を支給した日の翌日から2ヶ月以内に支給申請をする必要があります。
具体的な支給申請時期の例は以下の通りです。
例)末締め、翌月15日払いの企業の場合
翌年4月16日から6月15日まで
翌年5月16日から7月15日まで
支給金額は以下の通りです。
※()内の金額は生産性要件を満たす事業所の場合です。
尚、中小企業の場合、増額の金額によって以下の加算があります。
最低賃金額の改定によって、新しい最低賃金額を下回ってしまう有期雇用労働者に対し、最低賃金の発効日(適用日)に賃金の改定を行った場合は、本助成金では新しい最低賃金額より2%以上賃金が増額されているかどうかが比較となります。よって、実際の賃金額が2%以上増額していたとしても、新しい最低賃金額より2%以上増額していなければ、本助成金の対象外となります。しかしながら、適用日より前(極論、適用日の前日まで)に賃金の改定を行った場合は、現状の賃金額から2%上昇していれば本助成金の対象となります。
(新しい最低賃金額より2%以上増額している必要はありません)
よって、例えば最低賃金額の改定によって、新しい最低賃金額を下回る有期雇用労働者がいる場合、その労働者は新しい最低賃金額以上の賃金になるように必ず増額をする必要があります。必ず賃金を増額させる必要があるならば、例えば本助成金を活用し、新しい最低賃金額の適用日より前に増額の改定を行うことにより、助成金の受給を検討されるもの一つの方法であると考えます。
ただし、「最低賃金額の改定により、新しい最低賃金額を下回る有期雇用労働者のみ増額を行う」とした場合は、「一部の有期雇用労働者の賃金増額」とは認められず、助成金を受給できません。よって、現状、新しい最低賃金額以上の賃金を支払っている有期雇用労働者も含め、全ての有期雇用労働者の増額を行うか、事業所や職種単位で区切り、その単位の全ての有期雇用労働者の賃金を増額することが必要となります。
最低賃金額の改定時に伴い、有期雇用労働者の賃金を増額させようというタイミングで、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの利用を受給する方法は比較的容易に行いやすいです。今回の説明以外にも細かな注意点は多くあり、その注意点を抑えないと助成金は受給できませんが、最低賃金額の改定に伴って有期雇用労働者の賃金を増額させる企業様は、一度本助成金の受給を検討されてみてはいかがでしょうか。
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