2019/06/21
平成30年に厚生労働省が公表した「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、総合労働相談は10年連続100万件超ありました。そのうち、民事上の個別労働紛争相談件数 25万3,005件のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が72,067件あり、「いじめ・嫌がらせ」は6年連続トップでした。
【参考】「「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」
(厚生労働省プレスリリース)
また、平成28年に厚生労働省が公表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によれば、企業における労働相談窓口において最も相談の多いテーマは、パワーハラスメントであり32.4%でした。さらに、過去3年間に1件以上のパワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は36.3%であり、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員も32.5%いるという結果が出ており、3社に1社は社内でのパワーハラスメントを認識していること、パワーハラスメントが起きれば問題として表出してくることが分かります。
【参考】「「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」
(厚生労働省プレスリリース)
パワーハラスメントが社会的に大きな問題となる一方で、これまで、企業が、セクシュアルハラスメント(男女雇用機会均等法)やマタニティハラスメント(育児・介護休業法、男女雇用機会均等法)を防止するための対策を取らなければならないことについては、法律の根拠がありましたが、パワーハラスメントの防止には法律による根拠がありませんでした。
パワーハラスメントの防止に関しては、2019年5月29日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」として、参議院で可決成立し、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)の一部改正により、企業に義務付けられることとなりました。また、法案の中でパワーハラスメントについて「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」という定義づけがなされました。
法律が改正された後、企業が行わなければならない内容は、次のことです。
(1) 雇用管理上の措置義務
事業主は、パワーハラスメントによって労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(2) 不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者がパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントに関する言動に起因する問題に関する相談を行ったこと等を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
具体的に、事業主が講ずべき措置等については、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聞いて指針を定めることとされていますが、前例となるセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントからは、以下のようなものとなるのではないかと考えられます。
1 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
パワーハラスメントの内容、「パワーハラスメントが起きてはならない」旨を就業規則等の規定や文書等に記載して周知・啓発する
2 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
パワーハラスメントの被害を受けた者や目撃した者などが相談しやすい相談窓口を社内に設ける
3 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応など
パワーハラスメントの相談があったとき、すみやかに事実確認し、被害者への配慮、行為者への処分等の措置を行い、改めて職場全体に対して再発防止のための措置を行う
4 併せて講ずべき措置
相談者・行為者等のプライバシー保護のための措置を講じ、相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発する
【参考】「職場でつらい思い、していませんか? 職場でのあらゆるハラスメントは許されません!」
(厚生労働省作成のハラスメント防止のためのパンフレット)
また、ハラスメントに関する紛争が起きたときには、都道府県労働局長は、当事者に対し必要な助言等をすることができるとされており、厚生労働大臣は雇用管理上の措置義務や不利益取扱いの禁止に違反している事業主が勧告に従わなかったときは、その旨を公表できることとなっています。
法律の施行期日は、公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされており、大企業では、2020年4月からパワーハラスメント防止措置が義務化される見込みです。中小事業主については、公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日までは努力義務とされます。
しかし、冒頭に記載したように、現在、パワーハラスメントによるトラブルは、企業で多発しています。このことから、法律の改正を待たず、パワーハラスメントを起こさないための対策を取ることをお勧めします。
パワーハラスメントにはどのような類型があるのか、どのような対策を取ればよいのかなどが、対策のマニュアルや従業員教育の資料(パワーポイントや動画)を含めて、以下の厚生労働省のページで提供されています。ぜひご参考にされてみてください。
【ご参考】「職場のパワーハラスメントについて」
(厚生労働省ホームページ
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