GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|【アフターコロナ】災害や感染症に対応するための就業規則改定ポイント

2020/05/27

Q、新型コロナウイルスへの対応で、会社の労務管理に不備があるように感じました。取り急ぎ、就業規則の見直しを進めたいと考えていますが、どのような点を確認すべきでしょうか。

 

A、将来的に、災害や感染症により出社勤務が困難になる状況の再発はありえると考えます。今回の経験や知見をまとめ、休業や賃金の考え方についての就業規則の規定を、緊急時にも現実的に使いやすいように見直しすることをお勧めいたします。

 

解説(公開日:2020/05/27 最終更新日:2020/07/22)

 

今般のコロナ禍は、従業員の安全や健康の問題、休業中の給与保証といった問題だけではなく、企業が抱えている人事労務上の課題が露わになる機会であったと思われます。今後の状況は企業にとっても余談を許さない状況にあり、第二波の到来や経済の不安定化が予想されるだけではなく、不慮の災害や不可抗力的事象の再来に備えることが必要と考えます。

 

企業の事業継続計画の見直しが迫られていますが、人事労務上の検討の第一歩として就業規則の見直しポイントをいくつかご紹介させていただきたいと思います。

 

【論点1】「使用者の責めに帰すべき休業を命じるための根拠規定は明確に記載されているか?

 

今般のコロナ禍においては、「そもそも会社に休業を命じる権限があるのか?」という点が議論になりました。労働基準法第26条は、休業時の最低保障(休業手当)について定めているだけですので、そもそも休業を命じるための根拠規定は、就業規則に明確に記載しておくべきと思われます。就業規則に記載し、周知されていることで、従業員もそういう状況があり得るということを認識することができます。

 

条文例(会社都合による休業)

  1. 1 経営上又は業務上の必要があるときは、会社は従業員に対し休業を命ずることができる。
  2. 2 前項の休業に代えて会社の裁量により在宅勤務を命ずる場合がある。ただし、会社が定める一定の要件を満たし、業務や職責等に照らし在宅勤務が実施可能と認められる者に限る。
 

【論点2】休業時の賃金の基準は明確に記載されているか?

個々の状況について、そもそも「使用者の責めに帰すべき休業」と言えるか否かという点は、今般のコロナ禍でも大いに議論になったところであり、単純な切り分けはできないところですが、企業実務としては、いくつかの場合分けで賃金の支給基準を整理しておくことが必要です。

 

条文例(賃金の取扱い)

休業時等の給与の取扱いは次のとおりとする。

 

①会社の経営上の理由その他会社の都合による場合

原則として、民法第536条第2項を排除し労働基準法第26条の休業手当(平均賃金の6割)を支給する。ただし、会社の判断によりそれ以上の金額を支給する場合がある。

 

②不可抗力等で、会社の責めに帰さない事由による場合

原則として無給とする。ただし会社の判断により、前号に準じて支給する場合がある。

 

③在宅勤務等を命じた場合

原則として通常の給与を支給する。労働条件が変更になった場合は、変更後の労働条件による。

 

【論点3】感染疑義者に対する就業拒否の根拠となる条文は整備されているか?

今般のコロナ禍においては、感染疑義者が発覚を恐れ、会社に秘して勤務を継続したことにより感染拡大した事例があったようです。確かに、感染疑義者とされる者の行動制限することについては多くの法的問題があり、現実的には企業としても「強く要請」すること以上の対応を取ることはできないと考えられます。

 

ただし、現実問題として非常時に権利を巡る議論をしている暇はなく、企業としては、安全配慮義務の観点から、一定の基準を設けて、自社の従業員や施設の安全確保の観点から出退勤の管理をする必要性に迫られます。就業規則にそうした基準を明示していくことは必要と考えます。

 

条文例(就業禁止)

1 会社は、安全配慮義務の観点から、次に該当する者については、その就業を禁止する。なお、状況については、会社に直ちに報告をしなければならない。

①本人及び同居の家族が、法定伝染病その他伝染性の疾病(インフルエンザ等)にかかった恐れがある者

②勤務により従業員自身の病気や体調が悪化する恐れがある者

 

2 会社は、安全配慮義務の観点から、次に該当する者については、その就業を禁止することがある。

①従業員の心身の状況が勤務に適しない又は安全に勤務することが困難であると判断したとき。

②従業員に対して医師から、勤務を控えるべき旨の指示があったとき。

③従業員に対して、公の機関から外出禁止又は外出自粛の要請があったとき。

 

3 前二項の規定により就業を禁止された期間は無給とする。ただし、会社の判断により、特別休暇を付与し、又は在宅での軽易な業務を命ずることができる。

 

【論点4】通勤手当の支給要否の問題

今般のコロナ禍においては、緊急事態宣言を受けて、なし崩し的に全社的に在宅勤務に移行した結果、「通勤手当」の対応(不支給に切り替えるタイミング、既払金額の返還など)に苦慮したという事例が多かったようです。

 

極端な事例としては、コロナ禍のタイミングで、たまたま6か月定期代の支給月になってしったところ、そもそも支給の必要性が薄いと思われる上に、企業としてのキャッシュフローが悪化した等の事例が確認されています。

 

常識論として考えれば、現実問題として実際に通勤が発生していない上に、1か月先も予測できないような状態においては不支給にしてもかまわないだとうと思いつつも、給与規程という厳格なルールを会社の一方的判断で裁量変更することに抵抗感があり、うまく状況に対応できなかったというお話を聞きました。

 

この機会に、通勤手当の趣旨(「実費」なのか「単なる定額手当」なのか)や、「3か月支給」「6か月支給」といった先払い支給形式は合理的な運用なのか(キャッシュフローや入退社時の精算処理等の効率性)といった規定内容も検討すべきと考えます。

 

また、在宅勤務の継続により、交通費を経費精算で処理する企業が多くなると思われますが、通勤手当に該当する部分(自宅から勤務地への移動に対する福利厚生)と、出張や業務移動の交通費に該当すべき部分(業務上の経費)は、会計上の仕訳も異なり、法令上の取扱も異なりますので、区分して整理できるように、業務フローの見直しが必要と考えます。

 

【論点5】テレワークの規程化

下記のURLをご参照ください。

   

【論点6】トラブル社員対応

企業の人事労務管理の混乱の機に乗ずる形で、紛争事案が確認されています。

 

■事例1

体調が思わしくないとの申告により勤怠が悪化して長期欠勤状態にあった社員から、唐突に「在宅勤務なら復職可能」とした申請が出された。会社としては、自己管理能力への懸念から在宅勤務の許可は困難と回答したところ、当該拒否は会社都合休業であるとして休業手当を要求された。

 

■事例2

コロナ禍で混乱している企業側に対して、様々な権利要求や回答要求が行われ、要求が容れられないとなると、「差別」「ハラスメント」として攻撃された。場合によってはSNSで誹謗中傷されることもあった。

 

■事例3

在宅勤務へ移行したことにより、会社(上司)の教育や管理が行き届かない状況になってしまい、未熟練労働者が戦力外として放置され、全くパフォーマンスが上がらず、雇用が単なる身分保障になってしまった。業務を指示しても、「指示不明確で実施不能」「過重負荷であり対応困難」等のネガティブレスポンスが来てしまうため、上司が自分で作業をした方が早い。

 

こうした問題も、コロナ禍が原因というよりは、採用や労務管理の不備が危機で表面化したということになろうかと思われ、こうした反省は今後の体制強化に活かしていくべきと考えます。

 

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