2020/11/13
定年再雇用ではない通常の場合には、給与が変わったときには、給与変更後の引き続く3か月の勤務状況と報酬額をもって随時改定に該当するかどうかを確認します。
具体的には、(1)固定的賃金に変動がある、(2)固定的賃金変動後の3か月の報酬の平均が従前と比べて大幅な変動(2等級以上の差)を生じている、(3)固定的賃金変動後の3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である、ことが要件です。給与が減額されたとしても、ある程度大きく減らなければ随時改定には当たりませんし、大きく給与が減っていたとしても、欠勤などがあると日数不足で改定ができないこともあります。
随時改定に該当するとしても、固定的賃金が変動してから3か月の実績により4か月目に改定が行われますので、実際に給与が下がってからはだいぶ遅れて、標準報酬月額及び保険料の額も下がるということになります。
定年再雇用の場合には、随時改定を待たず、同じ日に資格喪失と資格取得(同日得喪)を行うことにより、すぐに標準報酬月額(保険料)を新たな給与に見合ったものとすることができます。たとえば、3月31日に定年退職した方は、その翌日4月1日に資格を喪失し、同日4月1日に新たに再雇用後の給与をもって資格取得をします。こうすることで、再雇用された4月から、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に改定されます。
定年再雇用後の同日得喪を行うためには、資格喪失届と資格取得届を同時に提出します。健康保険組合に加入している事業所は、健康保険組合にも同様の届出が必要となります。被扶養者がいる場合には、その手続きも必要となります。
資格取得届には、「就業規則や退職辞令の写し等の退職したことがわかる書類及び継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書」または「事業主の証明」の添付が必要です。事業主の証明は任意様式ですが、日本年金機構のホームページで様式例が公開されています。どういった証明書を添付してよいか分からない場合には、こちらをお使いください。
【様式例】事業主の証明[平成25年4月~](PDF)
同日得喪はできる、というだけで、必ずしもしなければならないものではありません。通常の随時改定を行うことも可能です。同日得喪により、すぐに標準報酬月額を下げることができ、保険料が下がるというメリットもありますが、一方、将来、年金や傷病手当金の給付を受ける場合には、標準報酬月額を下げなかった場合に比べて、給付も少なくなります。
また、同日得喪をした場合には、健康保険証の被保険者番号が変わりますので、新しい健康保険証が発行され、以前のものは使用することができなくなります。
60歳到達時点に比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の被保険者で、以下の2つの要件を満たしている方について、雇用保険からの給付があります。
高年齢雇用継続給付の支給額は、60歳到達時の賃金月額と比較した支給対象月に支払われた賃金額の低下率に応じた支給率を、支給対象月に支払われた賃金額に乗ずることによって計算されます。
支給率は、低下率が61%以下である場合は15%です。
低下率61%超75未満の場合は、複雑な計算式となりますので、以下のリンク先をご確認ください。
厚生労働省ホームページ:Q&A~高年齢雇用継続給付~
高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について(厚生労働省:PDF)
「Q8 高年齢雇用継続給付の支給額はどのように計算されるのですか。」が該当箇所です。
たとえば、60歳到達時の賃金月額が30万円であり、支給対象月に支払われた賃金が18万円のときには、支給額は、支給対象月に支払われた賃金18万円×15%=27000円です。
定年再雇用により、60歳到達時賃金の75%未満に低下していれば、ハローワークに対して、受給資格の確認、60歳到達時の賃金登録、初回の支給申請を同時に行います。
定年後もそれほど給与は下がらないため、支給申請は行わないけれど、受給資格の確認と60歳到達時の賃金登録のみ先にしておくこともできます。受給資格確認は事業所や被保険者の情報を記載するのみであり、賃金登録は、離職票に似た書類により行いますので、はじめて記入される方でもそれほど迷うことはないものと思います。
高年齢雇用継続給付金制度は、2025年度から縮小されていくことが決まっています。実際に定年退職者が出たときには、最新の法律の内容を確認して手続きを行ってください。
弊社では、日常的なちょっとしたご相談へのお答えから、労務問題やコンプライアンス対策まで、幅広く承っています。
お困りのことがありましたらお気軽に当グループ社会保険労務士までご相談ください。